航続距離効率は世界トップの約7.4km/kWh、高級EVスタートアップのLucid Motorsが上場 CEOはテスラ出身のエンジニア  | EnergyShift

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航続距離効率は世界トップの約7.4km/kWh、高級EVスタートアップのLucid Motorsが上場 CEOはテスラ出身のエンジニア 

航続距離効率は世界トップの約7.4km/kWh、高級EVスタートアップのLucid Motorsが上場 CEOはテスラ出身のエンジニア 

2021/08/23

カリフォルニアのEVスタートアップで、高級EVメーカーのLucid Motorsが7月、NASDAQへの上場を果たした。テスラ出身のエンジニアであるピーター・ローリンソン氏がCEO兼CTOを務める企業だ。駆動系の改良に力を入れ、航続距離効率は1kWhあたり約7.4kmと現在のところ世界トップ。テスラとはまた異なった、地球環境を配慮したデザインと高品質なサービスがある。日本円で約1,800万円の高級車メーカーLucid Motorsとはどのような企業なのか紹介する。

テスラ出身者が率いる高級EVメーカー

7月26日、米国の高級EVメーカーLucid MotorsがNASDAQに上場した。上場にあたり、Lucid Motorsは特別買収目的会社(SPAC)のチャーチル・キャピタルⅣと合併し、社名は「Lucid Group」に変更したが、ブランドとしてはLucid Motorsを使っている。

Lucid Motorsは、テスラ出身のピーター・ローリンソン氏が率いる高級EVメーカーだ。「Lucid Air」シリーズという同社のEVの特徴は、最大517マイル(約832km)という航続距離の長さと航続距離効率の高さ、コンパクトな車体のサイズを両立させた点だろう。

CEO兼CTOのピーター・ローリンソン氏は、前職のテスラでイーロン・マスク氏の右腕を務めた。モデルSの主任エンジニアだったことでも知られる。英国のロータス・カーズやジャガーなどで、30年以上にわたり自動車産業でキャリアを積んできたベテランのエンジニアだ。

Lucid Airシリーズのラインナップは現在4種類。フラッグシップモデルの「ドリームエディション(約1,800万円)」と「グランドツーリズムエディション(約1,475万円)」は、2021年の生産を予定している。よりリーズナブルな「ツーリング」「ピュア」は2022年にかけて販売される見込みだ。

「ドリーム」は1,080馬力で、約2.5秒で時速60マイル(約96km)に達する。その一方で、全長4,975mm、全幅(サイドミラーなし)1,939mm、全高1,410mmとテスラのモデルSより少しだけコンパクトだ。

Lucid Groupの考えるサステナビリティとは

同社の駆動系(パワートレイン)の特徴は「Lucid Electric Advanced Platform(LEAP)」という省スペース設計にある。LEAPの詳細は明らかにされていないが、モーターをはじめとするあらゆる部品を小型化し効率を改善している。また、車内空間を広げるために部品の配置にも工夫が凝らされている。


出典:Lucid ウェブサイトより

こうした努力の結果、航続距離効率は1kWhあたり4.6マイル(約7.4km)と、ドイツや英国、米国の他の同じクラスにある電気自動車を押さえてトップとなった。同社は、地球上の資源を可能な限り効率よく利用することがサステナビリティにつながると主張している。

また、インテリアの素材も地球環境に配慮したものを使用している。例えば、皮革にはスコティッシュ・レザー・グループの「Bridge of Weir」を採用。同社の皮革の製品化の工程で使う水の40%をリサイクルするなどしているという。

前身は「Atieva」という蓄電池サプライヤー

一方、高級感という点では、質の高いサービスや車内のオーディオシステムにも及んでいる。

メンテナンスや修理にあたっては、ほとんどの場合は認定を受けた技術者がユーザーのもとで行う。診断もほとんどリモートで行うことができる。技術者がユーザーのところに向かうためのバンにはコーヒーマシンがあり、ユーザーはコーヒーを飲みながらメンテナンスや修理を待つこともできる。

オーディオについても、車内に21個のスピーカーが搭載され、リアルなサウンドが楽しめるが、それだけではなく警告音など車外の音もリアルな方向性を持ち、安全性を高めることに役立っている。

Lucid Motorsについて、テスラからスピンアウトしたEVメーカーという印象をもつ人は少なくない。しかし、Lucid Motorsの前身は「Atieva」という蓄電池メーカーだ。2016年10月に、ラグジュアリーEVブランドを目指し社名をLucid Motorsに変更、イメージを一新した。

前身のAtievaは、EVメーカーというよりは蓄電池のサプライヤーとしての位置づけだった。電気自動車のフォーミュラカーレースであるフォーミュラEに蓄電池を納めた実績をもつ。

Lucid Airシリーズに続くパワートレインの研究は、Atieva時代から始まっていた。2016年ごろから中古のバンを輸入し実証を重ねてきた。実証に使われたバンは「Edna」と名付けられ、時速60マイルに達するのに5.1秒のスプリンターだったという。


Lucid ウェブサイトより

Ednaの写真を見ると、ラグジュアリーやスタイリッシュという表現からはほど遠いが、Atieva時代のスタッフの努力や愛情が伝わってくるようだ。

高級車の次は量産車の販売戦略か

さて、現在はラグジュアリーEVとしてのブランディングに力を入れているLucid Motorsだが、今後は高級車から量産型へと舵を切ると見られる。実際に、2022年ごろの販売が予定されている「ツーリング」「ピュア」はそれぞれ約1,000万円、約850万円と、販売価格が下がる見込みだ。

高級車に続き量産車を販売する戦略はテスラと同様だ。一方のテスラは、2020年9月のバッテリー・デーに、2万5,000ドル(約263万円)のEVを3年以内に販売すると宣言している。これに対してLucid Motorsがどのような販売戦略に打って出るのか、大いに注目したい。

山下幸恵
山下幸恵

大手電力グループにて大型変圧器・住宅電化機器の販売を経て、新電力でデマンドレスポンスやエネルギーソリューションに従事。自治体および大手商社と協力し、地域新電力の立ち上げを経験。 2019年より独立してoffice SOTOを設立。エネルギーに関する国内外のトピックスについて複数のメディアで執筆するほか、自治体に向けた電力調達のソリューションや企業のテクニカル・デューデリジェンス調査等を実施。また、気候変動や地球温暖化、省エネについてのセミナーも行っている。 office SOTO 代表 https://www.facebook.com/Office-SOTO-589944674824780