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中国における燃料電池・水素エネルギーの開発動向と将来展望(2)

中国における燃料電池・水素エネルギーの開発動向と将来展望(2)

2020/03/25

中国における燃料電池車の推進政策は、決して最近のものではなく、エネルギー政策の中で段階的に進んできたという。中国政府はどのようなロードマップを描き、さらに将来像はどのようになっているのか。デジタルリサーチの遠藤雅樹氏が解説する。

中国政府の手厚い燃料電池車推進・支援政策

中国の燃料電池開発は先号記事に書いたように、中国科学院や清華大学などの研究機関やそのスピンアウト企業(新源動力、北京億華通など)、上海汽車などの大手自動車メーカーを中心に進められてきた。2016年以来、中国政府が矢継ぎ早に発表した政策文書「十三五国家科学技術革新計画」(2016年7月)、「十三五国家戦略性新興産業発展計画」(2016年12月)、「自動車産業中長期発展計画」(2017年4月)などで、燃料電池車が国家の新エネルギー自動車戦略の重要な発展方向であることが示されたことで、燃料電池開発関連企業が次々に起業され、石炭や化学工業などの大手国有企業もサプライチェーンの建設に動き始めた。

多くの地方政府が水素燃料電池の産業振興とサプライチェーンの構築を目的とした企業誘致や産業団地の建設プロジェクトを立ち上げ、水素ステーションの建設やバスやトラックなど燃料電池商用車の走行実証試験が各地で行われるようになった。また中央政府と地方政府による補助金を通しての集中的な資金投入が始まったのもこの時期からである。

中央政府と地方政府による購入補助金は、特にバスやトラック等の商用車に対して手厚く、全長6~8メートルの中型燃料電池商用車については国から50万元(800万円)/台の補助金が支給される。その他、地方政府からも同額の補助金が支給されるため合計100万元(1,600万円)/台の補助金を受け取ることができる。

(出典:Ballard Power Systems)

2001年時点ですでに固まっていた開発指針

注目すべきは中国の燃料電池開発はBallardなどの技術導入を通して最近始まったわけではないということだ。

中国の燃料電池開発は、大局的な新エネルギー戦略のもとで段階的に準備されてきた。2001~2005年の「第10次5カ年計画」は燃料電池の研究開発の基本段階で、プロジェクトに参加した上海汽車によりFCV「超越1号」(30kW)などが試作された。この時期に燃料電池車、プラグインハイブリッド車、電気自動車という三本柱を開発目標に据えると同時に、共通要素(バッテリー、電動駆動システム、制御技術)を横断的に開発する「三縦三横」(図1.参照)という開発指針が定められている。

つづく2006~2010年の「第11次5カ年計画」では実証試験を積み重ねる期間とされ、2007年に始まった地球環境ファシリティ(GEF)と国連開発計画(UNDP)による支援プロジェクト「燃料電池バス普及促進による気候変動対策プロジェクト」(フェーズⅡ)で燃料電池バスの普及に取組み、2008年の北京オリンピック、2010年の上海国際博覧会で観客の送迎・移動手段として上海汽車などにより燃料電池バスの小規模生産が行われた。
このプロジェクトはまた、広大な中国全土における燃料電池バス普及に向けた戦略立案作業を通じ、公共交通を担う企業や政府機関の能力強化にも貢献した。

2011~2015年の「第12次5カ年計画」では、上海汽車のFCV「荣威950」をはじめとして自動車メーカーが燃料電池車の生産に取り組み始めた時期で、期間中に、中国全土1万kmにわたるFCVキャラバンも実施された。

上海汽車のFCV「荣威950(ROEWE e950)」

2016~2020年の「第13次5カ年計画」では、(1)技術開発の促進、(2)産業チェーンの構築、(3)実証走行の全国展開という3つの路線が同時進行している。

上海汽車、東風汽車等が次々と燃料電池製品を市場に投入しており、「第13次5カ年計画」は中国における燃料電池車開発と産業化の突破口となっている。中央政府は28.6億元(約458億円)を投じており、うち燃料電池関連は約25%を占める。
2016年からは地球環境ファシリティ(GEF)と国連開発計画(UNDP)による「中国の燃料電池車の商業化促進プロジェクト」(フェーズⅢ)が始まり、北京、上海、佛山、塩城、鄭州の各都市で112台の燃料電池車(FCV、バス、物流車、トラック)による実証走行が始まっている。

2030年、中国燃料電池車は100万台導入へ

2016年に発表された水素燃料電池車開発ロードマップ(中国燃料電池汽車発展路線図)は、2030年までの燃料電池車開発のステップを示したもので、日本のNEDOロードマップなどがよく研究されていていると思う。

このロードマップに基づき、中国の燃料電池車の開発と実用化が進んでいくことになる。2020年の燃料電池車の普及台数は5,000台(燃料電池システムメーカー1社あたり1,000ユニット/年の生産が想定されている)、2025年は5万台(同1万ユニット/年)、2030年は100万台(同10万ユニット/年)である。

これまでの中国の新エネルギー車開発の計画性を考えると、このプログラムの実現可能性は相当高いといえる。少なくとも自国の自動車産業をどの方向に導いていこうとするのかは明瞭である。中国のロードマップが示している数値目標は、例えばNEDOのロードマップに示された数値目標と同じにとらえることはできない。中国のロードマップに示される数値目標は、願望ではなく、コミットメントととらえた方が確実である。

遠藤雅樹
遠藤雅樹

(有)デジタルリサーチ代表取締役。(株)矢野経済研究所でガスタービン、燃料電池などの産業分野で市場調査に従事したあと、2001年に燃料電池市場をフィールドにした市場調査会社デジタルリサーチを設立して代表取締役に就任。主な仕事として「燃料電池新聞」(2004~2016年)、「週刊燃料電池 Fuel Cell Weekly」(2009年~)、「中国燃料電池週報」(2019年~)、「燃料電池年鑑(Ⅰ)日本市場編、(Ⅱ)海外市場編」(2014年)、「定置用燃料電池の現状と将来展望(Ⅰ)家庭用燃料電池、(Ⅱ)分散電源・コージェネ、(Ⅲ)Power to Gas」(2016年)、「Transportation燃料電池の現状と将来展望」(2018年)、「中国の燃料電池(Ⅰ)市場編、(Ⅱ)企業編」(2019年)、「世界の燃料電池(Ⅰ)市場編、(Ⅱ)企業編」(2020年近刊)などの調査レポート、有料ニュースレターを発刊している。2019年から中国の水素・燃料電池の現状調査を開始、上海、北京、仏山、如皋などに足を運んでいる。早稲田大学文学部仏文科卒。

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