燃料高は電力会社の業績も圧迫しはじめた。
燃調制度により、大手電力会社はあらかじめ電源構成などから設定した基準燃料価格と、過去3ヶ月分の平均燃料価格の差額を電気料金に自動転嫁できる。ただし、大幅な値上げによる消費者への影響を緩和しようと、国の認可を受けた規制料金と呼ばれる料金メニューは、自動転嫁できる上限価格が設定されている。その上限価格は基準燃料価格の1.5倍まで。1.5倍を超えると燃料価格がさらに上昇しても料金単価は変わらず、そのコストは電力会社が負担しなければならない。
燃料費調整のイメージ(東京電力)
出典:東京電力エナジーパートナー
北陸電力は2022年2月分で自動転嫁の上限に達した。北陸電力が上限価格を超えるのは、2009年に現在の燃調制度がスタートして以降はじめて。大手電力会社で上限価格を超過したのは、原油価格が1バレル100ドルを超えた2014年の中部電力以来だという。
北陸電力によると、原油換算1キロリットルあたり3万2,900円の上限価格に対し、2022年2月分の平均燃料価格は3万4,100円となった。差額の1,200円が自社負担となる。値上げが上限に達したのは、一般家庭の55%に相当する約75万件と報じられており、自己負担額は数千万円規模にのぼるという。
その他の電力会社にも料金転嫁の上限が迫る。
関西電力は上限価格4万700円に対し、2022年2月分の平均燃料価格が3万9,400円まで増加し、上限価格までわずか1,300円となった。中国電力や四国電力、沖縄電力も上限まで3千数百円に迫っており、2022年3月以降、自己負担が発生する可能性がある。平均燃料価格が基準燃料価格を下回るのは中部電力1社しかない状況だ。
基準燃料価格 | 平均燃料価格(2022年2月分) | 料金転嫁の上限 | |
東京電力 | 44,200円/kl | 47,400円/kl | 66,300円/kl |
関西電力 | 27,100円/kl | 39,400円/kl | 40,700円/kl |
中部電力 | 45,900円/kl | 44,000円/kl | 68,900円/kl |
九州電力 | 27,400円/kl | 33,900円/kl | 41,100円/kl |
北海道電力 | 37,200円/kl | 40,400円/kl | 55,800円/kl |
東北電力 | 31,400円/kl | 39,700円/kl | 47,100円/kl |
北陸電力 | 21,900円/kl | 34,100円/kl | 32,900円/kl |
中国電力 | 26,000円/kl | 36,300円/kl | 39,000円/kl |
四国電力 | 26,000 円/kl | 35,300円/kl | 39,000円/kl |
沖縄電力 | 25,100円/kl | 34,300円/kl | 37,700円/kl |
北陸電力では料金転嫁できる上限価格を超えた
各社公表資料をもとに編集部作成
北陸電力は上限価格を超えても電気料金を値上げしない方針を示すが、燃料価格の高騰がこのまま長期化し、自己負担額が増え続ければ、業績が悪化するおそれもある。
電気料金の高騰はこの先も続き、深刻化する恐れが・・・次ページ
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