47都道府県の2020年度予算から読み解く脱炭素動向 近畿エリア 広域連携を模索しはじめた自治体 | EnergyShift

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47都道府県の2020年度予算から読み解く脱炭素動向 近畿エリア 広域連携を模索しはじめた自治体

47都道府県の2020年度予算から読み解く脱炭素動向 近畿エリア 広域連携を模索しはじめた自治体

2020年05月28日

都道府県の2020年度再エネ関連補助金を紹介していくシリーズ、今回は近畿地方を取り上げる。2020年5月時点で91の自治体がCO2排出ゼロを宣言しているが、近畿エリアでは、大阪府、京都府、三重県、滋賀県がCO2排出ゼロ宣言を表明済みだ。各自治体が再生可能エネルギーの普及拡大策などさまざまな独自施策を実施しているなか、近畿エリア7自治体がどのような再エネ・脱炭素化政策に取り組むのか。自治体の独自施策を解説する。

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大阪府:水素エネルギー振興で経済成長を牽引

大阪府は2014年、原発への依存度の低下などを目指す、「おおさかエネルギー地産地消推進プラン」を策定し、再エネの普及拡大(地産)を中心に地域特性に応じたエネルギーの効率的な使用(地消)など、エネルギーの地産地消を目指してきた。

おおさか地産地消プランは、「再エネの普及拡大」「エネルギー消費の抑制」「電力需要の平準化と電力供給の安定化」の3つの施策から構成されている。具体的には、太陽光発電の導入を図り、2020年度までに90万kW(住宅用:62万kW、非住宅用:28万kW)の拡大を目指している。さらにコージェネレーションなど分散型電源や廃棄物発電を35万kW導入することで、合計125万kWの供給力を確保する。

そのうえで、ガス冷暖房やBEMSなどの導入により、25万kWの電力需要を削減する。これら供給力の増加と需要の削減によって、2020年度までに150万kWの創出を目指すというものだ。2018年度末での達成状況は110.1万kWとなっている

2016年には水素社会の早期実装を目指す、「H2Osakaビジョン」を策定した。温室効果ガスの削減、そして水素関連分野に取り組む府内企業や、多様な中小企業が集積する地域特性を活かし、域内の経済成長を取り込むべく、燃料電池自動車(FCV)の普及や水素ステーションの整備、FCフォークリフトやFCバスの普及拡大、FC船の実証事業など、さまざまな水素プロジェクトを実践してきた。

2019年10月には、「2050年に府内のCO2排出実質ゼロを目指す」とも表明した。CO2ゼロ宣言を受け、2020年度はおおさか地産地消プラン、そしてH2Osakaビジョンに基づく予算編成を実施。再エネの普及拡大策や水素プロジェクトを継続する。予算額は2億円超となった。主要予算の詳細は次の通り。

大阪府

新たなエネルギー社会の構築推進事業費
2020年度予算額
2億1,128.9万円(2019年度予算額:2億5,989.1万円)
概要
「おおさかエネルギー地産地消推進プラン」に基づき、再生可能エネルギーの普及拡大や省エネルギー化等に向けた取り組みを実施する。 ①エネルギー地産地消プランの推進
概要
おおさかスマートエネルギー協議会の開催のほか、新たに、府市共同で設置した「大阪府市エネルギー政策審議会」において、2021年度以降の施策の方向性等について検討する。 ②おおさかスマートエネルギーセンターの運営
概要
ワンストップ相談窓口の運営や、省エネに取り組む中小事業者のサポート、再生可能エネルギーの普及啓発等に取り組む。 ③再生可能エネルギー等の普及拡大に向けた融資事業
概要
過年度に金融機関が実施した太陽光発電設備等に係る低利融資に対し、残高に応じた預託を行う。

バッテリー戦略推進センター事業費
2020年度予算額
1,176.3万円(2019年度予算額:1,349.5万円)
概要
蓄電池の専門家である民間出身のセンター長、燃料電池分野や海外ビジネスの専門人材らの知的・人的資産や企画力、特区制度等を活用し、国や業界団体、支援機関等とも連携しながら、関連企業のさらなる発展および新規事業化への果敢な取組みを支援する。

