工場におけるCNという観点では欧州企業が先行する。独Boschではすでに2020年に自社の世界約400ヶ所の拠点のカーボンニュートラルを達成済みだ。自動車部品大手コンチネンタルでも2020年に自社の生産拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達している。
日本企業の取り組みが遅れている要因の一つに、日本国内の再生可能エネルギー市場が未成熟であることが挙げられる。再エネが少ない日本では、日本国内の自動車業界のLCA全体で見ると、燃料電池自動車(FCV)と電気自動車(EV)、ハイブリット車(HV)のCO2排出量はほぼ同じである(図2)。つまり、EVやFCVにすれば、CO2排出量がゼロになるというわけではない。現状のエネルギー環境下でEV普及を推進したとしても、充電に必要な電気をつくる際に多くのCO2が排出されることになり、EV普及を推進すればするほどCO2が増加するといった本末転倒になる可能性もある。日本では多様な電動車をバランスよく普及させることが重要であり、LCA全体でも再エネ比率を増やすことも重要である。
図2:自動車の動力別LCAでのCO2排出量
出所:IEAのデータを基に編集部作成
今後は自家発電や地域企業との連携等、自社での動き出しも考えていく必要があるだろう。
完成車メーカーの脱炭素化に応じて自動車部品サプライヤーの緊迫度も上がり、サプライヤーにとってはコスト負担が大きいことも事実だ。
また、日本と海外の完成車メーカーで、求められるCO2排出量のデータが異なるとされ、部品メーカーの負担になりかねないことも懸念されている。供給網の脱炭素に動きだした完成車各社であるが、課題も多く、進め方を巡る試行錯誤が続く。CO2削減目標の達成には省エネルギー活動のほか、水素などの新しい技術開発も鍵を握りそうだ。自動車業界だけでなく、他業界にも脱炭素の波は必ず波及してくる。
各企業が早期に対策をし、リスク回避することを願いつつ動向に注目していきたい。
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