自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を 自然エネルギー財団電力システム改革に対する提言 Webinarレポート 前編 | EnergyShift

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自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を 自然エネルギー財団電力システム改革に対する提言 Webinarレポート 前編

自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を 自然エネルギー財団電力システム改革に対する提言 Webinarレポート 前編

EnergyShift編集部
2020/06/04

2020年5月26日、自然エネルギー財団によるウェビナー「自然エネルギーの更なる導入拡大に向けた電力システム改革を」が開催された
これは、自然エネルギー財団が5月14日に発表した「電力システム改革に対する提言:自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けて」という提言書をもとに、内容を詳しく紹介したものになる。
このセミナーのレポートともに、提言の内容について、前後編でお伝えする。

発送電分離の実施を検証し、提言に反映

この提言書は、2016年に出した同名の第2版となる。第1版ではまだ構想中であった発送電の法的分離が2020年4月に行われたことを受けて、現状のシステムへの具体的な提言がなされている。

今回の第2版提言書の構成は「発送電分離」「小売市場」「発電」「系統運用」に別れており、それぞれ提言書作成に携わった委員が自ら内容を紹介した。

総論:提言の成り立ち

ウェビナーはこの提言の構成に添って行われた。まず、都留文科大学 地域社会学科 教授/自然エネルギー財団 特任研究員 高橋 洋氏が総論と発送電分離についての提言を紹介した。

まず前提となるのは、2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、2012年2月に資源エネルギー庁に設置された電力システム改革専門委員会の立ち上げの経緯と、翌年2013年にまとめられた「報告書」理念だという。

電力システム改革専門委員会「報告書」(2013年2月)の理念
  • ・「再生可能エネルギーを含めた多様な供給力」を導入
  • ・「市場での競争を基礎」
  • ・「安定供給を確保しつつ、供給コストの低減を実現」、「地球環境問題への対応」
  • ⇔「垂直一貫体制による地域独占」、「大規模電源の確保」

自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を2020年5月26日(火)資料より

その後報告書から7年が経ち、現在は改革工程の3段階の最終段階、発送電の法的分離が行われ、一定の区切りがついたので、自然エネルギー財団として改めて当初の理念と施策の評価を行い、より加速させるために、今回の提言をまとめたということだ。

3段階の改革工程
  • ・2015年:広域系統運用機関*の設立、新規制機関の設置
  • ・2016年:小売全面自由化
  • ・2020年:発送電の法的分離

自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を2020年5月26日(火)資料より
*現在の電力広域的運営推進機関:OCCTO

発送電の法的分離の類型に対する提言

高橋氏は続いて電力システム改革の「最大の柱」とされている発送電分離について、その妥当性の検討と提言を紹介した。

なぜ最大の柱なのか。発送電分離の狙いは、分散型電源の一層の活用であり、自然エネルギーの導入には欠かせないシステム改革だからだという。送電網の公平な運用なくしては、自由化後の公正な競争が成り立たないということだ。そこで問われるのは、現在の日本の発送電分離は公正な競争に寄与するようにできているかどうかだ。

発送電分離の方法は、所有権分離、機能分離、法的分離の3類型に分かれる。このうちもっとも明確な発送電分離は、送電会社の株式を売り払い、完全別会社にする所有権分離だ。欧州のほとんどはこの方式を採用している。

これに対し、株式を売却するのが難しいなどの理由でそこまでの分離ではないのが法的分離で、この場合は基本的に送電を子会社化する。これが日本の発送電分離の方式となる。この他、機能分離という方式もある。これは法的には分離していない方式だが、送電系統分野は中立性を求められることから、運用にあたってはIOS(インディペンデント・システム・オペレイター・独立系統運用機関)という別組織にゆだねることが求められる。


自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を2020年5月26日(火)資料より

前述のように、日本は法的分離を選択し、運用が開始された。この法的分離には2種類あり、日本ではその2種類が混在している。ひとつはホールディングとして親会社があるケース。この場合、持ち株会社の下に発電・送電・小売が並列に並ぶことになる。これは東京電力(2016年に法的分離)や中部電力が採用している。

もうひとつは発電・小売会社が親会社となり、その下に送電子会社があるケースだ。これだと持ち株会社の方式に比べ、やはり独立性は低くならざるを得ないという。東京電力と中部電力以外の日本の旧一般電気事業者はこちらの発電・小売親会社方式をとっている。