水素関連ビジネス創出基盤形成事業費
2020年度予算額
24.5万円(2019年度予算額:528.1万円)
概要
H2Osaka(エイチツーオーサカ)ビジョンに基づき、 府域の特色を活かした水素需要拡大の取組方策を検討し、 実証事業の実施など水素技術の実用化に向けた取組みを推進することにより、府内企業の事業参入を促進する。

新エネルギー産業電池関連創出事業費
2020年度予算額
3,248.3万円(2019年度予算額:2,320.7万円)
概要
  • 府内中小企業等の先進的な製品やサービス等の事業化を加速し、大阪発の新たな事業創出を促進するため、蓄電池、水素・燃料電池等の研究開発や実証実験等の取組みを支援する。
  • また、新エネルギー産業の進展と密接に関わる第4次産業革命関連ビジネスの社会実装を促進するため、府内外の事業者による先端技術等の実証実験の取組みを支援する。

中小企業スマートエネルギービジネス拡大事業費
2020年度予算額
244.1万円(2019年度予算額:244万円)
概要
  • 蓄電池、水素・燃料電池をはじめとするスマートエネルギー分野への中小企業の参入促進およびビジネス拡大を図るため、技術力のある中小企業のおおさかスマエネインダストリーネットワーク(SIN)への加入を促進する。
  • SIN会員をはじめとする中小企業等と大手・中堅企業 (大阪スマートエネルギーパートナーズ(SEP)とのオープンイノべーションをはじめ、ビジネスマッチングを促進する。

■ 参照データ

三重県:2023年度までに74万世帯の消費電力を再エネに転換

三重県もまた2019年12月、脱炭素宣言「ミッションゼロ2050みえ」を表明している。

その一環として、脱炭素宣言、さらにSDGs(持続可能な開発目標)への対応、Society5.0の実現、そしてFIT制度の抜本見直しなど、さまざまな環境変化に対応するため、2020年度から2023年度までの中期目標を定めた「三重県新エネルギービジョン」を改定した

同ビジョンでは、2023年までに一般家庭74万7,000世帯で消費される電力を新エネルギーに転換する中間目標を掲げている。実現に向けた施策が、「新エネルギーの導入促進」「家庭・事業所における省エネ・革新的なエネルギー高度利用の推進」「創エネ・蓄エネ・省エネ技術を活用したまちづくりの推進」「環境・エネルギー関連産業の育成と集積」「次世代の地域エネルギー等の活用推進」の5つである。

新エネルギーの導入促進では、地域と共生した太陽光発電の導入や自家消費の推進、木質バイオマス発電では安定した燃料調達の支援、地産地消に資する中小水力発電の普及などを実施する。
家庭・事業所分野では、ZEH/ZEBの推進、蓄電池や燃料電池を組み合わせた高度利用のほか、EV(電気自動車)を活用した低炭素まちづくりなどに取り組む。
創エネ・蓄エネ・省エネ分野では、太陽光発電と蓄電池などによる自立分散型電源の導入によるレジリエンスの強化、そしてエネルギーの地産地消による地域内経済循環を生み出す、といった施策を打つ。産業の育成と集積では、創エネ・蓄エネ技術などに関し、県内企業と共同研究を進める計画だ。さらにバイオリファイナリーの研究開発支援などを通じ、次世代エネルギーの育成も進めていく。

こうした取り組みよって中間目標を達成し、さらにその先の長期目標として、2030年度までに一般家庭84万5,000世帯の消費電力量に相当する、新エネルギーを導入する計画も掲げている。2020年度の主要予算は次の通り。

三重県

次世代自動車開発支援事業
2020年度予算額
714.1万円(2019年度予算額:300.8万円)
概要
電動化など次世代自動車に向けた動きが加速する中で、県内中小自動車関連企業自らが提案能力を身につけ、次世代自動車分野等の新たな参入領域へのビジネス展開を促進するために、県内ものづくり中小企業等が保有する強み(固有技術)を引き出し、さらにレベルアップを図るための支援を行う。

