BPとシェブロンが地熱スタートアップのEavorに4,000万ドル(42億円)を投資 | EnergyShift

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BPとシェブロンが地熱スタートアップのEavorに4,000万ドル(42億円)を投資

BPとシェブロンが地熱スタートアップのEavorに4,000万ドル(42億円)を投資

石油メジャーのBP(英)とシェブロン(米)が、地熱発電のスタートアップであるカナダ・Eavor Technologiesに投資を決めた。石油事業からの脱却の一環となる。Eavorの地熱発電技術は、現在主流となっているものとは異なり、地中の熱水ではなく地中の熱そのものを利用するもので、安定した電源として運用できるものだ。

クリーンな高温岩体発電で注目のスタートアップ企業 Eavor

Eavor Technologiesはカナダの地熱発電技術のスタートアップで、クリーンでディスパッチ(給電指令)が可能な再生可能エネルギーの供給を目指している。中心となる技術は、Eavor-Loopといい、地球の自然の熱を利用したものだ。

しくみは次のようなものだ。ループしたパイプを地上から地下約3,500mに設置し、パイプの中の水を地熱で加熱する。発生した蒸気によって地上にあるタービンを回転させて発電し、冷却した水は再び地下に送られる。

地中に熱水がなくても発電が可能

一般的な地熱発電は、地中にある高温の熱水を使って発電するしくみだが、Eavor-Loopの場合は地中に熱水がなくても発電が可能だ。さらに、地下の熱水を利用すると熱水に溶けている成分がパイプを詰まらせてしまい、定期的に新たなパイプを設置する必要があるほか、熱水中の硫化水素など有害物質を大気中に放出するなどの問題もある。

その点、Eavor-Loopでは発電に使われる熱水が閉鎖系のパイプを循環しているため、こうした問題が発生しない。

Eavor Technologiesではこの技術について「巨大な充電式バッテリーのように地球の自然の熱を利用」したものだと表現している。この方式は大規模化が可能な安定電源でもあり、石炭火力発電や原子力発電にとってかわるベースロード電源として太陽光発電や風力発電を補完するという。

目標は、2030年までに1,000万世帯への電力供給だ。


Eavorの地熱発電所の様子

石油会社もカーボンゼロへ必死

今回、投資を行ったのは、BPの投資会社であるBP Venturesや、同じくシェブロン(Chevron)の投資会社であるChevron Technology Venturesをはじめ、Temasek、BDC Capital、Vickers VenturePartners、Eversourceといったベンチャーキャピタルやエネルギー企業、金融機関、投資会社が含まれる。

とりわけカーボンゼロを目指す石油メジャーにとっては、再生可能エネルギーへの投資は事業戦略上重要なものとなっている。

BPのゼロカーボンエネルギー担当上級副社長であるFelipe Arbelaez氏はEavor Technologiesに対し「風力発電や太陽光発電といった私たちのポートフォリオの成長する分野を補完するもの。低炭素の未来を解き放つのに役立つ可能性を秘めている」と評価する。

Eavor Technologiesの社長兼CEOのJohn Redferm氏は、今回の資金調達にあたって、同社の発電技術が「世界的に競争力のあるレベルに下げることができることを楽しみにしている」と述べ、BPやシェブロンなどの投資が、同社の技術がグローバルに拡大する、その将来性への支持だとコメントした。

Eavorのメインスタッフ
Eavor Technologiesの社長兼CEOのJohn Redferm氏(中央)とスタッフたち Eavorウェブサイトより

Eavorプレスリリース:Eavor Technologies announces new funding and partnerships

(Text:本橋恵一)

もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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