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2050年脱炭素 電気代の値上げ、いくらまで耐えられますか?

2050年脱炭素 電気代の値上げ、いくらまで耐えられますか?

2021年06月30日

再生可能エネルギーを大量に導入した場合、電気料金はどれだけ上昇するのか。経済産業省は6月30日、「再エネ100%でも安くなる」「ほぼ一緒」「2倍以上の値上げ」などの試算を公表した。2050年脱炭素社会の実現に向けて、一般消費者はどれだけの値上げを覚悟しなければならないのだろうか。

最小9円/kWh、最大で5倍近くの値上げ

経産省は今年5月、国のエネルギー基本計画を検討する総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会において、2050年に再エネ50%以上にした場合、電気料金が今の2倍以上高くなるという試算を公表していた。

この試算については賛否の議論が巻き起こっており、経産省は6月30日、改めて4つの機関が分析した複数の試算を発表した。

まず国立環境研究所は、2050年の発電量に占める再エネ比率が73〜76%に高まり、原子力10%、残りを水素やアンモニアを使った火力発電と、CO2を回収するCCS(二酸化炭素回収・貯留)付き火力でまかなったとしても、平均発電コストは今の11.5円/kWhとほぼ同じ水準となる11〜12円台/kWhになると試算した。

また、自然エネルギー財団の試算によると、2050年再エネ100%を達成しても、再エネ電源のコスト低下が反映されて、電力システム全体のコスト(LCOE:均等化発電原価)は9.18円/kWhまで安くなるという。

一方、デロイト トーマツ コンサルティングの試算では、再エネ比率が71%になると電力価格が約2倍上昇し、再エネ比率を95%まで高めると5倍近くまで跳ね上がる結果を示した。

日本エネルギー経済研究所は、再エネ比率50%だと、発電コストや電力貯蔵代、そして送配電費用を電力需要で割った電力平均費用が今の10円/kWhから、16円/kWhになると試算した。再エネ100 %なら22円/kWhまで上昇するという。

原子力はせいぜい1割程度

試算結果は前提条件によって異なるが、9円から最大で52円と振り幅が大きい。

結局、再エネコストがいくらまで下がるのか。また、蓄電池や系統の増強などにいくらコストがかかるのか。その想定次第で試算結果は変わってしまう。しかし、今回の試算で明らかとなったことは、再エネ比率が100%に近づくほど、電力システムへの投資が必要となりコストが上昇する。そして、原子力は新増設が進まなければ、どれだけ見積もっても1割程度しかまかなえないということがはっきりした。

原子力をめぐっては、一部委員から「原子力の現状維持というシナリオを入れるべきだ」「次期エネルギー基本計画では原子力の位置づけを明確に示すべきだ」といった意見が出たが、事務局側の反応はいまいちだ。

経産省では、今回の試算を踏まえて、7月にも新たなエネルギー基本計画の素案を示すものと見られる。

(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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