CO2排出量が最も多い千葉県は、東京湾沿いに素材・エネルギー産業を中心とした製造業が多く存在する。特に市原市・袖ヶ浦市の臨海部は世界最大規模のエネルギー・素材産業の集積地となっており、「京葉臨海コンビナート」が存在する。石油・石油化学の企業群がコンビナートを形成し、さらにそれを中心として銑鋼一貫製鉄所や火力発電所、LNG基地が立地している。
産業部門の構成比は2016年時点で全国の産業部門の割合が 34.6%であるのに対し、千葉県は 46.9%と比較的高くなっている(図2)。2017年度の千葉県の上位産業(出荷額ベース)の構成比をみると、石油・石炭は20.9%、化学工業が19.1%、鉄鋼業が13.9%となっている。
こうした特徴から、千葉県は温室効果ガス排出量が多い結果となっていると考えられる。
図2
出典:千葉県公式サイト 部門別構成比の千葉県と全国との比較(2016 年度)
また、排出量が2番目に多い愛知県は千葉県と同様、産業部門からの排出割合が全国と比べて大きい。愛知県の産業部門は全体の5割を占める。2017年度の愛知県内のCO2排出量は、全国の6.5%を占めている。豊田市を中心にトヨタ自動車グループがサプライチェーンを構築しており、愛知製鋼の知多工場や東京製鉄の田原工場などもある。
鉄鋼業の出荷額が多い都道府県トップ5は、2017年時点で愛知県、兵庫県、千葉県、広島県の順だ(図3)。それぞれ、愛知県は東海市、兵庫県は姫路市と加古川市、千葉県は君津市、広島県は福山市とそれぞれ重要な鉄鋼都市を抱えている。広島県も製造業による排出の比率が高い地域であり、全国平均の38%を大きく上回っている。いずれの地域も製鉄所や化学コンビナートが立地しているため、大量のCO2を排出している。
図3
2017年 鉄鋼業
「工業統計調査」単位:百億円
経済活動の中心が鉄鋼、セメント、化学などの製造業になっている山口県、岡山県もCO2排出量が大きく、上位を占めている。山口県では化学製品、窯業・土石製品、電力・ガス・熱供給業の各部門が、また大分県では窯業・土石製品と金属部門がそれぞれ極めて高い割合にある。両県は化石燃料を大量に投入する事業所が多く立地しており、環境負荷が集約的になっていることを窺がわせる。
トップを占める地域は、化石燃料に直接関連の深い産業構造によって経済的な恩恵を受けてきた。地球温暖化をストップするにはこれまでの化石燃料に依存した社会からの転換が必要だが、安価な再生可能エネルギーが調達できないなどの環境が続けば、立地企業は工場移転などの決断に迫られる。
もし工場移転などが起これば、関連する雇用の喪失や税収の減少など、地域の衰退を招き、悪影響をもたらす可能性もある。こうした側面を踏まえ、「地域性」を尊重しつつ、経済、社会的側面を多面的に考慮し、影響を受ける人びとなどを包括的にとらえて脱炭素の取組みを進めていく必要がある。
日本が積極的に脱炭素に取り組むためには、地方自治体の協力が欠かせない。環境省は各自治体に脱炭素を目指す「ゼロカーボンシティ」への表明を呼び掛けている。これを受けて東京都・京都市・横浜市を始めとする464自治体(40都道府県、278市、10特別区、114町、22村)が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明。(2021年9月30日時点)
千葉県では、「オール千葉」で脱炭素社会の実現を目指すため、千葉市や銚子市、木更津市などをはじめとした11都市が二酸化炭素排出実質ゼロ宣言を行った。
愛知県では2018年に「あいち地球温暖化防止戦略2030」を策定し、県内の事業者が2030年度に向け、自主性や創意工夫を活かしたCO2排出削減の取組みを宣言し、県がそれを認定・PRする「あいちCO2削減マニフェスト2030」を開始した。事業者の継続的な取組みがより評価されるよう、CO2排出の削減目標を設定し、その結果によりランクアップする仕組みを導入している。
ちなみにゼロカーボン宣言を全国で初めて行ったのは、46位にランクインしている山梨県だ。クリーンエネルギーの導入促進や省エネルギー対策、森林整備による吸収などにより、県内のCO2排出量をゼロとする「CO2ゼロやまなし」の実現を目指す。
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