押し寄せてくる「中国EV網」 トヨタ・日産・ホンダはどう迎え撃つか | EnergyShift

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押し寄せてくる「中国EV網」 トヨタ・日産・ホンダはどう迎え撃つか

押し寄せてくる「中国EV網」 トヨタ・日産・ホンダはどう迎え撃つか

2022年01月12日

2021年12月19日、中国の自動車大手中国第一汽車集団(FAW)が、日本で初めてとなる販売店を大阪市難波駅前に開店した。同社の高級車ブランド「紅旗」の各車種を販売するとしており、2022年夏からは多目的スポーツ車(SUV)タイプの電気自動車(EV)も展開していく予定だ。これまで、欧州からのイメージが強かった輸入車だが、自動車生産台数世界一を誇る中国勢の勢いが、EVシフトの波に乗って日本に押し寄せている。

1千万円超の高級車から50万円の低価格車までが揃う中国産EV

メーカー車種バッテリー容量/航続距離価格サイズ
中国第一汽車集団(FAW)E-HS984kWh/460km
99kWh/510km
120kWh/690km
50.98万元(約915万円)~
72.98万元(約1,310万円)
全長5,209mm
全幅2,010mm
全高1,713/1,731mm
蔚来汽車(NIO)ET575kWh/550 km
100kWh/700km
150kWh/1000km
32万8000元(約589万円)~全長4,700mm
比亜迪自動車(BYD)Dolphin30.7kWh/301km
44.9kWh/405km
9万3,800元(約160万円)~
10万8,800元(約185万円)
全長4,070mm
全幅1,770mm
全高1,570mm
中国第一汽車集団(FAW)E-HS99.3kWh/120km
13.9kWh/170km
2万8,800元(約50万円)~全長2,920mm
全幅1,493mm
全高1,621mm
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FAWはこれまで、トヨタとの協業関係にあることで日本に周知されてきた企業でもある。事業開始20周年となった2020年には、合弁会社の管理体制を再編し、天津一汽トヨタ自動車有限会社(以下、TFTM)を一汽トヨタ系統括事業体とした。

そんなFAWの高級車ブランド紅旗は、日本円にして1千万円超の車種も擁するが、中でも注目を集めているのが完全電気SUVの「E-HS9」だ。全長5,209mm、全幅2,010mm、全高1,713/1,731mmという大型車で、バッテリー容量は84kWhと99kWhの2種類が現在の販売モデルだが、最新モデルとして120kWhのものも登場する。一回の充電による最大航続距離はそれぞれ460km、510kmと高級車の名に恥じない長距離を確保しており、120kWhバッテリーでデュアルモーターの最高モデルは最長690kmにまで達する。現地の報道によると、価格は50.98万元(約915万円)~72.98万元(約1,310万円)とのこと。

とはいえ、1千万円超の中国産EVでは、身近に感じない人も多いだろう。当然ながら、中国産EVの勢いは高級車にとどまらない。

中でも、米テスラに真っ向勝負を仕掛けたといわれるのが、蔚来汽車(NIO)だ。NIOが2021年12月18日に発表したEVセダン「ET5」は、価格が32万8,000元(約589万円)からと報道されている。テスラが中国で製造する小型EVセダンの「モデル3」と比べて、サイズが似通うことや、僅かに安い価格となっていることから、同車に対する競合車と位置付けられている。また、テスラと同様の新興メーカーである点も並び称される一因だろう。

とはいえ、テスラに挑んだ話題先行の車体というわけではない。75kWhバッテリーで550km以上、100kWhのバッテリーでは700km以上の航続距離を実現しており、その性能は確かなものとなっている。さらに、150kWh超長距離バッテリーかつデュアルモーターの仕様になれば、1,000km以上の航続距離を実現できる。

FAWと同様にトヨタの中国側パートナーとして協業しているのが、比亜迪自動車(BYD)だ。元は携帯電話の電池メーカーだったが、2003年に電気自動車産業に参入。18年で中国トップクラスのEVメーカーへと上り詰めたが、同時に大手車載電池メーカーの側面も持っており、トヨタとの協業も、その車載電池の技術を採用してのことだと報じられている。

そんなBYDといえば、EVバスの勢いが強く、すでに日本でも多くの企業が導入している。一方で、乗用車に目を向けると、2021年9月のモーターショーでお披露目となった「Dolphin(中国名:海豚)」に注目が集まっている。

全長4,070mm×全幅1,770mm×全高1,570mmで、バッテリー容量は30.7kWhと44.9kWhの2種類。航続距離はそれぞれ301km、405kmという性能だ。価格は、30.7kWhバッテリーのエントリーモデルで9万3,800元(約160万円)、44.9kWhバッテリーを使う『时尚版』で10万8,800元(約185万円)となっており、中低所得者層向けとして認知されている。

その特徴はやはりバッテリーにあり、LFP(リン酸鉄)系の新型バッテリー「ブレードバッテリー」を用いている。従来のLFP系バッテリーに比べて安全性が高いとされており、コストパフォーマンスも優れる。Dolphinの低コスト化を支える大きな要因となった。

低コストといえば、日本に進出した中国産EVの中で欠かせないのが、格安EVとして話題を集めた上汽通用五菱汽車の「宏光(ホンガン) MINI EV」だろう。最低価格2万8,800元(約50万円)という、超低価格によって、中国国内ではテスラを上回る販売台数を獲得しており、300万円台以上が主流となっている日本市場でも目を引いている。

同商品は、全長2,920mm×全幅1,493mm×全高1,621mmという小型サイズで、横幅1,480mm以下の軽自動車規格を若干上回るサイズで4人乗り。航続距離は、エントリーモデルでバッテリー容量が9.3kWhの通常版では120km13.9kWhの長距離版では170kmとなっており、性能において最低限を備えている。

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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