2021年4月に、日立製作所があるサービスの提供開始を発表した。企業の脱炭素経営を支援する、環境情報管理「EcoAssist-Enterprise」の新メニュー「CO2算定支援サービス」だ。
このサービスを簡単に説明すれば、従来大きな労力と時間が必要とされていたCO2のサプライチェーン排出量算定や各種環境データの収集を行い、その後の改善に至る一連の施策実行を日立グループが一括して行うというものだ。
このサービスに注目する企業は多く、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、さっそく日立と提携。顧客企業1,600社に対するコンサル事業の一環で、CO2排出量を算出する同システムを提供することが11月26日に報じられた。
このように、今、企業の脱炭素においては自社の温室効果ガス(GHG)排出もさることながら、そのサプライチェーン(供給網)の排出量についても厳しい管理が求められている。そして当然ながら、CO2をはじめとするGHGの排出を抑えるには、自社の事業がどれだけGHGを排出しているかを正確に知ることが必要だ。しかし、一言で自社の事業が排出するCO2といっても、その対象は多岐にわたる。
そこで用いられるのが、企業に対して、GHGの排出量や気候変動に対する取り組みの情報公開を求める組織「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」が定めた考え方(プロコトル)である、「スコープ」だ。
スコープは1~3に分かれる。
スコープ1 | 企業の直接排出。燃料の使用などによる自社ビルや自社工場での排出。 |
スコープ2 | 間接排出。他社から購入した電力の使用による、排出。 |
スコープ3 | スコープ1、2以外のすべて。原材料の調達や顧客による製品の使用、廃棄段階での排出などで発生する、様々な排出が該当。 |
より細かく言えばスコープ3は15のカテゴリーに分類されている。
環境省「中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル」より
Scope3カテゴリ | 該当する活動(例) | |
1 | 購入した製品・サービス | 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達 |
2 | 資本財 | 生産設備の増設(複数年にわたり建設・製造されている場合には、建設・製造が終了した最終年に計上) |
3 | Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動 | 調達している燃料の上流工程(採掘、精製等) 調達している電力の上流工程(発電に使用する燃料の採掘、精製等) |
4 | 輸送、配送(上流) | 調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主) |
5 | 事業から出る廃棄物 | 廃棄物(有価のものは除く)の自社以外での輸送(※1)、処理 |
6 | 出張 | 従業員の出張 |
7 | 雇用者の通勤 | 従業員の通勤 |
8 | リース資産(上流) | 自社が賃借しているリース資産の稼働 (算定・報告・公表制度では、Scope1,2 に計上するため、該当なしのケースが大半) |
9 | 輸送、配送(下流) | 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売 |
10 | 販売した製品の加工 | 事業者による中間製品の加工 |
11 | 販売した製品の使用 | 使用者による製品の使用 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 使用者による製品の廃棄時の輸送(※2)、処理 |
13 | リース資産(下流) | 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働 |
14 | フランチャイズ | 自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動 |
15 | 投資 | 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用 |
その他(任意) | 従業員や消費者の日常生活 |
「サプライチェーン排出量算定の考え方パンフレット 環境省」をもとに作成
※1 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を任意算定対象としている。
※2 Scope3基準及び基本ガイドラインでは、輸送を算定対象外としているが、算定することもできる。
この中で、最も企業を悩ませているのがスコープ3といっていいだろう。
スコープ3の難点は主に3つに分かれる・・・次ページへ
エネルギーの最新記事