2021年年明けに起こった電力需給のひっ迫余波から、新電力2社が破産した。破産したのはフェニックスエナジーとファミリーエナジー。2社は8月11日、再エネ賦課金未納で経済産業省から社名を公表されていた。電力ひっ迫は1ヶ月にわたり卸電力市場の価格を高騰させ、多くの新電力を経営危機に追い込んだ。今後も倒産する新電力が増える可能性がある。
信用調査会社の東京商工リサーチによると、フェニックスエナジーは7月21日、東京地裁より破産開始決定を受けた。
同社は、アメリカの電力販売事業者であるJPG Energy Management LLCからの出資で2017年に設立された新電力である。沖縄を除く全国で一般家庭などを対象に電力を販売していた。東京商工リサーチによると、ネットワークビジネスの手法などを用いた顧客開拓を展開し、2020年12月期に新規契約3,000件を獲得し、売上高2億135万円をあげていたという。
しかし、事業拡大に伴い販管費が大きく膨らみ、2020年12月期には1億7,274億円の赤字を計上し、債務超過額は2億9,792万円まで拡大していた。
その一方で、2020年の年末から起こった電力需給のひっ迫により、日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格は1ヶ月にわたり通常時の10倍にまで高騰。さらに1kWhあたり10円以下だったインバランス料金も、一時500円を超えるレベルにまで跳ねあがってしまう。
インバランスとは、一般家庭などの顧客の電気使用量が調達量を上まわった場合、停電を回避するため、その不足分を新電力に代わって、一般送配電事業者が供給する仕組みのこと。新電力は不足した電力分の費用を清算金(ペナルティー)として、後日、一般送配電事業者に支払わなければならない。
債務超過に陥った中でのインバランス料金の支払いは、フェニックスエナジーの事業環境を悪化させた。同社はインバランス料金の分割支払いの特例措置を受けるなどして資金繰りに奔走したが、限界に達し、破産に至った。負債総額は2020年12月期時点で3億4,611万円だが、変動している可能性があるという。
もう1社のファミリーエナジーは8月4日、東京地裁より破産開始決定を受けた。帝国データバンクなどが報じた。
同社は、アメリカの電力販売事業者であるファミリーエナジーの日本法人として2016年に設立され、一般家庭や小規模事業者を対象に電力を販売してきた。積極的な訪問販売などにより、2018年12月期には売上高約3億6,500万円を計上したという。
しかし、顧客開拓の営業に際して、電気料金が安くなる旨だけを告げ、キャンペーン期間終了後は電気料金が変動する事実を伝えておらず、これが特定商取引法に違反するとして、2019年12月消費者庁より3ヶ月間の業務停止命令を受ける。
こうした中、年明けの市場価格高騰を受け、電力調達コストが急増し資金繰りが悪化。同社もインバランス料金の分割支払いの特例措置を受けるも、破産に至った。負債総額は2018年12月時点で約8億6,900万円とされるが、変動している可能性があるという。
電力ひっ迫に端を発した電力価格の高騰は、多くの新電力を経営危機に追い込んでいる。インバランス料金の分割支払いの特例措置を受けた事業者数は177社(3月25日時点)にのぼっており、今後も新電力の破産が続く可能性がある。
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