3月16日に開催された自由民主党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)において、ある自治体の税制度が議題に挙がった。その税制度というのは、岡山県美作市において可決された太陽光発電への法定外目的税だ。太陽光発電事業者を対象にした「太陽光パネル税」とでもいうべきこの税制は、今後の再エネ拡大に水を差しかねないと、一般社団法人太陽光発電協会を中心に、複数の団体・協議会からの反対意見を集めている。
弁護士も招いて進行された今回の再エネ議連において、この太陽光パネル税についてどのような審議が成されたのか、その法的背景や影響にも目を配りながら解説していく。
太陽光パネル税は、岡山県美作市の市議会にて2021年12月21日に可決されたもので、正式には「事業用発電パネル税」という。施行された場合には、太陽光発電所に課税する全国初の条例となる。
課税対象となるのは、出力10kW以上の発電事業者で、野立てのものに限定。その他、建築物の屋根上に設置されたものや、連系出力50kW未満で平坦な土地に設置されたものも課税対象から外される。
予定では、太陽光パネル1m2につき50円を徴収するという。太陽の国と呼ばれる岡山県だが、中でも美作市には対象となる発電所が約280ヶ所ある計算。上記の税制が施行された場合には、その税収は年間約1億1,000万円に上るとされており、課税期間は5年を想定している。
税収は、発電所周りの防災対策を始め、生活環境対策、自然環境対策のための施策に要する費用に充てられる予定。美作市によれば、大規模太陽光発電所の設置に伴う立地開発によって土地の形態変化が生じ、河川洪水などの災害発生や鳥獣被害が危惧されるという。また、売電事業が終了した後の土地の荒廃についても懸念が付きまとう。
太陽光発電が盛んな岡山県ならではの悩みに対策するため、今回の税収に踏み出したというのが、美作市が公表している理由だ。
事業用発電パネル税の概要
税名・税目 | 事業用発電パネル税(法定外目的税) |
課税客体 | 市の区域内に設置された太陽光発電設備を使用し、発電を行う事業 |
税収の使途 | 防災対策、自然環境対策、生活環境対策 |
課税標準 | 太陽光発電設備のパネルの総面積 |
納税義務者 | 市の区域内に設置された太陽光発電設備を使用し、発電事業を行う者 |
税率 | 1m2あたり50円 |
非課税 事項等 |
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徴収方法 | 普通徴収 |
課税期間等 | 5年間 本税施行後5年ごとに、必要がある場合は、条例に検討を加え所要の措置を講ずる。 |
美作市ホームページより。編集部にて再編集。
では、この太陽光パネル税が問題視されているのは、どういった見地からなのか。
そもそも、この太陽光パネル税は、2020年からの導入を目されていたものの、2019年6月の定例議会にて否決された経緯がある。その際には納税義務者への説明が不十分であるなど、いくつかの課題が噴出。再エネ議連から総務大臣の不同意要件を満たすという意見書が政府に出された他、太陽光発電業界団体から反対意見表明がなされて、一旦は廃案になった。
このような経緯があったにも関わらず可決された今回の太陽光パネル税だが、その主な問題点としては下記のようなものが挙げられる。
まず挙げられる問題点としては、この税制が、太陽光発電事業者がすでに支払っている償却資産税(固定資産税)と二重課税の関係にあることだ。また、所得に対しても法人税、法人住民税、法人事業税がすでに課されており、実質的に課税標準が同じとなる太陽光パネル税が加わることで、太陽光発電事事業者への負担が著しいこととなる。
太陽光発電事業者の収入は固定価格買取制度による売電収入に限定されており、価格転嫁ができない構造となっている。ベーカー&マッケンジー法律事務所のパートナー弁護士江口直明氏は、再エネ議連に寄せた文章の中で、再生可能エネルギーの買い取り価格を決定する際に想定していなかった徴税を後付けで行うことを適当でないとしている。さらに、国が国税上の恩典を与えて推進する太陽光発電事業に対して、法定外目的税を地方自治体が加えることは、ちぐはぐ政策であるとした。
国民が再エネ賦課金を支払って支えている再エネ制度から、二重に税金を取って地方自治体の増収に回すというのだから、その意見ももっともだろう。
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