2030年の温室効果ガス46%削減など脱炭素に向けた施策のひとつとして、菅首相や小泉環境相が言及していた「新築住宅への太陽光設置義務化」の見送りが決定的となった。6月3日、国土交通省が開催した審議会で公表された取りまとめ案に明記されておらず、委員からは「2025年、遅くとも2030年義務化」明記を求める意見が出た。
国交省が6月3日開催した「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会(第4回)」において、取りまとめ案が公表された。
素案には「住宅・建築物への太陽光発電の設置拡大に向けて、制度的対応のあり方も含めて、必要な対応を検討する」。また「2030年を見据え、住宅・建築物への太陽光発電のさらなる設置拡大に向けた土壌拡大を進める」との記述はあったが、「新築住宅への太陽光設置義務化」は明記されず、義務化見送りが決定的となった。
委員のひとり、鳥取県の平井伸治知事は「脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入拡大は不可欠だが、一律義務化は難しい」と述べ、「蓄電池への導入補助など、一般消費者が太陽光発電の導入メリットを実感できるよう思い切った財政措置」を国に要望した。
一方、別の委員は、「現時点での義務化が難しくとも、2025年の義務化、遅くとも2030年に義務化するという、将来時点での義務づけを明記すべきだ」と要望した。
検討会では「今すぐの義務づけは難しい」との意見は多いが、その一方で、「将来時点での義務づけは必要なし」とする意見は出ておらず、「将来での義務化は検討会の意見でもあり、素案に反映してほしい」と語った。
また、京都府では今年4月から2,000m2以上の大規模建築物を先行対象とし、再エネの導入義務化をスタートさせるなど、自治体の脱炭素戦略が進む。
委員からは、「京都府のような脱炭素に先行的に取り組む自治体と協力し、全国義務化に向けた環境整備をするべきだ」という意見もあがった。
国交省は、委員の意見をもとに、環境省や経済産業省とも協議したうえで、6月中に詳細をまとめる方針だ。
(Text:藤村朋弘)
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