電力小売り全面自由化と地域における再エネの拡大によって、近年は地域エネルギー事業への注目が高まっている。しかし、事業を推進していくにあたっては、課題は少なくない。そうした中にあって、昔から地域エネルギー事業を展開してきたのが、地方都市ガス会社である。
今月より、地方都市ガス事業者が進める地域エネルギー事業を支援してきた角田憲司氏が、これからの地域密着型の事業について、経験をもとに語っていく。
はじめに:ガス屋の考える地域エネルギー事業
筆者は2020年3月までの42年間、都市ガス業界に身を置いた根っからのガス屋である。直近では都市ガスの業界団体(日本ガス協会)に所属し、地方のガス事業者が進める地域エネルギー事業を支援してきた。その前の5年は千葉ガスという都市ガス会社の社長としてガス事業に携わるとともに、地域新電力の立ち上げをはじめとする地域エネルギー事業にも関わってきた。この4月からフリーとなったが、これまでの経験を踏まえて、地域エネルギー事業に関するあれこれを述べてまいりたい。
このサイトにアクセスされる再エネ事業関係者にとって、筆者はやや異質な存在かもしれない。しかし、都市ガス事業者という地域密着型のエネルギー事業者が考える地域エネルギー事業とはどんなものかをご理解いただくことは、必ずしも順調とはいえない地域エネルギー事業の活路を切り拓く上での参考になると確信している。
地域エネルギー事業の定義
地域エネルギー事業を語るにあたって、まず留意すべきことは地域エネルギー事業に関する明確な定義はなく(少なくとも筆者は知らない)、ステークホルダーによって様々な受け止めがされていることである。
そこで我々ガス事業者は、目指すべき事業の正確性を期すために「地域エネルギー事業」を以下のように定義づけている。
<定義1> 地域エネルギー事業とは
- 地域の持続可能性(地方創生)に資する「経済効果や雇用効果などを創出」するために、
- 太陽光などの再生可能エネルギーを主とした「地域に賦存するエネルギー」を、
- 「需給一体型の分散型エネルギーシステム」にて構築した、
- 「地産地消型のB to C」事業
いささか仰々しいが、地域新電力や(エネルギーを特定の地域で面的に利用する)スマートコミュニティ事業をイメージしてもらえればご理解いただけるだろう。
ポイントは「B to C」、すなわち(公的施設から民間企業、一般家庭などの)地域のユーザーにエネルギー・スイッチを促す小売事業とすることにある。ゆえに、単なる再エネ電源開発は地域エネルギー事業と呼ばないことにしている。
実際に行われている地域エネルギー事業は上記の6要件を全て満たしているものばかりではないが、エッセンスを抽出すれば6要件になる。また地域エネルギー事業は、たとえ自治体が主体となろうが「営利事業」であり社会貢献事業ではないと考えている。事業に参画する者に何らかの便益(必ずしも金銭的な利益とは限らない)がなければ、事業として長続きしないからである。
地域エネルギー事業が今一歩奮わない理由の一つには、この部分の暗黙知が形成されていないことがあるのではないか。
何のための地域エネルギー事業か
地域エネルギー事業のあり方をさらに明確にするためには、地域エネルギー事業の大義、すなわち、何のために行うのか、をはっきりさせることも必要である
この中で我々が重視するのは、地域経済循環効果に貢献できる地域エネルギー事業となることである。ここをはっきりさせるために、「地益(地域益)」という概念を用いている。
「地益(地域益)」とは、公益概念を「地球益・国益」と敢えて区別するために設けた造語である。
というのも、今後ますます、「非化石電源比率2030年44%目標」や「2050年CO2排出ネットゼロ」等、「地球益・国益」を盾にとった「再エネ漁り」が地方圏を跋扈し、地域の持続可能性に資する地域エネルギー事業を毀損する可能性が高いと推測しているからであり、それへのアンチテーゼとして重要と考える。
また「地益(地域益)」を構成する「レジリエンス」は、地域経済をダメにしないという点で地域経済循環効果を支えていると考えられる。
以上が、我々ガス事業者が志向する地域エネルギー事業の概念である。立ち位置がはっきりしたところで、次回から具体論に移りたい。