新エネルギー導入促進事業費
2020年度予算額
1,354万円(2019年度予算額:839.4万円)
概要
「三重県新エネルギービジョン」に基づき、多様な主体の協創による、新エネルギーの導入促進、省エネの推進、創エネ・蓄エネ・省エネ技術を活用したまちづくり、環境・エネルギー関連産業の振興等に取り組む。また、太陽光発電事業者に保守点検の重要性を理解してもらい、適切な実施を促すとともに、太陽光発電設備の保守点検を行える事業者を育成するための研修を実施する。

エネルギー関連技術開発事業費
2020年度予算額
188.1万円(2019年度予算額:0円)
概要
環境・エネルギー関連分野への県内企業の進出を促進するため、県工業研究所が中心となって、企業間のネットワークの構築や充実を図るとともに、太陽エネルギー利用等の環境・エネルギー分野における企業との共同研究などに取り組む。

地球温暖化対策普及事業費
2020年度予算額
1,347.6万円(2019年度予算額:296.2万円)
概要
温室効果ガスの排出削減を進めるため、県民や事業者等の効率的な省エネ機器への転換や再生可能エネルギーの活用等の取組を進める。また、地球温暖化による本県の気候変動やその影響について県民の理解を深めるとともに、気候変動適応法に基づき気候変動影響への適応の取組を促進する。

■ 参照データ

滋賀県:しがCO2ネットゼロ推進事業がスタート

自然生態系の変化、農作物の品質低下や災害リスクの増加など、環境、社会、経済活動に大きな影響を与える地球温暖化を抑制するため、滋賀県も2020年1月、「しがCO2ネットゼロ」を宣言し、2050年に向けて動き始めた。

2020年度予算では、しがCO2ネットゼロ推進事業を新たに組成し、県民、事業者、行政一丸となった取り組み機運を向上させるとともに、2050年脱炭素社会に向けたシナリオを作成する。

また地域全体でのCO2削減に向け、企業と連携したエコドライブ、クールシェアなどの実施や、省エネ・節電行動の促進によって、県民の意識変革を図っていく。予算額は約3,000万円。

再エネの普及拡大策では、約1.2億を予算計上し、家庭部門に対する太陽光発電などの導入支援をはじめ、中小企業における省エネや分散型エネルギーシステムの導入を加速させる計画だ。主要予算の詳細は次の通り。

滋賀県

エネルギー政策推進費
2020年度予算額
1億2,125万円(2019年度予算額:1億2,271万円) 新しいエネルギー社会づくり総合推進事業
2020年度予算額
984.4万円(2019年度予算額:0円)
概要
エネルギーに関する施策の総合的な推進や新たなプロジェクトの誘発・組成を行うとともに、しがCO2ネットゼロに向けて情報発信するなど、県民の参画や多様な主体との協働による取組の一層の強化を図る。併せて、「しがエネルギービジョン」の改定に向けた検討を行う。 スマート・エコハウス普及促進事業
2020年度予算額
5,350万円(2019年度予算額:5,350万円)
概要
家庭部門における創エネ・省エネ・スマート化を促進するため、太陽光発電等のスマート・エコ製品の導入に対して支援する。 省エネルギー推進加速化事業
2020年度予算額
3,688.4万円(2019年度予算額:3,683.8万円)
概要
中小企業者等の省エネ・節電の取組を促進するため、専門家による省エネ診断の実施や省エネ設備の整備に対して支援する。 分散型エネルギーシステム導入加速化事業
2020年度予算額
1,213.1万円(2019年度予算額:1,418.6万円)
概要
中小企業者等による再生可能エネルギー等の導入を促進するため、設備の導入に対して支援する。 スマートコミュニティ検討支援事業
2020年度予算額
506.4万円(2019年度予算額:0円)
概要
地域の特性に応じた効率的なエネルギー利用を図るため、民間事業者等が行う再生可能エネルギー等を活用したスマートコミュニティの構築に向けた取組を支援する。

