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太陽光発電協会「太陽光発電の主力電源化をめざして」―山積みの課題をいかに超えていくか

太陽光発電協会「太陽光発電の主力電源化をめざして」―エネルギー供給の強靭化と脱炭素化

2020年7月30日、一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)の主力電源化推進委員会は、ポジションペーパー「太陽光発電の主力電源化をめざして」を公表した。また、これに合わせ、8月6日には記者を対象に、情報交換会が開催された。2050年太陽光発電300GW導入に向けて、積極的な取り組みが必要であるが、課題も少なくない。

エネルギー供給の強靭化と脱炭素化

太陽光発電協会(JPEA)が作成したポジションペーパーには、2つの背景がある。1つは、今回のペーパーで明示されている「エネルギー供給強靭化法の制度設計」に向けたものであるということだ。もう1つが、今年5月に策定したJPEAビジョン「PV OUTLOOK 2050」で、ここでは特に、2050年における太陽光発電の導入目標を以前の200GWから300GWに上方修正したことが大きなポイントとなっている。

ポジションペーパーの内容だが、4つの点について、示されている。

1番目は「FIP制度について」だ。ここでは、「再エネ事業者が多様な創意工夫を発揮できる事業環境と公平で開かれた電力市場の整備に官民一体で取り組む」とされている。具体的にはアグリゲーターの育成や公正な卸取引市場、活発なPPA取引や非化石価値取引の実現となっている。

しかし、他方で「調整力関連技術の向上とインバランス低減ノウハウの蓄積が図れるまでの間、激変緩和措置を希望する」ともしている。制度に対し、ソフトランディングを求めているということだろう。また、特にアグリゲーターの育成がFIP成功のカギだという。

2番目は「地域活用電源について」だ。ここでは、「地域との共生」に加えて、「電源過小地区での太陽光高圧案件の導入等」による「地域エネルギーの自給率向上」や、規制緩和による大型耕作放棄地への再エネ導入拡大、第三者所有による需給一体モデルやコーポレートPPAの推進などが示されている。「PV OUTLOOK 2050」では、導入する300GWのうち70GWが農地となっている。ここにはソーラーシェアリングも含まれている。林地開発による太陽光発電への批判がある中、あらためて農地の有効利用ということが求められているともいえるだろう。

3番目は「系統制約の克服について」だ。ここでは日本版コネクト&マネージ等の導入や系統利用の先着優先ルールの見直し、配電網を含めたスマート化の検討などが盛り込まれている。

4番目は、「FIT認定後の失効措置について」だが、自らの事由によらず事業開始が遅れている案件への適切な対応、および長期放置案件が再エネ導入阻害とならないような適切な措置について述べられている。

2050年300GWに向けた課題

事務局側の説明に続き、記者との質疑応答が行われた。ここでは、2050年300GWに向けたさまざまな課題が示されたといっていいだろう。

まず、来年にも改訂が見込まれる第6次エネルギー基本計画への示唆だ。協会としては、非化石電源の上積みとして、そこに太陽光発電が含まれることを期待しているという。また、そのためには、早期に発電コスト7円/kWhを実現していくという。また、300GW導入は、パリ協定の目標や、政府の2050年温室効果ガス80%削減にも整合するものだということだ。

ただ、パリ協定では近年、平均気温の上昇を2℃ではなく1.5℃で語られることが多くなっている。協会としては、まだ1.5℃に対応したシナリオは作成していないとした上で、このときは2050年400GWを超えるかもしれないとした。今後、新たなシナリオを計算していくことも必要になるだろう。

2032年以降の事業用太陽光発電の卒FITもこれから検討すべき課題ということだ。協会の認識としては、平均30年間運転が可能で、その後もリプレイスが期待できる太陽光発電が、卒FITで事業をやめてしまえば、300GW達成は難しくなる。とはいえ、卒FIT後の事業継続には、減価償却が終わっている設備のO&Mなどに対応できる事業者の育成などが必要だという。また、非化石価値取引市場があれば、卒FIT後の事業継続を後押しするものになるという見方を示した。

ファイナンスにも課題がある。FITと異なり、FIPでは金融機関は回収可能性の高さを理解することは難しい。また、PPAの場合は企業と相対で長期取引となるため、収益の安定性が見込まれるが、相手企業の与信力なども問われるため、やはり課題は残る。
海外では、PPA+FIPというしくみでマーケットのコンセンサスが得られているが、日本ではここまでFITだけできたことから、新たな制度になっていくには、金融の面からも激変緩和措置が必要かもしれないということだ。

JPEAとしては、社会のニーズとしても、再エネのさらなる大量導入が求められているということを理解する一方で、FITがなくなったあとの「競争力の向上」や「価値の創出」に向けては、まだまだ課題が多いということだろう。とはいえ、記者との意見交換を通じて、協会のポジションと課題が明らかになった点では、有意義な意見交換会だったといえそうだ。

(Text:本橋恵一)

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もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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