エネ庁によると、2021年度冬季の電力需給については、最低限必要な予備率3%を確保できているものの、過去10年間で最も厳しい見通しとなっている。供給能力が上回る余力を予備率と呼ぶが、安定的な供給には3%以上が必要とされる。発電所の不測のトラブルなどに備え最低限必要とされる適正予備率は3%だ。東京エリアは来年1月に3.2%、2月に3.1%と3%ギリギリとなっているほか、中西日本6エリアでは来年2月に3.9%となるなど、極めて厳しい見通しとなっている(図2)。
図2:需給検証報告書
出所:資源エネルギー庁
政府は、今後、状況の推移をモニタリングしつつ、電力事業者に対しては、計画外停止の未然防止を要請し、十分な発電用燃料の確保などを呼びかけるなど、需給両面であらゆる対策を検討する。これまで、冬期のピーク電力需要に対して供給力が足りているかについては、供給力にどのくらい余裕があるかを示す「kW」だけをベースに電力需給検証をおこない、需給バランスを事前に確認していた。
しかし、昨年はLNGの在庫「kWh」不足が需給ひっ迫の要因の1つとなった経緯から、今後の対策として電力広域的運営推進機関(OCCTO)による「kW」に加え、一定時間に必要となる電力量である「kWh」をベースにした評価も行う。「kWh」を考慮することにより、燃料の在庫量が評価されることとなる。
また、これまで月2回、大手電力会社を対象に調査していた発電用LNGの在庫状況について、 週1度の調査に頻度を拡大。最新(11/28時点)の在庫は冬季に向け積み上げ傾向であり、過去4年間と比較しても引き続き最高水準を維持している(図3)。
図3:大手電力会社のLNG在庫の推移(2021年11月28日時点)
※在庫量はデッド(物理的に汲み上げ不可な残量)を除く数量
出所:資源エネルギー庁(大手電力会社に対する調査に基づき資源エネルギー庁作成)
日本では、LNGを燃料とするLNG火力発電の依存度が増している。LNGは気化しやすいという特性があり貯蔵に適していないため 、余剰が発生しないよう最適化した燃料調達がおこなわれる。そのため、予想と異なる燃料の消費が全国的また断続的に発生した場合、追加の調達には2ヶ月ほどかかることもあり、燃料不足に陥る可能性をはらんでいる。
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