そもそも、日本でいう「軽自動車」は現在の海外のメーカーでは、生産されていない。なぜなら、軽自動車規格は日本独特の車格であり、海外には軽自動車という特別枠はないため、車体寸法やエンジン排気量などに制約がない。ただし、税制や保険制度も登録車と別枠になる。
また、日本と欧米における交通事情と、欧米独自の衝突実験に対する考え方の違いが理由として考えられる。日本の軽自動車は商品性が高く、安全性能も登録車と同等の規格で評価されているが、欧米では軽自動車は衝突リスクが高いと見られがちだ。軽自動車はある意味、日本独自の文化と言ってもいいのかもしれない。
ダイハツの場合、軽の技術を活用してインドネシアを基点に東南アジアでの事業を拡大してきたが、「軽ベース」車という位置付けではない。日本からインドなどの海外へ軽自動車を輸出する例は数少ないが一部あるものの、全体として動きは消極的だ。
日本の新車販売のおよそ40%を軽自動車が占めるが、軽自動車のEV化は進んでいないのが現状だ。EVの性能の多くはバッテリーに依存しており、バッテリーやモーターなどのコストが高く、価格重視の軽自動車をEV化するのは容易ではないからである。
実際、軽自動車規格に収まるEVの価格は、最も安いグレードでも、現在用意される軽自動車のほぼ上限に達する。軽自動車の車両価格は上昇傾向にあるものの、それでも200万円以内で購入可能な場合がほとんどだ。これまでも、三菱「アイ・ミーブ」のような「軽自動車規格」のEVの例もあるが、100km前後という航続距離や200万円を超える価格などから、一般的な軽自動車の代替となることはなかった。
加えて、現在のバッテリー技術では、ガソリンの軽自動車と同等の航続距離や価格を実現するのは困難といわれている。日本独自の規格である軽自動車は、ボディサイズやエンジンの排気量が制限されている代わりに税制優遇などが得られるというメリットがある。このような背景から、軽自動車のEV化は遅れをとっている。
しかしそんな中、中国でボディサイズの全幅が軽自動車と同じ格安のEVが世間を騒がせている。
格安の中国EVの出現で日本がピンチ?・・・次ページ
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