自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を2020年5月26日(火)資料より

続いて、送電会社の統合について紹介された。
送電事業の本質は、規模の経済性が有効なため、送電会社自体を統合・拡大し、広域運用を行っていくことが有効だという。実際、日本と国土面積がほぼ同じであるドイツでは、8社あった発送電一貫の会社が4社に統合・再編された。日本は9つの送配電事業者+沖縄電力であり、統合が進んでいるとは言えない、との論点が示された。

高橋氏が示した提言は、以下の通りである。

提言1-1:原則、持株会社方式での法的分離
発送電分離を法的分離とするのであれば、発電・小売親会社方式ではなく、持株会社方式を原則とすべきである。

提言1-2:送配電会社の所有権分離や統合の追求
送電網の開放状況を厳しく監視し、行為規制を徹底した上で、開放が不十分な場合には速やかに所有権分離へ移行すべきである。同時に、広域運用の追求の観点から、送電(子)会社の統合を進めるべきである。

法的分離の行為規制への提言

続いて、「独立規制機関の機能強化」と題し、自然エネルギー財団上級研究員の工藤美香氏が行為規制に関する提案を紹介した。/p>

工藤氏によると日本での法的分離については、人事、グループ会社間の取引、法令遵守体制に関する規制などの制度設計が、ほかの法的分離を採用している欧州(フランス・ドイツ)よりも緩やかであり、法制上の規制、透明性の確保がある欧州よりも自主的な規制にゆだねられているものが多いとのことだ。

詳細は「電力システム改革に対する提言」第1章第2節を参照

一方、規制期間である電力・ガス取引監視委員会(電取委)の役割と機能強化も必要だという。規制強化が必要であるならば、その規制委員会の役割はますます重要になっていくはずだが権限や機能を見ると、現在、電取委が出すことのできるのは法的拘束力のない勧告に留まっており、広域系統整備への関与も小さいとのこと。(欧州では認証機関である)。

さらに電取委の人事についても、身分保障がなかったり、委員全員が非常勤であるなど、機能的にも脆弱であることが工藤氏によって指摘された。きちんと機能していくためには、経済分析、法律、工学についてもますます専門スタッフの充実が求められるということだ。関西電力の業務改善命令に関連して起こった経産省の不祥事では、電取委の在り方にも問題が投げ掛けられた。こうしたケースからも、独立性・中立性が一層保証された規制機関にしていく必要があるといえるとのことだ。

提言1-3:送配電会社に対する監視の徹底と行為規制の法令化
送配電会社に対する行為規制について、徹底した情報公開で透明性を確保した上で、電取委による監視を徹底すべきである。また、人事や法令遵守体制など、問題が指摘されながら自主的取組とされた課題を中心に、必要な規制を法令化すべきである。

提言1-4:電取委の権限・関与の強化
組織法制上の限界がない限り、経済産業省から独立した形での拘束力ある決定権を認める、経済産業大臣が電取委の勧告を尊重する規定を設けるなど、電取委の権限強化を図るべきである。また、送電網への新規接続や整備計画・運用に関する部分への電取委の関与を強めるとともに、広域機関への監視も強化すべきである。

提言1-5:電取委の人事強化とスタッフの充実
電取委の委員長・委員について、身分保障や兼職規制、退職後の就職規制等の規定を設けるとともに、常勤化や専門スタッフの充実を追求し、その独立性と専門性を強化すべきである。

小売市場への提言:大手電力の動向

小売分野・市場への提言は自然エネルギー財団事業局長 大林ミカ氏より紹介された。

最初に、小売市場における競争促進に関する状況が紹介された。2000年に特別高圧、2005年に高圧、一般家庭含む低圧は2016年4月からそれぞれ自由化が行われている。そのスイッチングの現状はどうなっているのか、ということだ。部門別・電力会社種別の小売シェアの動向を分析すると、高圧・低圧については新電力のシェアはある程度進捗しているが、電力量の大きな特別高圧は自由化開始よりもむしろ少なくなっていること、さらには契約別ではまだ大手電力やその子会社の市場支配力が高いことがわかるとのことだ。

