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洋上風力発電の「国産化」:期待と挑戦(一)

洋上風力発電の「国産化」:期待と挑戦(一)

2020/03/03

台湾は風況が良いこともあり、再生可能エネルギーに風力発電が有望視され、開発が推し進められている。しかし、開発が進めばそれでいいというのではなく、同時に国内産業の育成にも非常に力を入れている。どのような政策で再エネの推進と国内産業育成を達成しようとしているのか。JETRO・アジア経済研究所研究員で東アジアのエネルギー問題の専門家、台湾在住の鄭 方婷(チェン・ファンティン)氏が具体的な事例をもとに紹介する。

前回は、洋上風力開発が生態系に及ぼす影響とその対策や課題について、具体的な事例を取り上げた。今回は角度を変え、国内産業の育成という観点から非常に重要視されている「国産化」に焦点を当てていく。

国産化の狙いとは

洋上風力開発業者に国産化を課す狙いは、国内の関連産業を成熟させ、最終的に発電コストを抑えることにある。そのため台湾政府は、まずは価格勝負の入札ではなく、経済部の審査による総合的な評価によって業者に開発資格を与えている。

というのも、現在のように市場が未熟で開発コストを下げることが難しい時期には、業者に落札のためだけの低コストを強いる入札よりも、審査によって真に開発力のある業者を見極めるほうが適しているからである。
ただし、審査ではコスト削減圧力が弱く買取価格が高くなるというデメリットもあるため、市場の成熟とともに入札に移行していくのが一般的である。

国産化は正式には「産業関連効果」と言い、経済部による審査項目の中で最も厳しい目が注がれると言われている。国産化審査は仮審査と本審査の二段階からなり、業者が開発資格を取得するには、この産業関連効果について書面で説明し、仮審査に合格する必要がある。また、その他にも詳細な開発計画をもとに国内サプライヤーとの間で交わした合意証明や了解覚書(MOU)を提出することなどが求められる。

そして通常、開発業者が実際に着工に至るのは、仮審査で約束した項目が着実に実行されているかを確認する本審査通過後である。
本審査で拒絶され、その後も業者が適切な代替案を示せない場合は、国産化の履行に対する担保金(契約保証金)の一部または全額の差押えや、最悪の場合開発資格の取消もあり得るなど、国産化要求不履行の罰則は非常に重く、開発業者にとっては大きなプレッシャーである。

2025年までの「国産化」要求

現在、経済部による国産化の要求は、送電網への接続予定年によって準備期を含む3つの段階に分けられており、下記表に記載の内容は、全て接続予定年までに国内サプライヤーによって供給される必要がある。

出所:中華民国(台湾)経済部工業局資料より筆者整理。

上記表の、それぞれの達成項目は以下のようになる。

  • 1.準備期(2021年~2022年):タワー、基礎構造、陸上電力設備及び海上工事などの国産化を達成(写真1)。
  • 2.第一段階(2023年):準備期にある全ての項目と、新規の風車部品、海底ケーブル、海上工事などの項目達成。
  • 3.第二段階(2024年~2025年):準備期と第一段階の全項目及び、増速機、発電機、電力変換・制御装置、ブレードなどの項目達成。

写真1
台湾の中国鋼鉄公司が投資するメーカー「興達海洋基礎」の基礎構造生産拠点となる工場の竣工式典に訪れた陳健仁副総統(左から3番目)、2019年12月27日。

出所:総統府公式ウェブサイト。

なお、上表は2025年までに運転を開始する発電所が受ける制約だが、洋上風力発電設備容量の政府目標が10GWに引き上げられた2025年以降の国産化審査の方法は現段階で未定のため、策定が急務である。

政府内には、総合的な質を重視する現行の審査方法を2025年以降も継続するのが望ましいという声と、イギリスのように国内産業への投資総額、つまり量で評価すべきであるという声があり、意見が分かれている。

国産化の審査方法は国内外の開発業者とサプライヤーの投資意欲に直接的な影響を与えるため、その内容は今後の洋上風力発電開発の成否に大きな影響を与えると思われる。

乗り越えるべき数々のチャレンジ 海底ケーブルもそのひとつ

台湾の洋上風力開発における国産化要求には、国内産業を活性化する効果があることは明白である。しかしその実現には資金、技術、設備、人材など全てが揃う必要があり、今後乗り越えるべき壁は多い。

例えば、風車の重要な部品の一つに風車と陸上施設を結ぶ海底ケーブルがある。この海底ケーブルについて、台湾最大手の電機・通信メーカーが今年に入って設備投資を断念すると発表した。

その主な原因としては下記のふたつを挙げている。

  • ①ケーブル製造工場の建設に必要な、面積が広く港に近接した候補地が見つからないこと
  • ②今後を見据えた製造コストの算出が困難であること

この発表により、海底ケーブルの国産化は非常に難しい局面を迎えている。

2025年までの開発案に関しては産業関連効果の本審査が終わり、結果が公開されている。本審査を通過した業者がいる一方で、国内サプライヤーが決まらず、本審査を通過できずに経済部と改善案を協議中の業者も出ている。これら各々の事例に関しては次回以降の連載で詳しく紹介したい。

高雄市 駁二藝術特区(写真:中村加代子)

鄭方婷
鄭方婷

国立台湾大学政治学部卒業。東京大学博士学位取得(法学・学術)。東京大学東洋文化研究所研究補佐を経てJETRO・アジア経済研究所。現在は国立台湾大学にて客員研究員として海外駐在している。主な著書に「重複レジームと気候変動交渉:米中対立から協調、そして「パリ協定」へ」(現代図書)「The Strategic Partnerships on Climate Change in Asia-Pacific Context: Dynamics of Sino-U.S. Cooperation,」(Springer)など。 https://www.ide.go.jp/Japanese/Researchers/cheng_fangting.html

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