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世界に挑む日本の技術力 出光、トヨタ、産総研など日本トップ企業は全固体電池開発で勝ち残れるか

2022年01月20日

GSユアサは窒化物系の電解質を開発し、日産は2028年に量産体制へ

最後に、硫化物系や酸化物系以外の全固体電池の紹介をしたいと思う。

GSユアサは窒化物系全固体電池の研究を進めている。GSユアサが開発した電解質は、正確には窒素含有硫化物固体電解質となるが、高いイオン電導度と優れた耐水性が特徴とされており、有毒な硫化水素の発生を抑えることができる。

硫化物と組み合わせる最適な材料(窒化物およびハロゲン化物)を効率的に選定することで、高いイオン伝導度と優れた耐水性を兼ね備えた窒素含有硫化物固体電解質の合成に成功した。2020年代の実用化を目指している。

様々な可能性を秘めた全固体電池だが、気になるのはその実用化だろう。先述したように、トヨタの全固体電池の登用はHVからとなり、EV搭載はしばらく先になる。EV推進派として動いてきた日産も、全固体電池を搭載したEVの量産体制が整うのは2028年度頃となる。電池の寿命問題に悩むためHV用の全固体電池に取り組むトヨタに対して、日産の中畔邦雄副社長は「技術的にかなり先が見えており、量産化に自信がある」と強気な姿勢を示すが、それでもしばらくは、未来の技術として扱われることになりそうだ。

そうした中で、東京工業大学、東京大学、産総研、山形大学らの研究グループは2022年1月7日に、全固体電池の性能低下の原因を解明したと発表した。さらに、加熱処理をすることによって、低下した性能を回復させることも可能だという。

研究では、全固体電池用の電極材料を様々な気体に曝露した結果、大気や水蒸気から電極内へと侵入する水素イオンが電池性能低下の原因だと解明。水素イオンによって、固体電解質と電極が形成する界面の抵抗が増加し、劣化が招かれるという。そして、界面抵抗は150℃程度の加熱処理によって、1/10以下に低減できることも同研究で判明した。

全固体電池の実用化が今回の研究により、大きく前進することが期待できる。

 

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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