日本の一次エネルギーのうち、LPガスが占める割合は、わずか3%しかありません。これは2030年になってもあまり変わらないというのが、経済産業省の見通しです。
一次エネルギー供給
もっとも、この図は第6次エネルギー基本計画策定前のものですが、LPガスに限れば、あまり変わらないと予想されます。
なぜそのように予想されるのか。第1の理由は、3%しかないので、脱炭素に取り組む優先度が低いということです。第2の理由は、LPガスにとってかわる便利なエネルギーがあまり見当たらないからです。実は電化は有力な手段ですが、その前に再エネを拡大しないと、CO2削減には意味がありません。
とはいえ、2050年にはカーボンニュートラルにしていくことが日本の目指すところです。ということは、今すぐではないにせよ、およそ30年後にはLPガス業界も脱炭素していなければいけないということになります。ただしそれは、今すぐに、ではないということです。
そして、どのように脱炭素を実現していくのか。この点については、元売りと小売りでは大きく異なっています。
LPガスの元売り会社というのは、10社2団体あります。LPガスを輸入したりして調達してくる会社です。かつては石油会社と商社がその中心でした。しかし、それぞれの事業において、LPガス事業が必ずしも重要な事業ではなく、元売りにとっては十分な採算が得られるものではなかったことから、LPガス事業を切り離した上で合併するということが進みました。例えばENEOSグローブはENEOS(旧JX)系や丸紅系、三井物産系の元売りが統合してできた会社です。ジクシス、アストモス、ジャパンガスエナジーなども同様です。その一方で、岩谷産業や伊藤忠商事のように、合併せずに来た会社もあります。
LPガスの元売り会社は、LPガスの販売で成り立っています。あたり前のようですが、LPガス事業が切り離されてできた事業体なので、多角化はなかなかできないというのが実情です。したがって、脱炭素に向けては、基本的にLPガスを脱炭素化して販売するしかないということです。
例えばアストモスは、カーボンクレジットを利用したカーボンニュートラルLPガスを輸入しています。
もっとも、カーボンクレジットの利用には限界があります。根本的な対策が必要です。
また、ジクシスは川崎汽船との間で、アンモニア輸送船の契約を結んでいます。
こうした中、脱炭素にもっとも積極的な元売り会社は、岩谷産業だといえるでしょう。というのも、岩谷産業は日本における水素供給のトップにあるからです。水素は燃やした時にはCO2を出しません。その点ではカーボンニュートラルだといえます。とはいえ、化石燃料を原料とすると、製造時にはCO2を排出することになります。したがって、再エネ由来のグリーン水素かCCUSを利用したブルー水素をいずれは輸入することになります。しかし、岩谷産業はこれに先立ち、水素ステーションの整備を進めています。
まさに、水素に社運を賭けているといっていいでしょう。
一方、伊藤忠商事は蓄電池に注力しています。家庭用蓄電池ですが、集中管理することでVPP(仮想発電所)としても利用できるというものです。
商社本体で事業を展開していることから、LPガスにこだわらない新しいエネルギー事業に取り組むことができるという強みがあります。
とはいえ、伊藤忠商事の取組みは例外的です。LPガス元売りとしては、燃料の販売が事業の柱です。したがって、将来はプロパネーション(合成プロパン)によるカーボンニュートラルなプロパンガスや、バイオマス由来の燃料などを開発し、供給していくことを考えています。
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