経済産業省は2021年1月29日、卸電力市場の急激な高騰を受け、市場連動型電力メニューを提供する新電力に対し、消費者保護の観点から電気料金の支払い猶予、分割支払いなどの柔軟な対応を要請した。また、新電力の救済措置として、3月に請求される高額のインバランス精算金を最大5ヶ月にわたり、均等分割で支払うことを可能にするよう一般送配電事業者に求めた。
昨年末から続いた電力需給のひっ迫により、2021年1月(1月29日受渡し分まで)の卸電力市場の月間平均価格が66.91円/kWhとなり、月間平均価格として過去最高となる見通しだ。
急激な高騰によって、市場連動型電力料金メニューを契約する一般消費者などは、2021年1月の電気料金が10倍にも値上がりする恐れがあった。消費者保護の観点から、経済産業省は1月29日、市場連動型料金メニューを提供する新電力に対し、電気料金の支払い猶予や分割払いなどの柔軟な対応を要請した。
自社電源を持たない新電力は卸電力市場から電力を調達しているが、今回の急激な高騰に伴い、市場から電力調達ができない事態が起こっていた。調達できなければ、その不足分を一般送配電事業者に対して、精算金(インバランス料金)として支払わなければいけない。
しかし、今回の高騰によって、3月に一般送配電事業者から請求される供給力不足時の精算金も高額になる見込みだ。
そのため、経産省は電気料金の支払い猶予などの要請に応じた新電力への救済措置として、1月の精算金が最大5ヶ月にわたり均等分割による支払いを可能にするよう一般送配電事業者に要請した。精算金に対する救済措置の申請期間は2月15日から3月15日までとなっている。
このほか、新電力の中には、他の小売電気事業者などから、市場連動型の電気料金で卸供給サービスの提供を受けている事業者もいる。こうした卸供給サービスを提供する小売電気事業者に対しても、卸料金負担が激変しないよう、柔軟な対応を要請している。
また、日本卸電力取引所(JEPX)への預託金支払いなどが困難となる新電力も出てきている。そのため、経産省では取引所に対しても、柔軟な対応を要請した。
経産省では、今回の卸電力市場の急激な高騰について包括的な検証を行い、安定供給や市場制度のあり方などの必要な制度的対応について、引き続き検討していくとしている。
しかし、一部メディアで報道された「一般消費者保護などの要請に応じることを条件に、新電力の資金繰りを支援する」という内容は、今回の救済措置に含まれなかった。
1月27日に開催された総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第36回)において、松山泰浩 資源エネルギー庁電力・ガス事業部長は、新電力への対応に関し「対策を打つことは難しい」と語っていたが、新電力の資金繰りまで支援するのか。経産省による次なる支援策に注目が集まっている。
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JEPX市場価格高騰で浮き彫りになった、新電力の2021年問題
参照
経済産業省 卸電力市場価格の急激な高騰に対する対応について 2021.1.29
(Text:藤村朋弘)
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