食品業界が挑む脱炭素 求められるフードサプライチェーンの温室効果ガス削減対策とは? | EnergyShift

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食品業界が挑む脱炭素 求められるフードサプライチェーンの温室効果ガス削減対策とは?

食品業界が挑む脱炭素 求められるフードサプライチェーンの温室効果ガス削減対策とは?

2022年02月25日

近年、自社だけではなくサプライチェーン全体で脱炭素を目指そうという企業の動きが国内外で拡大している。世界全体の温室効果ガス(GHG)の排出量の3分の1を占めるとされる食の分野でも、企業が気候変動リスクに取り組むためにサプライチェーンの排出量を開示し、削減する必要性が高まってきている。

農林水産省は2050年カーボンニュートラル実現に向け、これまで注力してきた「生産」「加工・流通」分野にとどまらず、「消費」分野まで含めたサプライチェーン上の各段階の取り組みに力を注ぐ。本稿では、フードサプライチェーンについて動向を追ってみた。

日本の農林水産の現状

環境省によると、日本全体の温室効果ガスの排出量はCO2換算で12.12億トン(2019年度)、農林水産分野の排出量は4,747万トンで、全体の3.9%を占めるという。

農林水産省は「2050年カーボンニュートラル」に伴い、フードサプライチェーンの脱炭素化を推進するため「フードサプライチェーンにおける脱炭素化の実践とその可視化の在り方検討会」を2020年に発足した。

サプライチェーンは本来、商品が消費者に届くまでのプロセスを指すが、フードサプライチェーンとは、農林水産物を生産し、食品加工、流通、販売により消費者に食品が届き、 最終的に廃棄されるまでの一連の流れを指す。食料・農林水産業において脱炭素化を実現するためには、農作物や食品の生産者、流通・小売業者だけでなく、それらを使用・消費し廃棄する消費者も含めたフードサプライチェーン全体で関係者が連携し、気候関連リスクへの課題解決に互いに取り組むことが重要だ。また、廃棄物の再利用・リサイクルによるサプライチェーンの循環や、再生可能エネルギーの利用により持続可能なサプライチェーンの構築が必要とされている(図1)。

図1:フードサプライチェーン


出所:農林水産省をもとに編集部作成

企業では、自社のサプライチェーン全体のCO2排出量の算定、再エネや環境価値の調達状況を企業別・製品ライン別に可視化する動きが加速している。

日本企業の事例とは

こうした動きの中で、日本国内の各食品メーカーがどのような取り組みをしているのか見てみよう。

国内最⼤のボトリング会社であるコカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは、GHG排出量削減に向けてコカ・コーラ社製品の製造、輸送、販売、回収、リサイクル等システム全体のサプライチェーン排出量の全体像を俯瞰した上で、効率的な戦略を策定し推進している

同社は、全世界のコカ・コーラ社で、CO2排出について⽬標を共有しており、「原材料」「容器包装」「製造」「物流」「販売」の5つのプロセスでの排出量を計測し、⽶国のザ コカ・コーラ カンパニーに報告している(図2)。

図2:CO2排出データ

※算出期間:2019年1‐12月


出所:環境省の資料をもとに編集部作成

全世界においても、2030年までに2015年⽐で25%削減することを⽬標に掲げる。

味の素グループは、サプライチェーンの最源流である調達段階から、開発・生産活動、物流、生活者とのコミュニケーションに至るすべての活動で、CO2排出量削減の取り組みを推進する。GHG総排出量を見える化することにより、事業の全体像を把握し、⻑期戦略の策定に役⽴てる。

同社は、⼀つの商品カテゴリーのGHG排出量を製品のライフサイクルアセスメント(LCA)で示している(図3)。図のカテゴリーの場合、全体量の半分以上が家庭内での調理時に発⽣することがわかる。⾃社の⽣産での効率化を進めるとともに、同社の時短商品の代表である「Cook Do®」などの家庭内の調理時間削減において環境負荷を下げるような製品開発を推進する。

図3:サプライチェーン排出量算定結果


出所:環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム 取組事例 2020年度」をもとに編集部作成

一方、商品カテゴリーにより⽐率が⼤きく違うため、事業の総和は解析に活⽤しにくいのが難点だ。サプライヤーの製造⼯程からの排出量が、PCRを⽤いた推計値になり精度が高くない。また、原料産地となる国・地域の農産・⽔産物のアイテム数が⼗分でない。

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東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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