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約2,500億円の補助金を投下! 日本が期待を寄せる水素還元製鉄と燃料アンモニアの現状と未来

2022年02月07日

水素製造は製鉄業界の救世主となりうるか?

NEDOは日本製鉄やJFEスチール、神戸製鋼所などが取り組む製鉄法の開発「製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、総額1,935億円をあてる。

同プロジェクトでは、①高炉を用いた水素還元技術の開発(高炉法)②水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発(直接還元法)に取り組む。加えて、高炉の排ガスから分離・回収したCO2と、水素を反応させてメタンを生成し、それを高炉に吹き込んで還元剤として活用する「カーボンリサイクル」などをおこなうことも想定している。

環境省の報告によると、2019年度における日本国内のCO2排出量は、部門別では全体の約35%を「産業部門」が占め、産業部門におけるCO2排出量のうち、鉄鋼業界が約40%を占めている。一方、製鉄所で広く用いられている石炭を使って鉄鉱石を還元し鉄鋼を製造する「高炉法」では、CO2の発生が避けられなかった。

①高炉を用いた水素還元技術の開発に関しては、鉄鋼各社は石炭由来のコークスの代わりに水素で鉄鉱石の酸素を取り除く手法により10%以上CO2分離回収技術で20%以上の計30%以上削減できる技術を2030年までに実装する計画だ。

また、高炉を用いて水素で鉄鉱石を還元する技術や、発生したCO2をメタン生成や還元剤等へ利活用することで、高炉における脱炭素化を目指す(図4)。高炉から排出されるCO2を50%以上削減する計画だ

図4:事業イメージ


出典:「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性(2021年8月 経済産業省製造産業局)を基にNEDO作成

②では、直接還元法(DRI)という手法で、水素を使う技術の実証などを進める。直接還元法とは、天然ガスを使用して鉄鉱石を固体のまま還元し、そのあとで電炉に移して溶解をおこなう方法だ。還元ガスを全て水素に置き換えることで、CCUなどの周辺技術がなくとも脱炭素を実現することが可能になる(図5)。

図5:事業イメージ


出所:経済産業省 資源エネルギー庁

しかし高炉法も直接還元法も、技術面でのハードルが非常に高い。まず、高炉法はエネルギー効率が高く、不純物を除去できるために日本の強みである高品位鋼の製造に適しているが、製造上コークスをすべて排除することは難しいため、CO2の発生をゼロにはできない

直接還元法は、100%水素還元をおこなえばCO2排出ゼロが可能ではあるものの、高炉法のように鉄鉱石の還元と溶解をひとつの炉で一貫しておこなうことができないため、エネルギー効率が低いのが難点だ。さらに水素による還元反応は熱を吸収(吸熱反応)し、高炉が冷えてしまうため、連続的に還元するのに必要な熱を補填しなければならない。

革新的な技術開発はどのように進められていくのか・・・次ページ

東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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