日本国内においては2020年12月に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が公表され、その中でも水素はカーボンニュートラルのキーテクノロジーとして、幅広い用途が期待されている。この潮流を踏まえて、伊藤忠は水素市場の開拓を推進する。
今年10月にはノルウェーの水電解装置メーカー・ネル社と水素関連ビジネスを推進することで合意した。ネル社は再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力を使って、CO2を排出させることなく水素を生産する「グリーン水素」の生産に欠かせない水電解装置に強みをもつ。グリーン水素に不可欠な水電解装置の大手と組むことで、製造部分での知見やネットワーク拡大を狙う。
また、生じたCO2を、回収・貯蔵(CCU)することで脱炭素化する取り組みも進める。近年、CO2を分離回収し、EOR(石油増進回収)やCCUに利用するカーボンニュートラルな燃料として「ブルーアンモニア」が注目されている。
現在、全世界で年間約2億トンのアンモニアが製造されているが、その大半は製造時にCO2が排出されるアンモニアであり、気候変動への影響が指摘されている。そこで伊藤忠は天然ガスからアンモニアを製造する際に排出されるCO2を分離回収し、地下に貯留する「ブルーアンモニア」の輸入を始めた。
再エネ由来のグリーン水素・アンモニアよりコストや技術の面で供給しやすい「ブルーアンモニア」の生産準備を進めるべく、同社は2020年には東シベリアと日本の間を結ぶアンモニアサプライチェーン(供給網)の構築に向けた事業化調査を開始。2026年から、カナダで燃料用アンモニアの商用生産を始める予定だ。
ブルーアンモニアは実用化には至っていない。また、アンモニア単体での取引量は少なく、エネルギー用途での量的な確保が課題だ。伊藤忠はガス田の隣州、カナダ・アルバータ州にある工業地帯にアンモニア工場を新設し、製造したアンモニアは、西カナダの輸出港から日本へ海上輸送する。主に電力会社や自社で発電する鉄鋼、化学品メーカーなどに販売する。
燃料に特化したアンモニアの商業プラントを新設し、生産から輸送まで供給網の確立を目指す。
まずは肥料用として日本やアジアで販路を開拓すべく、第1弾として今年10月に肥料用のブルーアンモニアの輸入を国内で初めて開始した。日本のほか、中国や韓国など、アジア向けにも需要が広がるとみて、調達や販売網を構築する。
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