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逆風のガスタービン、再エネ調整と水素化がカギに

逆風のガスタービン、再エネ調整と水素化がカギに

2020/03/24

気候変動対策として世界が脱炭素に向かう中、石炭だけではなく、CO2排出係数の小さい天然ガスに対しても逆風は吹いている。しかし、変動する再生可能エネルギーの拡大に対しては、調整力を持つ電源の存在は不可欠だ。ガスタービンの動向を読み解くことで、これからの天然ガス、中・小規模のガスタービンの役割の注目すべき変化について、エンジニアリングビジネス誌編集長・宗 敦司氏が解説する。

低迷する大規模ガスタービン市場、融資も停止へ

石炭火力発電のダイベストメント(投資引き上げ)が進む中で、火力発電の中でも熱効率が最も高く、CO2排出量の少ないガスタービンコンバインドサイクル発電の需要は伸びていく、と数年前までは考えられていた。

その目論見が崩されることとなったのが2016年から2017年にかけての世界的な需要低迷だ。再生可能エネルギーの急速なコストダウンと導入拡大に伴って、ガスタービン需要も大幅に縮小した。
世界の大型ガスタービン3大メーカーの一角を占め、2018年には大型ガスタービンの受注で世界トップシェアとなった三菱日立パワーシステムズ(MHPS)のガスタービン受注台数の推移を見てみると、2013年度には年間50台の受注数だったのが、2017年度には8台にまで減少したのである。(表参照)

出典:三菱重工業決算資料 2019年度は第3四半期まで。

2018年度からは回復傾向が見られるものの、かつての勢いではない。再生可能エネルギーが市場に定着してきたことで、ガスタービンコンバインドサイクル発電の需要は、以前に比べて一段階後退したと見られる。

世界のガスタービン製造能力は年間400基あるとされているが、現在の需要動向では、完全な供給能力の過剰状態であり、再エネ拡大の流れが止まらない限り、ガスタービンの供給力過剰状態は変わらない。

ドイツのシーメンスはこの市場変化を受けて、2020年9月にガスタービンを含む電力事業を分社化。他社への売却も視野に入れていると見られている。GEも既にガスタービン部門で大規模な人員削減を行うなど、事業の見直しが相次いでいる。

さらに追い打ちをかける形となったのが、2019年11月の欧州投資銀行(EIB)の新方針である。新方針に基づいて、EIBは2021年末をもって”ガスを含む”化石燃料のエネルギープロジェクトへの資金提供を終了すると宣言したのである。つまり、ガスタービン発電も投資対象外となるという事だ。

今のところ、ガス火力へのダイベストメントはEIBのみの方針ではあるが、今後、欧州の他の融資機関にも同様の動きが波及する懸念もある。そうなるとガスタービンの市場はさらに一段階後退することになるだろう。

グリッドの柔軟性確保、ピーク対策への対応が生き残りの道か

そうした状況のなかでも、ガスタービン発電への期待はまだ残されている。ひとつは出力変動の大きい再生可能エネルギーの調整用電源としての方向性だ。

これまで大型ガスタービンによるコンバインドサイクル発電がガス火力発電の主流であった。
これはガスタービンと排熱回収ボイラ、蒸気タービン、発電機の構成で、1系列あたりで数10万~100万kWの大出力が可能であり、熱効率も最高64%程度を実現する、高効率の発電設備となる。

だが、大規模火力電源はそれだけ調整が難しくなる。これだけ大きいと起動から最大出力まで数10分~1時間程度の時間が掛かり、調整用電源としては反応が遅い。また1系列あたりの出力も大きいことから、きめ細かい変動への対応は難しい。

一方で、航空機転用型など中・小型のガスタービンは、耐熱構造とし難いため熱効率は落ちるものの、起動時間はガスタービン単体で10分程度と早い。これをコンバインドサイクル化する発電設備を川崎重工業が実用化し、国内で既に複数案件を受注している。
小型ガスタービンのネックである熱効率の向上も図りつつ、1系列毎の出力が小さいので、大型のコンバインドサイクルに比べて細かい調整が可能だ。


川崎重工業の30MW級の純国産高効率ガスタービン「L30A」

さらにガスタービン本体を二軸型として発電機を起動前にモーターとして回すことで、より早い起動が可能となる。モーター運転時には系統電圧の調整も図れるので、系統安定化にも繋がる。

中・小型ガスタービンによる、このような「スピニングリザーブ発電(瞬動予備力発電)」は、再生可能エネルギーなどの調整用電源として最適なシステムのひとつと言われている。日本では今のところ殆ど実績は無いが、米国では既に「ピーカ発電(需要のピーク電力に対応する発電)」として多く導入されている。

新たな市場で期待される役割 中・小型ガスタービン

ガスタービンメーカーの中・小型ガスタービンへの期待は大きい。特にアジア市場では、電力需要が増加するなか、再エネの導入だけでは全体のボリューム確保が難しい面もある。
今後、石炭火力が難しくなるなかで、変動に柔軟に対応でき、ある程度の出力も確保出来る中・小型ガスタービンの導入拡大は期待される。そのため川崎重工業だけでなくIHIも、そしてMHPSもこの分野での導入拡大にむけて力を入れているところだ。

もうひとつの方向性は、大型ガスタービンのさらなる高効率化だ。具体的にはタービン入口温度の高温化だ。現在、ガスタービン入口温度は最高で1,600℃を越えるところまで来ている。これをさらに1,700℃にまで向上させていく開発が世界各地で進められている。
熱効率を向上させることで、ガスタービンそのものの熱効率が向上すると同時に、水素タービンへと用途を拡大することができる。グリーン水素が燃料として使えるようになれば、CO2排出量がゼロで、発電効率も高い大規模電力システムが実現することになる。

現状ではガスタービンの市場は低水準で推移しているものの、このような中・小型ガスタービンの持つ柔軟性向上や用途の拡大で、将来のゼロエミッション電力システムの一翼を担うことも可能となるだろう。

宗敦司
宗敦司

1961年生まれ東京都東村山市出身。 1983年 和光大学人間関係学科卒業。 1990年 ㈱エンジニアリング・ジャーナル社入社。 2001年 エンジニアリングビジネス(EnB)編集長

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