地球温暖化対策推進費
2020年度予算額
4,090.6万円(2019年度予算額:3,412.4万円)
概要
「滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例」および「滋賀県低炭素社会づくり推進計画」に基づき、総合的な取組を実施する。 地球温暖化対策推進事業
2020年度予算額
1,389.1万円(2019年度予算額:986.3万円)
概要
地球温暖化に関する主に家庭向けの普及啓発事業を実施するとともに、企業と連携して脱炭素まちづくりを推進し、認知から行動への変革を促す気候変動対策を推進する。 貢献量評価活用促進事業
2020年度予算額
203.7万円(2019年度予算額:237.9万円)
概要
温室効果ガス排出削減に貢献する事業活動を定量評価する「貢献量評価」と本手法に基づく「しが発低炭素ブランド」の普及を図り、県内環境産業の活性化と環境配慮製品の社会への普及を促進する。 気候変動適応推進事業
2020年度予算額
1,093.3万円(2019年度予算額:1,180万円)
概要
気候変動適応法に基づく地域気候変動適応計画の策定に向け、気候変動リスク情報の収集、今後求められる適応策の検討および県民やステークホルダーとのリスクコミュニケーションを進める。 しがCO2ネットゼロ推進事業
2020年度予算額
582.4万円(2019年度予算額:0円)
概要
2050年に二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることを目指し、県民、事業者および行政が一体となって取り組むため、機運の醸成を図るシンポジウムを開催するとともに、推進体制を整備し、今後の施策の在り方を検討する。

■ 参照データ

京都府:2030年度までにGHG40%削減目指す

京都府が脱炭素宣言を表明したのが、2020年2月である。脱炭素社会へのチャレンジに向け、2019年10月には、京都府総合計画を策定し、20年後(2040年)に実現したい5つの姿を設定した

そのひとつ「温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロへの挑戦」では、2030年度までにGHG総排出量の1990年度比40%削減を達成し、2040年には実質ゼロに向けた社会基盤が構築された将来像を描いている。このほか、「環境×経済の好循環型の社会」「自立分散型のスマートな社会」「ゼロエミッションな社会」といった構想を打ち出している。

これらのビジョンを実現するため、26の具体的方策をあげている。実行期間は2020年度から2023年度までの4年間である。その取り組みは、IoE(Internet of Energy)を利用したエネルギー需給の最適化や、再エネ由来の水素の利活用拡大、気候変動に適応した新たなビジネスの育成など幅広い。また、京都版RE100認証制度の創設や、バイオマス発電や風力発電などの誘致、エネルギーの地産地消の実現などを掲げる。

将来構想の実現に向け、2020年度は家庭や中小企業における再エネの導入、省エネの促進に対し約17億円の予算を計上している。主要予算の詳細は次の通り。

京都府

スマートライフ・スマートオフィス推進事業費
2020年度予算額
16億9,752万円(2019年度予算額:18億2,050万円)
概要
スマート社会の実現のため、家庭や中小企業等における再生可能エネルギーの導入および省エネルギーの促進に係る助成等を総合的に実施する。 スマートライフ推進事業費
2020年度予算額
16億3,502万円(2019年度予算額:17億4,800万円)
概要
  • 家庭向け再エネ導入相談窓口(京都再エネコンシェルジュ)の設置
  • 家庭向け自立型再エネ設備設置助成
  • スマート・エコハウス促進融資
スマートオフィス推進事業費
2020年度予算額
6,250万円(2019年度予算額:7,250万円)
概要
  • 事業者向け自立型再エネ設備およびBEMS(ビルディングエネルギーマネジメントシステム)等設置助成
  • 多様な再生可能エネルギー導入助成
  • EMS(エネルギーマネジメントシステム)診断
  • 省エネ・節電設備更新助成

地域スマートエネルギーマネジメント推進事業費
2020年度予算額
1億4,750万円(2019年予算額:1億8,050万円)
概要
地域におけるエネルギーの自立化のため、再エネ電源等の拡大による拠点整備や地域電源を活用したエネルギーの地産地消に向けた取組を実施する。 京都舞鶴港エネルギークラスター事業費
2020年度予算額
1億450万円(2019年度予算額:1億450万円)
概要
バイオマス発電等の再エネ発電設備整備に対する支援およびLNGインフラ整備やメタンハイドレート実用化の促進 京都舞鶴港スマート・エコ・エネルギーポート化推進事業費
2020年度予算額
4,200万円(2019年度予算額:7,500万円)
概要
京都舞鶴港を環境負荷の少ない特長ある港として発信していくため、再生可能エネルギー等の拠点化に向けた取組を実施 地産地消型地域エネルギー活用事業費
2020年度予算額
100万円(2019年度予算額:100万円)
概要
地域の特性や資源を活かした地域活性化に資するエネルギーの地産地消方策や、府内企業や府民の再エネ電気の活用を促す方策の検討等を実施

