市民発電所「足温ネット」、そのはじまりはフロンガス回収から。 | EnergyShift

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市民発電所「足温ネット」、そのはじまりはフロンガス回収から。

市民発電所「足温ネット」、そのはじまりはフロンガス回収から。

2020年07月07日

レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡

市民立発電所の設置を進めてきた、「足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ(足温ネット)」。その設立は1996年にさかのぼる。足温ネット事務局長の山﨑求博氏によるコラム。今回は、設立の経緯と最初に取り組んだことをめぐるストーリーだ。

脱炭素のきっかけはCOP3京都会議

さて、市民立発電所の話から始めた連載ですが、足温ネットが活動を始めたのはそもそも何がきっかけだったのか。そんな話をしたいと思います。

設立の前年である1996年11月、江戸川区内で市民活動をしているメンバーたちが集まってとある会議が開かれました。名づけて「気候フォーラム江戸川ネットワーク実行委員会」。翌1997年12月に、京都で気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)が開催されることが決まり、国内の環境NGO/NPOでは市民側でも会議を後押ししようと、全国の連合体「気候フォーラム(現・気候ネットワーク)」結成の動きがありました。

ドイツ・ベルリンで開催されたCOP1で、環境NGO/NPOによる連合体「クリマフォーラム」が結成され、会議に向けた運動の盛り上げや海外から参加するNGOや市民のホスト役を務めたことにならおうとしたのです。

そして、江戸川区でも市民ができることがあるはずと地域のネットワークづくりを始めたわけです。名称を「足元から地球温暖化を考える市民会議・えどがわ」(仮称)とし、気候フォーラムに参加することになりました。

女性弁護士を代表に

団体を立ち上げるにあたり、誰を代表にするかという話になりました。顔ぶれは、市民活動家にサーファー、お寺の住職、公務員などなど、男性ばかりです。誰ともなく「男性よりも女性の方が良いのでは」となりましたが、身近にお願いできる女性の知り合いなどいません。

すると、メンバーのひとりから、「一緒に活動している弁護士事務所に大気汚染訴訟の弁護団を担当する女性弁護士がいる」との情報が。早速、弁護士事務所を訪ねてお願いすることになりました。

牛島聡美さんは当時、弁護士2年目で、東京23区内のぜん息公害患者を原告に、自動車による大気汚染について裁判を闘う準備を進めていました。そして、日本で開催される国際会議に向けて地域での取り組みを進めたいと話す私たちに対し、快く代表を引き受けていただきました。

牛島聡美さん

最初に取り組んだのは…

会の設立にあたり、地域で取り組むアクションプランについて話し合った結果、最初に取り組んだのがフロンガスの回収でした。エネルギーではないのです。

当時、江戸川区内には自動車解体業者が50社ほどあり、1年間に台数ベースで東京都全体の60%に当たる4万台が解体処分されていました。解体時には、カーエアコンの冷媒として使われているフロンガスが回収されることなく大気中に放出されます。

フロンガスがオゾン層を破壊する物質であることは良く知られていますが、と同時に温室効果ガスでもありました。CFC12で温室効果はCO2の7,000倍、HFCでも3,000倍と驚異的です。江戸川区で解体される4万台から放出されるフロンガスの量は推計で年間30トン、CO2に換算すると何万トンという計算になります。江戸川区は密かに地球温暖化に貢献していました。

これは、地域として最も温暖化防止&オゾン層保護に貢献できる分野になると、具体的なプロジェクトを検討することになり、江戸川区役所からの情報収集などを始めました。また、1997年1月に開催した「温暖化を考えよう!江戸川区民の集い」では、冷蔵庫からのフロンガス回収のデモンストレーションを行い、フロン問題に取り組むことをアピールしました。

温暖化を考えよう!江戸川区民の集い

江戸川区役所からの電話

団体設立のニュースが朝日新聞に掲載され、今後の運動として、区内の自動車解体業者の協力を得てフロンガスの回収・処理に必要な費用を集めていくことが記事になりました。実際に、自動車解体業者からは1台当たり1,600円かかるとの試算が示されていたからです。

1997年1月の朝日新聞記事

記事掲載後まもなくして、江戸川区役所公害対策課から1本の電話がかかってきました。

新聞記事を拝見したが、どのような活動を考えているかお話を伺いたい、というものでした。私たちは、区役所を訪問し、フロンガスの無害化処理にかかる費用を集めるため、ステッカーやグリーティングカードを作成・販売する「フロンガス分解プロジェクト」を始めるつもりであると伝えました。

すると、公害対策課の担当者は、「区としてもフロンガス回収・処理は公害対策として重要と考えており、1997年度から新規事業として立ち上げたいと準備を進めている」と話し始めました。大変結構なお話です。ぜひ、応援したいと伝えると、担当者はこう打ち明けてくれました。

「準備を進めているのだが、区長がなかなかウンと言ってくれなくてネ…」

さて、足温ネットのフロンガス分解プロジェクトと江戸川区役所のフロンガス回収・処理事業はどうなったのでしょうか? それは、次回で。

足温ネットの会報誌「あしもと通信」第1号

連載:レジェンド?はたまた惰性?~足温(そくおん)ネット20年の軌跡

山﨑求博
山﨑求博

1969年東京江東区生まれ。東海大学文学部史学科卒。現在、NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ事務局長。自分をイルカの生まれ変わりと信じて疑わないパートナーとマンション暮らし。お酒と旅が大好物で、地方公務員と環境NPO事務局長、二足の草鞋を突っかけながら、あちこちに出かける。現在、気候ネットワーク理事、市民電力連絡会理事なども務める。

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