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炭素税、2022年度の本格導入は見送り EUでは国境炭素税導入で、日本の輸出に不利予測

2021年11月30日

さまざまな形のカーボンプライシング

また、企業が自主的に取り組むカーボンプライシングにはICP(インターナル・カーボンプライシング)がある。ICPとはいわば、企業が自分で自分に課す炭素税のことで、「組織が独自に自社の炭素排出量に価格を付け、何らかの金銭価値を付与することで企業活動を意図的に低炭素に変化させることができる」と定義づけられている。CO2排出量の価値の見える化や、削減目標の設定がしやすくなるのがメリットだ。特に、1トンのCO2排出にどれだけの価格をかけているかは、そのまま、その企業がどれだけ脱炭素に力を入れているかということにもつながる。

国内でICPを導入している企業は、2020年3月時点で118企業あり、さらに2年以内の導入予定企業が134企業となっている。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)でも言及されているため、今後もさらに増えていく見込みだ。

日本のICP導入企業

 ICPを導入していると回答している企業例 ICPを2年以内に導入予定と回答している企業例
バイオ技術・ ヘルスケア・製薬アステラス製薬/小野薬品工業/第一三共/武田薬品工業大塚ホールディングス/オリンパス/グローバルエンジニアリング/塩野義製薬/田辺三菱製薬/日本光電工業
食品・飲料・ 農業関連味の素/キッコーマン/キユーピー/サッポロホールディングスアサヒグループホールディングス/伊藤園/カゴメ/キリンホールディングス/サントリー食品インターナショナル/日清製粉グループ本社
化石燃料国際石油開発帝石
インフラ関連大阪ガス/清水建設/積水化学工業/積水ハウス/大成建設/大東建託/大和ハウス工業/東京ガス/戸田建設/前田建設工業熊谷組/西松建設
製造TOTO/オムロン/キャノン/京セラ/クボタ/コクヨ/コニカミノルタ/小松製作所/ジェイテクト/セイコーエプソン/ソニー/ダイキン工業/ディスコ/東京エレクトロン/東芝/豊田合成/豊田自動織機/ナブテスコ/日産自動車/日本精工/日立建機/日立製作所/フジクラ/富士フイルムホールディングス/ブラザー工業/ブリヂストン/三菱電機/ヤマハ/ ヤマハ発動機/リコーJVCケンウッド/NOK/SCREENホールディングス/TDK/THK/アシックス/アルプスアルパイン/アンリツ/いすゞ自動車/王子ホールディングス/キオクシアホールディングス/シチズン時計/ダイフク/東海理化/トヨタ自動車/ニコン/日清紡ホールディングス/日本電産/ノーリツ/パナソニック/日立ハイテクノロジーズ/日野自動車/古河電気工業/堀場製作所/三菱自動車工業/三菱重工業/ミネベアミツミ/村田製作所/明電舎/ユニ・チャーム/横浜ゴム/ローム
素材JSR/LIXILグループ/旭化成/宇部興産/花王/昭和電工/住友化学/デンカ/東京製鐵/東ソー/東レ/日東電工/日立化成/三井化学/リンテックAGC/DIC/TBM/エフピコ/コーセー/資生堂/帝人/日本化薬/三菱ガス化学/三菱ケミカルホールディングス/三菱マテリアル/ライオン
発電関西電力/中国電力/中部電力/電源開発/東京電力ホールディングス/東北電力
小売双日/丸井グループ/三菱商事J.フロント リテイリング/アスクル/イオン/住友商事/高島屋/三越伊勢丹ホールディングス/楽天
サービスセコム/大日本印刷/東京海上ホールディングス/凸版印刷/日本電気/野村総合研究所/野村ホールディングス/富士通/三井住友トラスト・ホールディングス/三菱UFJフィナンシャル・グループKDDI/MS&ADインシュアランスグループホールディングス/NTTデータ/近鉄グループホールディングス/サンメッセ/綜合警備保障/大和証券グループ本社/電通/日本リテールファンド投資法人/八十二銀行/日立キャピタル
輸送サービス川崎汽船/日本航空/東日本旅客鉄道商船三井/日本郵船/ヤマトホールディングス

環境省「インターナル・カーボンプライシングについて」をもとに作成

なお、炭素税の先例としては2012年に導入した「地球温暖化対策のための税」(以下、地球温暖化対策税)があり、CO21トンあたり289円を課税する。環境省は地球温暖化対策税による効果について、2020年において1990年比で約-0.5%~-2.2%のCO2削減効果、量にして約600万~約2,400万トンのCO2削減が見込まれると公表している。加えて、地球温暖化対策税での税収は、省エネルギー対策、再生可能エネルギー普及、化石燃料のクリーン化・効率化などのCO2排出削減の施策に用いられる。

諸外国の炭素税に関しては、1990年にフィンランド、ポーランドで導入されたのを先駆けに、欧州を中心に導入が進められた。炭素税価格が最も高いのはスウェーデンの炭素税で、CO2排出量1トン当たり137ドル(2021年4月時点)とされている。

なお、パリ協定の気温目標を実現できる炭素価格の水準は、2020年までに、少なくともCO2換算で1トン当たり40~80ドル、2030年までに50~100ドルとの試算が出ている。現在、この価格水準でカバーされているGHGは、世界全体の3.76%で、世界的な値上げが必要とされている。

また欧州(EU)連合委員会は、11月14日、環境規制の緩い国からの輸入品に課税する「国境炭素税」の導入を発表した。GHG排出量の多い鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力の5品目を課税対象とし、域内の輸入業者へ2023年から報告を義務づけ、2026年から徴税も含め全面実施する。域外の低炭素化と、炭素リーケージ(国内市場が炭素効率の低い輸入品に脅かされ、 国内生産が減少すること)を考慮したうえでの域内外の競争公正性を確保することが目的だ。

この国境炭素税に対して、環境省は「日本の政策の不足による不利益を被るリスクがあると懸念している。」としており、排出量削減に向けての強制力と、脱炭素化を補助する資金源を両立できる炭素税の必要性を感じる結果となった。

 

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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