Amazonの脱炭素化の取組みが勢いを増している。パリ協定の2050年カーボンニュートラルを10年前倒しし、2040年とするClimate Pledgeを立ち上げてから1年。再エネ調達の規模は世界一に達した。配送による排出量もゼロとするEV車両開発にも余念がない。
2020年12月10日、Amazonは世界最大の再エネ調達企業となった。世界各国で、26の再エネプロジェクトに新たに投資することを決定したのだ。これらの新プロジェクトは、オーストラリア、 フランス、 ドイツ、 イタリア、 南アフリカ、 スウェーデン、 イギリスにおける風力発電所と太陽光発電所で、合計容量は約3.4GWに達する。
これまでに同社が投資した再エネ発電所の規模は6.5GW。1年間に家庭で消費される電力量に換算すると170万戸分だ。年間1,800万MWh超の再エネ電力をAmazon本社や倉庫であるフルフィルメントセンター、データセンターなどへ供給している。
Amazonの目標は、2040年までにCO2排出量をゼロにするというものだ。パリ協定が掲げる2050年というタイムラインを10年間も前倒ししている。2040年CO2ゼロに向け、2030年までに再エネ調達100%を目指してきたが、これも2025年には達成できる見込みだという。
創設者のジェフ・ベゾスCEOは、同日のプレスリリースで「これはClimate Pledgeを達成するため、我々が取っている多くのステップの1つにすぎない(This is just one of the many steps we’re taking that will help us meet our Climate Pledge)」と語った。
「Climate Pledge」とは「気候変動対策に関する誓約」を意味する。2019年9月にAmazonとGlobal Optimismの共同調印によってスタートしたイニシアチブだ。Global Optimismは、国連気候変動枠組条約事務局のクリスティーナ・フィゲレス前事務局長が創設した団体。これまでにも気候変動に関するイニシアチブを多く発表している。
Climate Pledge はパリ協定の2050年排出ゼロ目標を10年早め、2040年に達成するという野心的なゴールを目指している。
署名企業には、1. 温室効果ガス排出量を測定し報告すること。2. 効率改善や再エネ導入などを含む、実ビジネスの変化を伴う脱炭素戦略を実装すること。3.それでも残る排出量は、永続的で社会的に有益な方法でオフセットすること。― の3つが求められる。
Amazonは、商品の配送におけるCO2排出量もゼロとする「Shipment Zero」にも取り組んでいる。スコープ3のバリューチェーンにおける排出も完全になくすという。Shipment Zeroによる配送は欧米から始め、インドや日本でも展開する考えだ。
Shipment Zeroがカバーする排出範囲は、次の通り。
つまり、倉庫で使用する電気は100%再エネ由来とし、EV、自転車、徒歩などによるゼロエミッション配送とする。さらに、梱包に使う段ボールなどもカーボンニュートラルなものに徹底する。
2019年2月、Amazonは無公害EVメーカーのスタートアップであるRivianに4億4,000万ドルを投資した。同年9月のClimate Pledge発足時には、過去最大となる10万台の配送用EVを発注している。
Amazon News : Uber, Rivian, JetBlue, Cabify, and Boom Supersonic join The Climate Pledge より
それからわずか1年で、配送のためのカスタマイズを完了した。ドライバーは、Alexaを通してハンズフリーでルートや気象情報の確認が可能となった。視認性を上げるため、フロントガラスを大型化し、車載カメラで車外360度を見渡すこともできる。2025年までにヨーロッパに1,800台、インドに10,000台を配備し、2030年までに10万台すべてを実装する計画だ。
今回の再エネ投資には、日本は含まれていない。しかし今後、Amazonが日本で再エネ発電所を開発し、事業所への供給を行っていくであろうことは容易に想像できる。そうしたことにとどまらず、日本の配送業者も、CO2を削減しなくては、Amazonの商品を配送できないということにもなってくる。それだけに、このインパクトには大きなものがあるといえるだろう。
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