太陽光発電などのエネルギー関連事業を展開してきた京セラは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同している。持続可能な社会への貢献に向けて「京セラエネルギービジョン3.0」を掲げ、「モノ売り」から「サービスの提供」への事業展開を転換させるという。2020年12月9日には、実証試験のパートナーとしてデジタルグリッド、REXEVの2社をまじえた記者説明会を開催した。
2020年12月9日、京セラは持続可能な社会に向けて、新たな事業展開を目指すこと、およびデジタルグリッド、REXEVの2社それぞれとの実証試験について記者発表を行った。
最初に説明に立ったスマートエナジー事業本部マーケティング事業部長兼経営推進本部エネルギー事業開発部長の池田一郎氏は、京セラが考える持続可能な社会を紹介した。「地球生態系と共生」と「成長・発展する経済社会」の2つの視点から考えているという。
エネルギー消費は増加すると想定しており、これを再生可能エネルギーでいかにまかなっていくかが課題になる。こうした考えに沿って「京セラエネルギービジョン3.0」を策定し、「モノ売り」から「サービスの提供」へと京セラの事業を転換させていくと説明した。
では、京セラは具体的にどのように変わっていくのか。
これまでの太陽光発電や蓄電池による自家消費型のエネルギー供給から、地産地消の地域内エネルギー最適化へと進化していくということだ。例えば、京セラが地域基盤のエネルギーサービスを提供することで、地域の再生可能エネルギー(余剰電力や非FIT、卒FITの電力など)の供給、電力のP2P取引、コミュニティEVの導入などを推進するという。
経営推進本部エネルギー事業開発部課責任者の戸田和秀氏は、電力のP2P取引の実証試験として、京セラの横浜中山事業所を再エネ100%にする取り組みを紹介した。
この中山事業所に向けて、京セラ社員宅の余剰太陽光発電、非FIT太陽光発電、トラッキング付き非化石証書、そして事業所内に設置されたオンサイト発電所の4つの形態で再エネを供給する。
京セラ記者発表時の資料より
このうち、オンサイト発電所以外の電気については、民間の電力取引所であるデジタルグリッドのP2Pプラットフォームを介した形をとる。この実証を通じて、将来における、発電所と需要家のそれぞれのニーズに応じた電力取引の可能性を検討していく。
デジタルグリッド代表取締役社長の豊田祐介氏によると、プラットフォームの機能は「顧客管理」「電源調達」「需給管理」「料金計算・請求業務」を担うが、とりわけ契約履行が多いのが、IoTデバイスと、AIの予測に基づいた需給管理であることが特長だ。
今回の実証で構築するモデルは横展開が可能で、今後は非FITの発電所による電力供給に意欲を示した。なお、デジタルグリッドのプラットフォームはすでに22社が活用しているという。
デジタルグリッド社の提供機能
京セラ記者発表時の資料より
経営推進本部エネルギー事業開発部責任者の草野吉雅氏は、小田原市で行う、マイクログリッドの実証について説明を行った。
京セラでは、REXEV、A.L.I. Technologiesとともに、小田原市で、蓄電池、太陽光発電、EVと配電線の運用によるマイクログリッドの実証事業を行うという。
内容は、次の3つ。1つは、太陽光発電の余剰電力を地元の事業者に供給する、地産地消システムの運用。2つ目は、太陽光発電の電気を蓄電池などを活用し、さまざまな拠点に自己託送していくシステムで、電力小売事業者として湘南電力も参加する。3つ目が、停電時における太陽光発電、蓄電池、EVの運用だ。
REXEV代表取締役社長の渡部健氏は、この実証における同社の役割を紹介した。REXEVはすでに、EV34台によるカーシェアリング事業を小田原市内で展開しているが、これはEVの蓄電池を利用したエネルギーマネジメントシステムともなっている。EVを利用する時点で充電されているように、最適な充電を運用していくことに、AIが使われている。また、配電網の電力需給を安定化させるはたらきも持つ。災害時は、EVに充電された電気が地域で有効に活用されるということだ。そのために、EVの位置情報や充電情報もクラウドで管理し、運用していくことができる。
なお、前日、CDPの気候変動調査で、京セラが最高評価に初選定されたことにも言及された。
(ヘッダー写真は京セラが共同出資する「鹿屋大崎ソーラーヒルズ太陽光発電所」)
参照
京セラ プレスリリース「RE100を目指す、再生可能エネルギーを利用した相対(P2P)電力取引について」2020.12.9
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(Text:本橋恵一)
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