水素エネルギー施策推進費
2020年度予算額
1,200万円(2019年度予算額:200万円)
概要
脱炭素社会の実現のため、次世代エネルギーの一つとされる水素エネルギーの活用方策を検討する産学公連携によるプラットフォーム(水素社会みらいプロジェクト)を活用した普及調査研究事業を実施する。 水素社会みらいプロジェクトの開催
2020年度予算額
200万円(2019年度予算額:200万円)
概要
産業界や有識者、行政等で構成する「京都府水素社会みらいプロジェクト」を開催し、防災、物流等の観点から水素利用実証に向けた立案を検討 水素エネルギーポテンシャルの調査
2020年度予算額
1,000万円(2019年度予算額:0円)
概要
府南部地域における最適な水素エネルギー供給システムの構築に向け、地域の再エネを活かした水素製造・利活用ポテンシャル調査を実施

省エネ・脱炭素化推進事業費
2020年度予算額
2,531万円(2019年度予算額:2,431万円)
概要
温室効果ガスの排出削減を図るため、省エネ・省CO2の取組および次代を担う子どもたちに対する環境教育や啓発活動を実施する。 事業者CO2削減対策事業費
2020年度予算額
800万円(2019年度予算額:600万円)
概要
大規模排出事業者への指導・助言および京都版排出量取引制度の運営を実施 次世代環境担い手づくり推進事業費
2020年度予算額
820万円(2019年度予算額:670万円)
概要
丹後海と星の見える丘公園およびけいはんなe2イイ未来まなびパークを活用した環境学習など、次代を担う子どもや若者を環境人材として育成 EV・PHVタウン推進事業費
2020年度予算額
911万円(2019年度予算額:911万円)
概要
EVやPHV(プラグインハイブリッド自動車)の普及を図り、運輸部門のCO2削減を促進

■ 参照データ

兵庫県:33億円投じ、家庭部門での再エネ利活用進める

兵庫県では、2030年度に2013年度比26.5%減を目指したCO2県削減目標の見直しに着手するとともに、家庭における創エネ・蓄エネ支援、水素社会の構築などに取り組むことで、持続可能な地域づくりを目指している。

なかでも人口減少・高齢化社会において地域再生を実現する事業のひとつに、水素ステーションの整備や燃料電池バスなど次世代自動車の導入を図る「水素社会先導プロジェクト」を打ち出している。2020年度は6,700万円を予算計上した。

他にも同県では「持続可能な地域環境の創造」という政策テーマのもと、地球温暖化対策の推進、プラスチックごみゼロなどを目指す資源循環型社会に向け取り組んでいる。

地球温暖化対策では、家庭部門における太陽光発電、燃料電池、蓄電池などの導入促進に向け、33.8億円の予算を計上。また今年度から新たに木質バイオマスなどの再エネによる地産地消を目指した事業を組成した。予算額は約1,000万円である。

また、県内企業のRE100、RE Actionへの参加促進を図る「ひょうご版再エネ100の推進」も新たに予算化している。主要予算の詳細は次の通り。

兵庫県

次世代エネルギーの開発促進
2020年度予算額
631万円(2019年度予算額:691.5万円)
概要
エネルギー分野における新たな課題・動向に対して、本県の地域特性を踏まえたエネルギー対策を実施する。 海洋エネルギー資源開発の促進
2020年度予算額
148万円(2019年度予算額:168.4万円)
概要
但馬沖におけるメタンハイドレートの早期実用化に向けた研究開発を促進するとともに、開発に向けた機運を醸成
  • 海洋エネルギー資源開発促進日本海連合への参画
  • 広報活動(メタンハイドレート開発に向けた取組状況等の情報発信)
水素エネルギーの普及促進
2020年度予算額
146.6万円(2019年度予算額:139万円)
概要
水素をエネルギーとして利用する水素社会の実現に向けた取組の推進
  • 水素社会推進協議会・水素利活用研究会(仮称)・水素サプライチェーン研究会(仮称)の開催
  • 県民向け普及啓発活動の実施
●日本海側でのエネルギーセキュリティの促進
2020年度予算額
336.4万円(2019年度予算額:336万円)
概要
京都府と共同で北近畿における広域ガスパイプラインの整備等を検討
  • 研究会の開催
  • 国への整備提案に向けた調査の実施

