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電気料金、2022年5月まで値上がりするおそれも 2016年電力自由化以降、最高値に

2022年01月14日

危うさ漂う2022年夏の電力供給

LNGなどの燃料高を受け、卸電力市場の価格も高値圏で推移しており、新電力の経営環境が再び悪化しつつある。

マレーシアにおけるLNG生産トラブルや西日本での石炭火力発電所の故障、LNG、石炭、石油の燃料切れ懸念に伴う火力発電の稼働率低下が重なり、電力不足懸念から卸電力の平均取引価格も高止まりが続く。2021年11月に18.5円/kWhまで上昇すると、12月も17.3円/kWhで推移した。

日本のスポット市場の価格推移(日平均、システムプライス)


出典:経済産業省

特にマレーシアのLNG生産トラブルは長期化する懸念さえある

日本にとってマレーシアはオーストラリアに次ぐLNG調達国だが、2021年11月中旬までに、ガス田に含まれる水銀を正常に処理できないトラブルが発生。マレーシア産LNGを調達する四国電力では、坂出火力発電所(1・2・4号機)の大幅な稼働率低下が2022年3月10日まで続く見通しだ。坂出発電所の最大出力は90万kW超で、原子力発電所1基分に相当する。

関西電力や中国電力などは、相次ぐ石炭火力の故障により、LNG消費量が増加。それと同時に石油火力の稼働率が想定外に上昇し、石油まで在庫切れ寸前となったことから、1月末まで石油火力の出力を大幅に落とす。

気象庁は、2022年1〜3月の西日本の平均気温に関して「平年より低い確率50%」と予想する。本格的な冬の到来で暖房需要が増える中、西日本エリアでは需給ひっ迫や価格高騰が起きやすくなっている。電力不足回避に向け、経済産業省はLNG在庫を積み増すよう電力各社に要請。2021年12月23日時点で242万トンと過去4年で最高水準の在庫を積み上げたほか、大手電力会社は火力発電所の定期検査の時期をずらすなどして、電力の安定供給に努めており、今冬の電力不足はなんとか乗り切れる見込みだ。

しかし、2022年夏や2023年1〜2月においても電力がひっ迫する可能性がすでに指摘されている。

特に夏にかけては、出力60万kWの常盤共同火力の勿来8号(石炭)が主変圧器の故障により、2022年8月中旬まで稼働できない。また出力107万kWを持つJERAの武豊5号(石炭)は運炭設備の損傷により建設が遅れており、運転開始時期すら未定の状況だ。一方、コロナ禍からの景気回復により、電力需要は増える見込みで、北海道電力、四国電力、沖縄電力を除く7電力エリアで、電力供給において最低限必要な供給余力(予備率)3%を下回る見通しだ。

2022年度夏季の需給見通し(2021年12月時点)


出典:経済産業省

毎年のように、日本の電力供給は綱渡りの状況が続く中、卸電力価格も不透明感を増している。卸電力価格の高騰によるコスト負担増に耐えきれず、新電力の中にはすでに撤退の動きも出はじめた。光通信系の新電力会社ハルエネが事業者向けの電力販売を停止したと報じられるなど、2021年11月以降、複数社が撤退した模様だ。事業停止や経営破綻に陥る新電力が続出すれば、一般家庭への影響も避けられない

電力会社は火力発電の依存度を引き下げようと、再生可能エネルギーなどの導入を進めるが、まだ過渡期だ。原油やLNGなどの燃料価格が想定外に上昇するリスクは残っており、家計や大手電力、新電力が負担を迫られる状況は当分、改善されそうにない。

 

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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