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このグリーン銘柄がアツい!(1)
エネルギー関連企業といっても、従来型のエネルギーから再生可能エネルギー、あるいはエネルギーテック企業まで、さまざまな企業がある。そうした企業のなかから、個人投資家にとって魅力がありそうな投資先とは、どんな企業なのか。afterFITの安達愼氏が、独自の視点から紹介するシリーズ。第1回は、ウクライナで天然ガスの権益を有する英国企業のCadogan Petroleum PLCを取り上げる。
今回注目のグリーン銘柄:Cadogan Petroleum PLC CAD:LSE
Cadogan Petroleum PLC 5年チャート
ロンドン証券取引所に上場するCadogan Petroleum(キャドガン・ペトロリウム 以下、CAD)は、ウクライナで天然ガスなどの探鉱・生産ライセンスの権益を複数保有する2004年創業の独立系英国企業です。低価格のエネルギー資産を取得し、展開することで、株主価値向上を狙う戦略であり、強固な財務体質を有しています。
現在はPBR0.27(時価総額13億円程度)と、株価は大幅に割安です。株価3.5ポンド(日本円で500円ほど。英国は単元の概念がなく、1株から投資ができます)。
開示されている最新の財務諸表は日本円換算で、資産53.3億円、負債1.6億円、資本51.7億円の財政状態であるので、売上6.09億円、営業損失▲7.03億円というマイナスの営業成績をもろともしない財務体質。
注力事業の天然ガスは、燃焼時に硫黄酸化物(SOx)はほとんど発生せず、また石油と比較して、環境汚染を引き起こす窒素酸化物(NOx)の発生は6割以下、CO2排出は約7割以下のため、相対的に環境負荷の少ないクリーンエネルギーです。比較的地球環境に優しく、サステナブルな未来創出に貢献するその事業性は素晴らしいのですが、一般投資家には、いかんせん、まだまだ地味な産業分野であり、利益が出ていないためか、株価が低く評価されがちです。流動性の低さからみると、正直、見向きもされていない状態です。
が、個人投資家として、実は、そんな時こそ、チャンスであったりもします。事実、今年に入ってからジワジワ株価が上がってきております。
この手の無名の赤字の企業は事業計画よりも現在の株主構造を見抜くことも、株価方向性の判断の一助になり得ます。
CADの株式の約25%を保有しているのは、機関投資家です。もし仮に、彼らが公開市場で取引を行った場合、ボラティリティが高まる可能性があり、特に浮動株が比較的少ない場合はなおさらその傾向が強まります。ですので、機関投資家は、市場への影響を抑えるために、ブロック取引を利用することが多く、主に立会外取引で行われますので、投資安全性という面で、個人投資家は、そのような機関投資家の存在を考慮してもいいでしょう。機関投資家は、ポートフィリオを入れ替えたり、株式持ち合いを解消したりする目的で、当該企業の業績に関係なく、譲渡することがあります。
さらに、株主構成の変遷を見ていきますと、昨年は、CEOのFady Khallouf氏が、株主持ち分3.5%相当の株式を買い占めていました。
このように、インサイダー(内部関係者)の動きは、会社がどのような戦略で経営されているかに関係しており、市場での一般の株式取引の規模による直接的な影響はあまり関係していません。CADのインサイダーの保有率は約40%で、株主のリターンに影響を与えるには十分な規模となっています。一般的に、このレベルのインサイダー保有は、業績不振(主に低PER)企業にはネガティブな影響を与え、見通しの明るい業績(主に高PER)企業にはポジティブな影響を与えるものです。CADは赤字企業ですのでPERは計算不可能ですが、その強固な財務体質とクリーンなエネルギー事業に取り組んでいる点で、長期的にはポジティブに捉えてみるのも良いですよね(営業損失が出ていますので、PERは算出できないのですが、少しでも黒字化すれば、当然ながら高いPERが生まれます)。
また、アクティブな株式保有者であるヘッジファンドは、CADの株式をほとんど保有していないため、その点では、急激な値動き、つまり、短期的なボラティリティは弱いかもしれません。短期勝負の投資家にとっては面白味のあまりない銘柄ともいえるでしょう。
CADへの投資を検討する個人投資家は、もう一つの重要な投資家グループにも注目するべきです。実は、機関投資家以外に、プライベート企業も、約20%以上保有しております。この規模の株式を保有しているということは、強力な財務的裏付けがあることを示しており、将来、なんらかの事業戦略に影響を与える可能性もあります。そう考えると、将来性に、ワクワクできますよね。
無名の赤字企業ですが、今の数十万円、数百万円の投資が、将来、数億円、数十億円に化けたりする可能性もあるかもしれません。
以上のような簡単な考察でも、それらが長期的に株主還元にどのような影響を与えるのか、もろもろ予想をしていく一助になります。
最後に、CADに限らず、地球環境に優しいクリーンエネルギーに取り組む企業は応援したいですよね。
欧州委員会(European Commission)では、2018年に『アクションプラン:持続可能な成長に向けた金融』と題した行動計画を公表しております。サステナブル金融に関する議論も進んできています。ちなみに、このアクションプランは、①持続可能な成長を実現するため、サステナブル投資を実行、②気候危機、資源枯渇、環境劣化、社会課題から来る財務リスク管理、③金融経済における透明性かつ長期展望の活動を大枠の行動指針にしています。
たとえば、ルクセンブルクは、サステナブル・ファイナンスにおける競争力強化を軸に、国際金融センターとしての地位向上を目指しています。サステナブル・ファイナンスにおけるルクセンブルクの特徴は官民連携の活動に基づき、多額の資金を要する「低炭素社会への円滑な移行」に当たって、どのように民間の資金を効率的にサステナブル・ファイナンスに向かわせるかという有効策を考えている点です。ルクセンブルク証券取引所(LuSE)は、世界で初めてとなるグリーン金融商品専用の上場取引所、 The Luxembourg Green Exchange (LGX)を設立しました。その方針に、共鳴できますよね。
参照
欧州委員会『アクションプラン:持続可能な成長に向けた金融』
CADウェブサイト
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