住宅用創エネルギー・省エネルギー設備設置特別融資の実施
2020年度予算額
33億8,242.5万円(2019年度予算額:35億3,629.6万円)
概要
創エネルギー・省エネルギー設備の普及を図るため、住宅への創エネルギー・省エネルギー設備の導入に対し、低利な融資を実施する。
融資対象者
県内で自ら居住する住宅に創エネルギー・省エネルギー設備を設置する者のうち、「うちエコ診断」を受診した者
対象設備
住宅用太陽光発電設備、家庭用燃料電池、家庭用蓄電池(V2H※含む)、断熱化工事、省エネ化工事など ※V2H:電気自動車等の電力を家庭用の電力供給源とすることを可能にする設備
融資利率
0.8%
償還期間
10年以内
融資限度額
500万円(複数設備をあわせた融資の場合は合計額の上限)
融資枠
46億円

水素ステーションの整備促進
2020年度予算額
5,000万円(2019年度予算額:5,000万円)
概要
水素ステーションの県内への整備促進を図るため、整備費の一部を補助
補助対象者
水素ステーションを設置しようとする事業者等
補助対象経費
設備に要する経費(設計費、設備機器費、設備工事費等)
補助額
以下のいずれの小さい方
  • 5,000万円
  • 総整備費から国庫補助金(補助率2/3、上限2億5,000万円)および8,000万円を引いた額

環境保全・グリーンエネルギー設備設置融資の実施
2020年度予算額
5億3,393万円(2019年度予算額:5億3,538万円)
概要
県内中小企業の環境保全、グリーンエネルギー等の導入促進のため、信用保証協会および金融機関との協調融資を実施する。
融資枠
9億円
融資対象者
県内に工場等を有する中小企業者など
融資利率
0.7%
償還期間
10年以内
融資限度額
1億円/1企業・組合当たり

再エネ導入のための支援制度の強化
2020年度予算額
805.9万円(2019年度予算額:0円)
概要
バランスのとれた再生可能エネルギーの導入を促進するため、先進的な再生可能エネルギー発電設備の導入等を支援する。 ひょうご再エネ導入加速化プロジェクト
2020年度予算額
122.4万円(2019年度予算額:0円)
概要
域再エネワークショップの開催
対象
再エネ導入を検討している団体、地域住民、地域新電力等
回数
3回
人数
50人/回(予定)
  • 再エネ導入支援アドバイザーの派遣
対象団体
再エネ導入を計画している地域団体、NPO法人等
派遣回数
  • 1人派遣2回
  • 2人同時派遣1回
内容
地域住民との合意形成、起業ノウハウ、運営方法、導入にあたっての課題解決事例等 地域創生!再エネ発掘プロジェクト
2020年度予算額
683.5万円(2019年度予算額:684.9万円)
概要
再生可能エネルギー発電事業の地域住民立ち上げ時の取組等の支援
  • 立ち上げ時の取組支援
補助対象経費
勉強会、現地調査、先進地視察等に要する経費
対象団体
小水力発電、小型バイオマス発電、小型風力発電の導入を検討している地域団体等
補助上限額
30万円(定額)
箇所数
5ヶ所
  • 基本調査等補助
補助対象経費
事業性評価に必要な調査等に要する経費
対象団体
小水力発電、小型バイオマス発電、小型風力発電の導入を検討している地域団体等
補助上限額
500万円
補助率
1/2
箇所数
2ヶ所
  • 再生可能エネルギー発電設備導入に対する無利子貸付事業
貸付対象
小水力発電、小型バイオマス発電、小型風力発電、太陽光発電(先進モデルに限る)
事業主体
地域団体等
貸付限度額
3,000万円/件
貸付期間
20年以内
貸付利息
無利子
貸付団体数
2団体