特に、大手電力による「取り戻し営業」や「廉売行為」の問題が従来から指摘されてきたという。取り戻し営業とは、電力のスイッチングの際にスイッチングに必要な一般送配電事業者に寄せられる情報を利用し、旧一電の小売部門がより安い価格を再提示し、スイッチングを阻止しているのではないか、という疑問である。コンプライアンスとともに、不当廉売の問題が指摘されているという。

これに対して電取委は「小売市場重点モニタリング」を2019年9月より開始したが、これは申告ベースとなっており現状に則しているかは不透明で、独占禁止法の観点からも調査が望まれている。旧一電は総括原価方式の際につくられた投資回収済みの大型電源を独占的に所有しており、価格競争には有利であり、したがって、発電部門と小売部門の収益構造の明確な分離も求められているということも指摘された。

また、原子力発電所の廃炉費用や福島第一原子力発電所自己の事故処理費用・賠償費用などが過去にさかのぼり、託送料金に課せられるようになったことについても言及された。

これは、小売り全面自由化によって、全ての電気料金が競争市場にの下にあるようになったからだ。実際に2020年4月から託送料金にこの「過去の負担分」は上乗せされている。

しかし本来、原子力発電所に関わる費用は原子力発電事業者が負担すべきものであり、託送料金の負担が新電力にも課せられていることは改めて議論をしていかなければならないとのことだ。

提言2-1:大手電力による廉売行為の監視強化
公正な小売市場競争を促進するため、電取委及び公正取引委員会は大手電力(旧一電)等による廉売行為に対する監視を強化すべきである。

提言2-2:託送料金による原子力一般負担金回収の見直し
託送料金は本来、送配電に係る費用を回収するための料金であり、それを用いた原子力一般負担金の回収方法は見直す必要がある。

脱炭素社会を実現するための小売市場における、電源情報開示の問題

続いて、脱炭素社会を実現するための小売市場改革の促進についての提言が紹介された。

大林氏によると、消費者が考える電源選択要件は、コスト面ももちろんだが、環境負荷の観点から電源を選択したいと思う消費者も増えてきているという。こうした環境意識のある消費者は、あるアンケートでは8割に上るという。それに関連付けて、電源情報の行われていることが望ましいということも指摘された。

システム改革が先行する海外では、電力基礎情報の開示が義務づけられている。この開示は前述の「消費者保護や環境配慮の観点だけからではなく、電力市場の透明化による競争の促進、効率的電源の導入促進」(セミナー資料より)によるものである。消費者に分かりやすい表示も求められる。

現時点では日本ではそうした情報開示は義務づけされておらず「望ましい行為」とされているままである。実際に情報開示を行っていない小売事業者もいる。

また、電力の開示情報がただ「自然エネルギー」だけだと、自社グループ内に大型水力をもっている大手電力が環境の面で有利な状況となってしまう。これに加えて、大型水力を含めた再生可能エネルギーの環境価値は、非化石証書として認証され、取引されることになるが、特に非FIT非化石証書には電源表示が義務づけられておらず、トラッキング制度もない。これではどのような再エネの環境価値なのかがわからず、市場の不透明性が高まるとのことだ。

提言2-3:需要家が自然エネルギー電力を選びやすくする制度導入
需要家が自然エネルギー電力を選択しやすくするため、電源トラッキング、小売電気事業者に対する電源および二酸化炭素排出量の表示義務、需要家が発電事業者と電力購入契約を直接締結できる仕組みなどを導入すべきである。

提言2-4:大手電力会社内での非化石価値取引への監視
自然エネルギー電力の売買に際し、大手電力が一方的に有利にならないよう、旧一電の発電部門から小売部門への非化石価値取引を監視する必要があり、場合によっては大手電力の発電部門と小売部門の分離など構造的措置も検討すべきである。

提言2-5:非化石証書を国際的に通用する制度へ
電源トラッキングと同様の制度を整備し、非化石証書内で電源情報を明記すべきである。同時に、電源の持続可能性についてのクライテリアの整備など、国際的にも適用できる制度にしていくことが必要である。

以上で、4章ある提言の前半第1、2章を紹介した。後編では第3章、第4章の提言についてウェビナーで紹介された内容をお伝えする予定である。

参照

自然エネルギー財団:自然エネルギーのさらなる導入拡大に向けた電力システム改革を

自然エネルギー財団:電力システム改革に対する提言

後編へ続く

(Text:小森岳史)