中小企業にも及ぶ脱炭素の波 企業の脱炭素の成否を握るスコープ1、2、3とは | EnergyShift

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中小企業にも及ぶ脱炭素の波 企業の脱炭素の成否を握るスコープ1、2、3とは

中小企業にも及ぶ脱炭素の波 企業の脱炭素の成否を握るスコープ1、2、3とは

2021年12月08日

2021年4月に、日立製作所があるサービスの提供開始を発表した。企業の脱炭素経営を支援する、環境情報管理「EcoAssist-Enterprise」の新メニュー「CO2算定支援サービス」だ。

このサービスを簡単に説明すれば、従来大きな労力と時間が必要とされていたCO2のサプライチェーン排出量算定や各種環境データの収集を行い、その後の改善に至る一連の施策実行を日立グループが一括して行うというものだ。

このサービスに注目する企業は多く、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、さっそく日立と提携。顧客企業1,600社に対するコンサル事業の一環で、CO2排出量を算出する同システムを提供することが11月26日に報じられた。

このように、今、企業の脱炭素においては自社の温室効果ガス(GHG)排出もさることながら、そのサプライチェーン(供給網)の排出量についても厳しい管理が求められている。そして当然ながら、CO2をはじめとするGHGの排出を抑えるには、自社の事業がどれだけGHGを排出しているかを正確に知ることが必要だ。しかし、一言で自社の事業が排出するCO2といっても、その対象は多岐にわたる。

そこで用いられるのが、企業に対して、GHGの排出量や気候変動に対する取り組みの情報公開を求める組織「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」が定めた考え方(プロコトル)である、「スコープ」だ。

スコープは1~3に分かれる。

スコープ1企業の直接排出。燃料の使用などによる自社ビルや自社工場での排出。
スコープ2間接排出。他社から購入した電力の使用による、排出。
スコープ3スコープ1、2以外のすべて。原材料の調達や顧客による製品の使用、廃棄段階での排出などで発生する、様々な排出が該当。

より細かく言えばスコープ3は15のカテゴリーに分類されている。


環境省「中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル」より

Scope3カテゴリ該当する活動(例)
1購入した製品・サービス原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達
2資本財生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上)
3Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動調達している燃料の上流工程(採掘、精製等)
調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等)
4輸送、配送(上流)調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
5事業から出る廃棄物廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理
6出張従業員の出張
7雇用者の通勤従業員の通勤
8リース資産(上流)自社が賃借しているリース資産の稼働
(算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半)
9輸送、配送(下流)出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売
10販売した製品の加工事業者による中間製品の加工
11販売した製品の使用使用者による製品の使用
12販売した製品の廃棄使用者による製品の廃棄時の輸送(※2)、処理
13リース資産(下流)自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働
14フランチャイズ自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動
15投資株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用
その他(任意)従業員や消費者の日常生活

「サプライチェーン排出量算定の考え方パンフレット 環境省」をもとに作成
※1 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を任意算定対象としている。
※2 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を算定対象外としているが、算定することもできる。

この中で、最も企業を悩ませているのがスコープ3といっていいだろう。

スコープ3の難点は主に3つに分かれる・・・次ページへ

高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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