再生可能エネルギーによる地産地消モデルの構築
2020年度予算額
1,069.4万円(2019年度予算額:0円)
概要
木質バイオマスの導入可能性調査研究など再エネ導入によるエネルギーの地産地消を促進 北摂地域循環共生圏ワーキンググループ(仮称)の設置
2020年度予算額
35.5万円(2019年度予算額:0円)
構成
地域団体、事業者、市町等
内容
関係者との連携促進、先進地視察等。各種事業の進捗状況や課題等の把握 再生可能エネルギー導入可能性の調査
2020年度予算額
1,000万円(2019年度予算額:0円)
概要
里山資源由来の木質バイオマスの供給・調達や木質バイオマスをエネルギー源とする設備の導入可能性について調査 フォーラムの開催
2020年度予算額
33.9万円(2019年度予算額:0円)
概要
地域循環共生圏の全県展開を図るため、フォーラムを実施

ひょうご版再エネ100の推進
2020年度予算額
63.6万円(2019年度予算額:0円)
概要
温室効果ガスの削減を図るため、県内企業の「RE100」、「再エネ宣言100 REAction」への参画促進等を通じた再エネ化の取組を推進

自立・分散型エネルギーシステム構築支援事業の実施
2020年度予算額
2,000万円(2019年度予算額:0円)
概要
(公財)ひょうご環境創造協会と連携して、自立・分散型地域エネルギーシステムを構築する先導モデル事業の設備の整備を支援
補助率
1/3(上限2,000万円)
件数
1件

家庭における省エネ支援事業の実施
2020年度予算額
1,300万円(2019年度予算額:0円)
概要
再生可能エネルギーの導入を促進するため、(公財)ひょうご環境創造協会と連携して、家庭での蓄電池等の設置を支援
補助対象者
  • 自ら居住する県内の既築住宅に蓄電池を新たに設置する者
  • 自ら居住する県内の既築住宅に蓄電池と太陽光発電設備を新たに同時設置する者
補助対象経費
  • 蓄電容量1kWh当たり1万円(上限4万円)
  • 太陽光発電設備と同時設置の場合は、出力1kW当たり2万円を加算(上限10万円)
件数
500件

中小事業所省エネ設備導入等の促進
2020年度予算額
4,008.6万円(2019年度予算額:4,000万円)
概要
省エネ診断等を受診し、専門家から設備更新の提案を受けた事業所等を対象に、省エネ設備への更新、省エネ化工事および再エネ施設の設置等を支援
対象事業所
省エネ診断等を受診し、省エネ相談員から設備更新の提案を受けた事業所等
対象事業
  • 事業所やビル等に設置する省エネ設備(更新等)
  • 省エネ化工事(断熱化工事等)
  • 再生可能エネルギー施設(太陽光発電施設、バイオマス熱供給施設等)
補助率
1/3(上限100万円)
件数
20件

ひょうご次世代産業高度化プロジェクトの推進
2020年度予算額
5億6,649.7万円の内数(2019年度予算額:5億5,167.2万円の内数)
概要
成長が見込まれる次世代産業分野を対象に、事業の高度化や新規参入に向けた支援を重点的に展開し、安定的かつ良質な雇用を戦略的に創造
  • 水素等次世代エネルギー産業分野参入促進事業
  • セミナーの開催による参入支援、認証取得や試作・人材育成を支援

■ 参照データ

奈良県・和歌山県:再エネ、水素で地域活性目指す

急激な人口減少や成熟化する県内産業といった課題を抱える奈良県では、愉しむ「都」をつくるという政策の一環として、再エネ施策を進めている。2020年度は、域内に豊富なポテンシャルを持つ木質バイオマスの利活用や、水素ステーションの整備などを通じ、地域活性化を目指す。

和歌山県も水素社会の実現に向けた利活用の拡大や木質バイオマスの導入促進に取り組む。奈良県および和歌山県の予算は次の通り。

奈良県

新エネルギー等対策資金
2020年度予算額
1,509.8万円(2019年度予算額:1,147.1万円)
貸付対象者
再生可能エネルギー、地球温暖化対策等に資する設備の導入を図る者
貸付限度額
設備 2億8,000万円
貸付利率
金融機関所定金利
貸付期間
15年(うち1年据置)

