現在、日本のGX戦略は経済産業省の産業構造審議会の中の、グリーントランスフォーメーション推進小委員会で議論が進められている。2021年12月16日に第1回会合が開催され、2022年3月1日に行われた第4回会合では論点がしぼられてきた。どのような議論が行われ、日本のGX戦略はどこに向かっていくのか、産業構造はどのように変化していくのか、まとめて紹介する。
日本は2030年温室効果ガス46%、2050年カーボンニュートラルを目指している。とはいえ、温室効果ガス排出削減は地球全体の問題であり、各国政府が気候変動政策を推進し、世界各地の産業がグリーントランスフォーメーション(GX)に次のビジネスチャンスを求めているのが現状だ。
GX大競争時代にあって、日本の産業政策はどのようにあるべきなのか、政府・経済産業省として改めて考えておくべきことだ。
こうしたことを背景に、経済産業省では産業構造審議会産業技術環境分科会の中に、グリーン・トランスフォーメーション推進小委員会(以下GX小委員会)を設置し、議論を進めている。
第1回会合で、「クリーンエネルギー戦略の策定に向けた検討」資料が提示され、日本の現状が示された。その上で、第2回会合、および第3回会合では、さまざまな分野の事業者から、GXに向けた取り組みが紹介された。
3回の審議を受ける形で、第4回会合では、ようやく議論すべき3つの論点が示された上、エネルギーを起点としたGX戦略検討にあたっての視点、および各国の戦略が資料として提示されたことになる。
今後の議論の方向性を考える上で、最初に3つの論点を示しておく。
論点1 GX産業の各分野の評価
論点2 GX時代における産業構造のあり方
論点3 エネルギートランジションに伴うコスト負担のあり方
論点1は、各産業を評価し、優先順位をつけていくことなどだ。限られた政策資源を使う上では、必要なことだろう。
論点2は、産業構造の転換後の姿につながっていく。具体的には、「化石燃料を前提とした製造業の事業モデルは今後通用しなくなる可能性が高い中、製造業を中心として日本の産業構造はどのような絵姿を目指して、どのように転換していくべきか」、あるいは「中小企業を含むサプライチェーン全体でのエネルギー転換の取組みをどう促していくべきか」といったことだ。また、燃料転換が困難な業種の炭素排出の負担なども議論の対象となる。
論点3では、主にエネルギー価格の上昇に対するコスト負担や資金調達などが議論の対象となる。
このように見ていくと、中心となるのは論点2だと考えられる。産業構造の絵姿を示すことで、産業の移行を進めていくということになるだろう。逆に、絵姿がなければ、多くの産業は移行の方向がわからないということにもなる。
第1回会合で、事務局が提出した、100ページを超える資料は、国外のカーボンニュートラルの動向がよくまとまっており、今後、議論を重ねていく上での出発点となるものだ。
どのようなことが書かれているのか。例えば金融をめぐっては、ESG投資の急増はTCFDにからむ気候関連財務情報開示など。産業面ではappleなどでサプライチェーンの脱炭素化の動きが始まっていることが示されている。また、グリーン×デジタルのスタートアップも多い。一方、欧米や中国の政策も簡潔にまとめられている。これらは、日本の政策にとってベンチマークになっていくものだ。また、GXを推進していく方策として、EUタクソノミー(気候変動対策として適格かどうかの分類)や炭素国境調整措置(CBAM)についても言及されている。いずれも、産業競争力に大きく関わってくるものだ。
日本のエネルギー政策の現状についてもまとめられている。クリーンエネルギー戦略としては、2030年に向けたエネルギー基本計画、2050年に向けたグリーン成長戦略が位置付けられている(図1)。
図1:クリーンエネルギー戦略の位置づけ
出典:経済産業省HPをもとに編集部再編集
また、これにあわせてエネルギー構造の変化も示されている(図2)。とはいえ、具体的な産業構造転換の道筋やそのためのビジネス環境整備はこれからだ。さらに、どうしても化石燃料を一部使うことを想定しているため、ネガティブエミッション(カーボンマイナス)となる新技術の開発も必要となってくる。
図2:2050年CNに向けたエネルギー構造の変化
出典:経済産業省HPをもとに編集部再編集
こうした中、事務局が成長産業として提示したものが3つある。アンモニア、水素、洋上風力だ。これらを推進し、カーボンニュートラルなエネルギーを確保していくことがねらいだ。
一方、日本の産業構造は、製造業がGDPの23%を占める高い水準にある一方、輸出額の割合は17%と低い。問題は、製造業の脱炭素化を進めないと、製造業そのものの競争力がなくなっていくということだ。しかも、消費電力が多いだけではなく、自家用の石炭火力発電を運用している。また、熱需要についても化石燃料を使用していることが多い。そのため短期的には天然ガスへの燃料転換、長期的には電化を進めた上で再エネ電力の利用を拡大していくことになる。
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