11月19日、環境省が温室効果ガス(GHG)の排出量に応じて課税する「炭素税」の本格導入を提案したものの、2022年度税制改革では見送ることで方針が固まった。炭素税とは、燃料・電気の利用による二酸化炭素(CO2)の排出に対して課税を行う税制案で、税収を得ることのみならずCO2排出量削減の施策としての面が大きい。
環境省は、今年2月から「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」を計7回開催するなど、炭素税を含むカーボンプライシング(炭素の価格付け)に向けて検討を進めてきたが、12月にまとめる2022年度与党税制改正大綱で、今後の検討の方向性を示すにとどまった。
自民党の宮沢洋一税制調査会長は、党本部で日本経済新聞社などのインタビューに応じた際に、炭素税に関し「大事な目標で税の役割も当然ある」と指摘する一方、「税の意味だけではなく社会的な意味で煮詰まっていない」と、将来の方向性に留めたことが報じられている。今後については、2022年にも具体的な制度設計案を示し、GHGの削減効果や税収を再投資して経済に影響がどう表れるかを詳しく分析する方針のようだ。
これまで、経団連はカーボンプライシングの本格導入について、非化石証書やJ―クレジットといったクレジット取引をカーボンプライシングの有力な選択肢として評価する一方、炭素税と排出量取引には慎重な姿勢を示してきた。慎重意見は、鉄鋼業界や中小企業の代表者からも相次いでおり「炭素税に絞るべきではない」などの声が上がる一方、温暖化対策に積極的な企業は導入に前向きで、意見が分かれている。
企業の声が割れる中、環境省はあくまで炭素税の議論を進める方針だが、炭素価格が乱高下する懸念がある、排出量取引も将来の制度導入を含めて検討を深めていく。これに対して経済産業省は、産業界の反発を招きにくいことから、自主的な排出枠取引制度を拡大する方針を明らかにしている。
炭素税はその支払い負担の見通しが立てやすいメリットがある一方で、石油石炭税など既存税制との整理が必要であったり、そもそも排出量削減効果が不透明であったりという難点を持つ。一方、企業ごとに排出上限を設定して、排出量を売買する排出量取引制度は、排出抑制に一定の効果があると考えられているものの、公平な上限設定ができるか、負担の大きい業界が出てきたときに国際的な競争力を失わないかということが懸念されている。
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