エネルギービジョン推進事業
2020年度予算額
97万円(2019年度予算額:97万円)
概要
  • 地域エネルギー資源の活用に精通した専門家を要請に応じて派遣
  • SS(サービスステーション)過疎地での燃料の安定供給方策の検討 
  • 次世代エネルギーの普及啓発

事業所エネルギー効率的利用推進事業
2020年度予算額
555.5万円(2019年度予算額:810万円)
概要
中小企業者等が行う省エネルギー化に向けた取組に対し補助
補助上限
200万円
  • 事業者が実施する熱の効率的利用および自給率の向上を図るための設備整備に対し補助
太陽熱利用システム
補助上限
50万円 停電時自立運転機能付コージェネレーションシステム
補助上限
100万円
負担区分
県1/3・実施主体2/3

スマートハウス普及促進事業
2020年度予算額
2,570万円(2019年度予算額:2,700万円)
概要
住宅への創エネ・蓄エネ設備の普及を促進するため、設置経費の一部に対し補助
蓄電池
  • 南部・東部地域:13万円/件(補助単価)
  • その他の地域:10万円/件(補助単価)
エネファーム
  • 南部・東部地域:11万円/件(補助単価)
  • その他の地域:8万円/件(補助単価)
太陽熱利用システム
  • 自然循環型:3万円/件(補助単価)
  • 強制循環型:9万円/件(補助単価)
負担区分
他団体からの補助・民間負担分を除き県10/10

EV・LPガス発電を活用した避難所への電力供給事業
2020年度予算額
120万円(2019年度予算額:160万円)
概要
地域の公民館等の小規模な避難所における、災害時に必要な電力等を自給するための設備導入に対し補助
対象設備
  • 電気自動車充給電設備 
  • 電気自動車用可搬型給電器・非常用照明機器
  • LPガス発電設備・非常用照明機器
  • 移動式蓄電池・非常用照明機器
補助上限
40万円
負担区分
県1/2・市町村1/2

水素ステーション整備支援事業
2020年度予算額
5,000万円(2019年度予算額:190万円)
概要
民間事業者による水素ステーションの整備に対し補助
負担区分
国および民間負担分を除き県10/10

地域エネルギー資源活用支援事業
2020年度予算額
200万円(2019年度予算額:0円)
概要
地域の再生可能エネルギーを活用したコミュニティの活性化につながる構想検討および設備導入に対し補助
補助上限
50万円
負担区分
県1/2・実施主体1/2

木質バイオマスエネルギー普及促進事業
2020年度予算額
127万円(2019年度予算額:148万円)
概要
  • 木質バイオマス利活用検討会議の開催 
  • 木質バイオマスを活用した地域内エコシステムの導入可能性調査を支援
負担区分
国1/2・県1/2

木質バイオマス利用施設整備事業
2020年度予算額
1,901.9万円(2019年度予算額:2,500万円)
概要
木質バイオマス利用施設等の整備に対し補助
実施主体
天川村
負担区分
国1/2・市町村1/2

■ 参照データ

和歌山県

水素社会推進
2020年度予算額
108.3万円(2019年度予算額:0円)
概要
「水素社会」の実現をめざして、水素のエネルギー利用に係る啓発や、県内での水素利活用拡大に向けた事業者支援を実施

木質バイオマス発電支援対策
2020年度予算額
2,692.6万円(2019年度予算額:2,926万円)
概要
木質バイオマス発電所の立地に向けて、林業関係者および発電事業者に対して燃料調達に要する経費を支援

■ 参照データ

近畿エリアのまとめ

気候変動対策における自治体や企業、NGOなど非国家アクターの存在感が増している。
とりわけ日本では、東京都、京都市、横浜市による「カーボンゼロシティ」の表明以降、2050年CO2排出実質ゼロを目指す自治体が増加している。

CO2実質ゼロの達成は容易ではない。今回見たように、自治体は独自の中期目標を立て、再エネや省エネ促進に取り組んでいる。ただ、域内に賦存する再エネ資源は地理的条件、気象条件に依存するため、都市部であるほど開発ポテンシャルは低い。

こうしたなか、兵庫県や京都府などはメタンハイドレートやLNGなどで広域連携を模索し始めた。広域連携は再エネの調達分野でも今後進むだろう。

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(Text:藤村朋弘)
藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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