今冬の電力ひっ迫による電力価格の高騰が、大手電力会社の業績にどのような影響を与えたのか。2020年度決算から明らかとなった。もっとも影響を受けたのは九州電力で260億円の減益となった。その一方で、中部電力は電力融通量が増加するなど、200億円の増益効果をもたらし、各社で明暗がわかれた。
今冬に起こった電力の需給ひっ迫によって、平均8〜10円程度だった卸電力価格が高騰し、一時1kWhあたり250円をつけるなど、1ヶ月にわたり高騰が続いた。
卸電力市場から250円で調達した電気は、一般家庭には20数円で売らなければならず、多くの電力会社が業績の悪化に直面した。また火力発電所を持つ大手電力会社は燃料であるLNG(液化天然ガス)の追加調達も実施し、これがさらなる利益の押し下げとなった。
その一方で、電力不足に陥った新電力など他の電力会社への電力融通や、卸取引所への卸売りなどが、大手電力会社の利益を押し上げた。
大手電力会社の中で、電力ひっ迫による減益影響を受けたのが5社だった。
東京電力ホールディングスと四国電力はそれぞれ50億円、経常利益が減少。北陸電力は90億円、中国電力は150億円の減益となり、もっとも影響を受けたのが九州電力で260億円の減益をよぎなくされた。
その一方で3社が増益となった。そのうち、もっとも増益となったのが中部電力で200億円の経常利益増につながった。また北海道電力は184億円の増益に、東北電力には43億円の増益効果をもたらした。
なお、関西電力のみ収益への影響はゼロだった。
電力ひっ迫の影響は各社で明暗がわかれる結果となったが、今夏も再び電力ひっ迫が起きる可能性がある。
梶山経済産業大臣は5月14日の記者会見で、今夏の電力需給の見通しについて、「ここ数年でもっとも厳しい。知恵を振り絞って、この厳しい状況を乗り切っていかなければならない」と述べた。
背景には、火力発電所の休廃止が相次ぐことや、平年より気温が高くなることがある。
さらに電力ひっ迫は夏だけでなく、今年の冬にも起こる可能性があり、2022年2月がもっとも危険水準になると指摘されている。仮に今夏、そして今年の冬に電力がひっ迫すれば、電力各社はさらなる業績悪化に直面するだろう。そうなれば、一般家庭含めた電気料金の値上げが現実のものとなりかねない。
(Text:藤村朋弘)
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シリーズ:2021年電力ひっ迫
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