2022年3月の電気料金、過去5年で最高値に 家計や企業の負担重く 新電力には再び淘汰の波が | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

2022年3月の電気料金、過去5年で最高値に 家計や企業の負担重く 新電力には再び淘汰の波が

2022年02月17日

大手電力会社10社のうち6社が赤字転落

燃料高は大手電力会社の業績を悪化させている。2022年3月期の連結純損益は10社のうち、6社が赤字に転落する見通しだ。

東京電力と中国電力は従来予想より赤字幅が拡大する。前期には293億円の純利益を出していた東北電力は450億円の赤字に、250億円の純利益をあげていた中部電力も赤字幅が450億円になると下方修正した。北陸電力、四国電力も黒字予想から一転して、最終赤字になる見込みだ。

赤字転落の要因のひとつに、燃料の高騰を電気料金に転嫁するタイミングが翌年度以降に期ずれし、一時的に電力会社の負担が増えたことがある。こうした損失の大部分は燃料価格の上昇が収まれば回収できるが、前述の通り、北陸電力、関西電力、中部電力は規制料金と呼ばれる一部の電気料金に転嫁できる上限を超えてしまっている。

関西電力の森本孝社長は1月28日のオンライン決算会見で、「原発利用率の上昇など会社全体の努力で収支への影響を抑えたい」と述べたが、LNGや原油価格の高騰は長期化する恐れがあり、3社が経産省に値上げ申請するかどうかが、今後の焦点になっている。

厳しさ増す新電力の経営環境、JEPXからの脱退相次ぐ

新電力の経営環境も厳しさを増している。

日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格は11月に平均18.5円/kWhをつけたが、12月平均で17.3円/kWhとなり多少下がるも、2022年1月にかけて22.4円/kWhまで上昇。最高価格では80円をつける時間帯も出るなど、燃料価格の高騰に引っ張られ、電力市場価格にも値上がり圧力が高まっている

日本のスポット市場の価格推移(日平均、システムプライス)

(/kWh)9月10月11月12月1月
平均7.9円12.1円18.5円17.3円22.4円
(最高)13.0円50.0円70.0円50.0円80.0円

※1月23日までの平均・最高
出典:経済産業省

2016年4月にはじまった電力自由化のもと、700社を超える新電力が参入したが、その多くは発電設備を持たず、JEPXからの電力調達の依存度が高い。だが、卸電力価格が高騰しても、その上昇分を電気料金に転嫁できず、逆ザヤを吸収できない新電力が破綻や撤退に追い込まれている

自治体向けに電力を供給するホープは、2月14日に公表した2022年6月期の第2四半期決算において、債務超過額が80億円を超え、1月末を返済予定としていた銀行借入の返済の一部に遅滞が生じており、さらに総額約58億円について、3月中旬以降、期日どおりに全額弁済できないおそれがあると表明した。

同社の2022年1月のエネルギー事業の実績を見ると、電力の平均調達単価26.81円/kWhに対し、平均販売単価は14.94円/kWhと完全な逆ザヤとなっており、売れば売るほど赤字が膨らんでしまう状態だ。撤退も含めて事業継続を慎重に検討する方針だが、先行きは厳しそうだ。

ホープ(子会社ホープエナジー)のエネルギー事業の月次概況

FY2022平均電力市場調達単価
予想(円/kWh)
平均電力市場調達単価
実績(円/kWh)
平均販売単価
実績(円/kWh)
概算電力供給量
実績(億kWh)
2021年7月9.829.3815.70約3.6
2021年8月10.6910.1715.75約3.5
2021年9月9.509.2015.92約3.2
2021年10月8.0914.6015.28約2.9
2021年11月8.3021.6415.34約2.7
2021年12月9.8420.3415.13約3.0
2022年1月11.0726.8114.94約3.1
2022年2月8.39
2022年3月7.47
2022年4月7.28
2022年5月7.65
2022年6月7.75

出典:ホープ

JEPXは、会員のみが市場での取引が可能な卸市場であるが、そのJEPXからの会員脱退も相次ぐ。

中部電力と大阪ガスの合弁会社であるCDエナジーダイレクトは、3月末でのJEPX脱退を決めた。1月だけで脱退を表明した企業は10社と急増しており、市場ではあと何社脱退するのかと不安が広がっている。

2022年1月以降に JEPX脱退を表明した企業

WSエナジー
沖縄電力送配電本部(特別取引会員脱退)
武州瓦斯
たんたんエナジー
CDエナジーダイレクト
沖縄電力
大東ガス
ジェイコム東京
ジェイコムウエスト
スマートエナジー熊本
那珂瓦斯発電所

出典:JEPXの公表データをもとに作成

また経営再建中だったF-Powerが2月14日、FIT賦課金を納付しない企業として経産省から公表されるなど、経営難に陥る新電力があとを絶たない。破綻する新電力が相次げば、消費者には契約切り替えなどの手間や、予期せぬ電気料金の値上げなど、実害が生じかねない。

消費者保護に向けた政府の動きは?・・・次ページ

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

エネルギーの最新記事