11月1日、東京海上日動火災保険は、太陽光PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)事業者に向けた「太陽光PPA事業者向けパッケージ保険」の提供を始めることを発表した。
対象となるのは「第三者所有モデル」の事業者。第三者所有モデルというのは、再生可能エネルギー(再エネ)発電設備を求める需要家の家や工場、ビルや敷地内に、第三者である事業者が発電設備を設置し、発電電力を供給するという形のPPA事業のことをいう。今回発表された保険は、発電設備の損壊リスクや、管理に起因する賠償責任リスク、需要家の倒産リスクなどを総合的に補償する内容となっている。
今回のプランは、世界的な脱炭素の再エネの需要が高まっていることを背景に打ち出された。東京海上日動火災保険は、保険によるリスクコンサルティングを通して、太陽光PPA事業全体の成長や発展に貢献することを目指すとしている。
これまで、第三者所有モデルの事業者が顧客企業などの需要家に対して売電する場合、需要家が倒産することで売電収入が得られないリスクが課題となっていた。というのも、第三者所有モデルでは、PPA事業者が発電設備設置コストなどを負担しつつ、10年以上の長期的な電力購入契約を通じて、設置コスト等を回収するのが一般的な仕組みだ。そうなると、契約期間の間に需要家が倒産したり、不測かつ、突発的な事故が起こったりしてコストが回収できないリスクが付きまとう。
そのため今回のプランでは、需要家の倒産による電気料金の未払いや、発電設備の移設・撤去費用、自然災害などに起因する太陽光パネル等の設備損壊、設備の管理に起因する第三者賠償リスクなど様々な損失リスクを補償する。日経新聞によると、需要家の倒産による未払い電気代金のうち、2~3ヶ月分が補償されるとのことで、保険費用は約500万円を見込んでいる。
7月6日に環境省から発表された「再エネの更なる導入に向けた環境省の取組方針」では、「(令和3年6月国・地方脱炭素実現会議決定)において、『政府及び自治体の建築物及び土地では、2030年には設置可能な建築物等の約50%に太陽光発電設備が導入され、2040年には100%導入されていることを目指す。』とされていることを踏まえ、具体化に取り組む。」とされており、今後、PPA事業の普及は加速していくとみられている。富士経済の情報では、第三者所有モデルに限っても、2030年度の市場規模は1,571億円以上に上り、2019年度の58億円の27.1倍になると予測されている。
東京海上日動火災保険は、9月2日にも太陽光発電設備の廃棄費用や賠償リスクを補償する商品を発売しており、今後も事業者のニーズに応じて新たな商品開発を行うとしている。PPA事業普及に伴い、周囲のビジネスモデルも急速に整いつつあろうとしているようだ。
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