では、実際に脱炭素先行地域に応募した自治体はどれくらいの数があるのだろうか。
2月23日のNHKでの報道によれば、全国で79の応募件数があり、自治体の数にすれば102に上ったという。原則的に、実際に応募した自治体の名称は公表されないが、一部の自治体は、報道などを通して公表している場合もある。
2月25日時点で既に明らかになっているものとしては、下記の13自治体がある。
既に脱炭素先行地域への申請を表明している自治体
このほかに、応募の表明自体はしていないものの、未利用の木材や製材から出る木くずを用いたバイオマス発電に取り組む岡山県真庭市、EVカーシェアリングを進める神奈川県小田原市なども脱炭素先行地域への応募検討に向けて動いていることが報道されてきた。
また昨年9月に、東京都港区が脱炭素先行地域の設置を求める請願が行われたことを公表したり、福岡県古賀市の田辺市長が古賀駅東口エリアの脱炭素先行地域化を目指すことをSNSで告げたりと、その意気込みをアピールする自治体も多くいる。岡山市などは、脱炭素先行地域への申請を含め、地球温暖化対策事業に5億円を盛り込んだことが報じられた。
さらに、脱炭素先行地域の選定を目指して動き出しているのは自治体だけに限らない。
既に多くの企業が、地域の脱炭素化やゼロカーボンシティ宣言へ向けたサポート事業に乗り出しており、中には具体的に脱炭素先行地域選定をその事業目標に据えた動きをとる企業もある。
例えば、りそなホールディングス傘下に入った関西みらいファイナンシャルグループのみなと銀行は兵庫県などを招き、脱炭素先行地域の選定や再生可能エネルギーの地産地消などについての情報交換会を開催。兵庫県の播磨域8市8町(高砂市、姫路市、相生市、加古川市、加西市、宍粟市、たつの市、赤穂市、稲美町、播磨町、市川町、福崎町、神河町、太子町、上郡町、佐用町)を対象に、取り組みを進めている。
九州では、九州ファイナンシャルグループ傘下の鹿児島銀行と肥後銀行が、地元自治体が脱炭素先行地域に対応するための支援事業を行うと、今年の1月26日に発表した。
第1回応募による選考結果は、あと1ヶ月ほどでわかるが、募集は今後も年に2回ほどのペースで続けられていくという。長野県長野市や上田市のように今後の募集に向けて意欲的な自治体は多くあり、今後の動向から目が離せない。
なお、そうした今後の有力候補を知るには、ゼロカーボンシティ宣言の内容から、どんな方法でカーボンゼロを目指しているかを知るのもよいだろう。ゼロカーボンシティ宣言は、今年の1月31日時点で534の自治体(40都道府県、319市、15特別区、134町、26村)が表明しているが、その内容を見れば日本で全体的に進められている取り組みや、地域ごとに得意とする脱炭素戦略が見えてくるに違いない。
カーボンゼロシティ宣言内で触れた主な取り組み内容と自治体数
取り組み内容 | 自治体数 | 主な自治体 |
再エネ導入 | 306 | 山梨県、岩手県、神奈川県横浜市、福島県郡山市など |
省エネ推進 | 152 | 群馬県、奈良県生駒市、鹿児島県鹿児島市、静岡県浜松市など |
ゴミの減量 ・資源化 | 86 | 静岡県御前崎市、神奈川県厚木市、福島県福島市、長崎県長崎市など |
EV・FCVなど 次世代車の導入 | 71 | 東京都、神奈川県小田原市、静岡県御殿場市、福岡県福岡市など |
水素活用 | 28 | 福島県、宮城県、愛知県豊田市、神奈川県川崎市など |
カーボンオフセット (Jクレジット) | 18 | 三重県南伊勢市、大阪府豊中市、東京都武蔵野市、新潟県村上市など |
環境省「2050年二酸化炭素排出実質ゼロに向けた取組等」(2022.1.31)を元に編集部が計上
脱炭素先行地域については、その後の横展開を加味しても100の自治体ではまだまだ足りないという見方も強い。今回は79件に留まった応募だが、先行して表明されたカーボンゼロシティ宣言の達成と共に、脱炭素先行地域への応募の勢いも増すことを願うばかりだ。
エネルギーの最新記事