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電力会社の選び方とは?帝国データバンク「新電力の経営実態調査」から紐解く

電力会社の選び方とは?帝国データバンク「新電力の経営実態調査」から紐解く

2021年05月25日

一般消費者に電気を供給する新電力の破たんが止まらない。新電力トップにも立ったF-Powerが3月、会社更生法の適用を申請、5月には企業価値が100億円を超える「NEXTユニコーン」に選出されたこともあるパネイルが民事再生法を申請した。倒産する新電力が今後も出てくることが予想されるなか、一般消費者は電力会社をどう選べばいいのか。帝国データバンクの「新電力会社の経営実態調査」から紐解く。

安さだけじゃない、電力会社選びの基準が変化

今冬の電力価格高騰をきっかけに、新電力の経営破たんが止まらない。倒産する新電力は今後も出てくることが予想されるため、一般消費者による電力会社の選び方も、今後変わらざるを得ないだろう。

帝国データバンクが5月21日公表した「新電力会社の経営実態調査」が示唆することは、当然のことだが、新電力事業以外の事業ポートフォリオを持つ企業や、大手資本のグループ会社など資本力の厚い企業の方が、倒産リスクが低いということだ。

また、自社の発電所を持っている。あるいはJEPX(日本卸電力取引所)だけに依存しない多様な調達ルートを持つ企業であるかどうか。特に今は脱炭素の潮流が日本にも到来し始めた。太陽光発電などの再生可能エネルギーの電源を持つ企業の優位性が上がることが予想されている。

700社も超える新電力が存在するのは、世界でも日本だけだ。競争環境は激しさを増すばかりで、新電力の淘汰は今後ますます進むだろう。それだけに、新電力は料金プランの安さだけではなく、資本力や再エネ電源の保有率、そして事業ポートフォリオなどで選ぶ時代に入ったといえる。

約150社の新電力が売上高10億円未満

帝国データバンクは新電力706社を対象に、設立時期や主力事業、売り上げ規模などを集計・分析した「新電力会社の経営実態調査」を発表した。実態調査は2018年9月に続き5回目だ。

新電力の数は2018年の前回調査から209社増え、706社となった。

706社の設立時期は、2011年以降に設立した企業が389社と半数以上を占め、年代別では2015年設立が71社と最多だった。売り上げ規模別では「10億円以上100億円未満」が最多の181社となり、全体の25.6%を占めた。

帝国データバンクの調査を見てわかる通り、新電力は2016年4月にスタートした電力完全自由化のタイミングに合わせて設立した企業が多く、事業歴が浅く、そのため資本力が弱い。

たとえば、売り上げ規模が「100億円以上1,000億円未満」の新電力が103社いるものの、「1億円以上10億円未満」は114社、さらに「1億円未満」の新電力も35社おり、今冬に起こった電力卸売価格の高騰など、市場で何らかの異変が起こると、一気に資金繰りが悪化してしまう傾向にある。

また、帝国データバンクは「電力小売を主業にする企業が増加している」と指摘する。

706社のうち258社の主力事業が電気やガス、発電事業などを含む「その他」となり、最多となった。一方、「サービス業」からの参入組が88社、「卸売業」は82社、「小売業」は59社だった。

また、直近3期分の売上高推移を見ると、電力販売を主業とする133社のうち、2期連続で増収となった企業が65社と過半近くに迫り、電力販売の伸びを受けて、半数近くの企業が事業規模を拡大させているという。

資金繰りに窮する新電力は174社にのぼる

2期連続の増収を記録する新電力がいる一方、経営破たんする新電力が後を絶たない。とりわけ今でも大きな影響を与えるのが、今冬に起こった電力卸売価格の急騰だ。

特に電力不足に陥った新電力は停電を回避するため、大手電力会社に不足した電力を供給してもらう代わりに、高額のペナルティを支払わなければならなくなっている。

新電力を管轄する経済産業省は、ペナルティの支払いに関して分割払いを認める特例措置を取ったが、分割払いの特例を受けた新電力は174社にのぼった。174という数が資金繰りに窮する新電力の多さを物語っている。

新電力の経営実態調査は、一般消費者による電力会社選びの基準が変化したことを示している。

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(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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