ガスの脱炭素化技術にはいくつか選択肢があるが、もっとも有望視されているのは、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させ、天然ガスの主な成分であるメタン(CH4)を合成する「メタネーション」だ。
メタネーション技術は水素活用技術の1つでもあり、特に再生可能エネルギー等を活用したCO2フリー水素とLNG火力発電所からの排ガス等から回収したCO2とを合成して生成する「カーボンニュートラルメタン」は、ガス事業における「供給側の脱炭素化」を進展させる手段として注目されている。
メタンは燃焼時にCO2を排出するが、発電所や工場などから回収したCO2を、メタネーションをおこなう際の原料として利用することで、CO2排出は実質ゼロになる。
また、都市ガスの原料である天然ガスの主成分はメタンであるため、天然ガスを合成メタンに置き換えた場合にも、都市ガス導管やガス消費機器などの既存のインフラ・設備は引き続き活用できる。そのため、比較的コストを抑えてスムーズに移行できるとして大きなポテンシャルを有する。
メタネーションは、2021年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において「次世代熱エネルギー産業」に位置づけられ、成長が期待される重要分野とされている。日本ガス協会の試算によると、目標とする2050年に、都市ガスの90%が合成メタンに置き換わった場合(図3)、年間約8,000万トンのCO2削減効果があるとしている。これは、日本全体のCO2排出量の1割弱に相当するため、脱炭素化への効果が大きいとして期待が高まっている。
図3: 2050年ガスのカーボンニュートラル化の実現に向けた姿
出所:日本ガス協会「カーボンニュートラルチャレンジ2050 アクションプラン」
期待が大きいメタネーションだが、一方で、実用化に向けたメタネーション設備の大型化や水素供給コストの低減等が課題だ。供給コストを、現在のLNG価格と同水準にするためには、水素とCO2を安価に調達することや、国際間でのCO2削減量のカウントに関するルール整備など、制度面での検討を進める必要がある。
こうした背景から、2021年6月に、経済産業省は、大手ガス会社や商社などと「メタネーション推進官民協議会」を正式に発足し、研究開発を強化した。各企業と連携しながら課題について検討を進めている。
また、CO2の排出量や削減効果の測定方法についての基準も未整備である。そのため、CNLを使うことで得る削減効果は現時点では温暖化ガス削減の環境義務達成の実績に利用することはできない。CNLの活用を発信することは、投資家とのコミュニケーションにつながるが、社会性と経済性とのバランスを取ることが企業にとっては重要だ。
気候変動対策の重要度が高まる現代において、国内のCNLの需要も高まりつつあることは間違いない。CNLの活用がガス業界の脱炭素化の後押しとなるのか注目していきたい。
エネルギーの最新記事