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日産自動車 長期経営戦略を発表 電動化のカギは自社開発の全固体電池

2021年11月30日

バッテリーの中心的な役割と全固体電池

今後の電動化を進めるに当たって、バッテリーが重要なのは言うまでもない。日産は、パートナーと協力し、グローバルでバッテリー生産能力130GWhを確保していく。

また、現在のリチウムイオン電池の確保と同時に、自社内での全固体電池(ASSB)の技術革新を進めている。2028年に市場投入を目指し、2024年に、横浜工場内にパイロット生産ラインの導入を計画している。

日産はリチウムイオン電池を基礎研究から行った結果、自社内での内製化に成功している。全固体電池を「自信を持って」(内田社長)発表できることは、この30年の経験と実績があるからだという。

全固体は安全性に大きな期待が寄せられているが、日産には安全なリチウムイオン電池の内製がすでに行えている。全固体電池の性能がリチウムイオン電池と同等であれば、日産が全固体を選ぶ意味はない。日産の研究している全固体電池には、正極負極に全固体に特化した新材料を用い、性能をあげ、EVの使い勝手を「大幅に」向上させるという。

具体的には、エネルギー密度は現在の2倍を目指す。これにより、小型化、薄型が見込まれ、大型車両のEV化も可能になる。これまでなかった車両レイアウト、運動性能も可能になる。充電時間は3分の1に短縮が目標。さらにバッテリーコストは、2028年75ドル/kWh、さらにkWhあたり65ドルを目標に開発を進める。これにより、EVの車両コストをガソリン車と同等まで引き下げ、EVの本格導入につなげる。

バッテリー生産能力はグローバルで2026年までに52GWhを確保する。その後、前述の通り130GWhまで拡大する。さらにマーケットに応じて拡張もおこなう。

全固体電池によるバッテリー小型化、デザインの柔軟性を示すように、スポーツカータイプ、ピックアップ型、SUV型の3種類のコンセプトカーも紹介された。


3種類のコンセプトカービジュアル Nissan Surf-Out / Max-Out / Hang-Out

工場の温室効果ガス削減、V2Xも拡大 利益率は5%以上を確保

工場においてもカーボンフットプリント削減を進めている。日産インテリジェントファクトリーを、グローバル主要工場へ拡大する。生産設備も電動化を進め、さらに再エネの活用、代替エネルギーによる燃料電池による自家発電を進める。これらにより、工場のCO2を2030年で、2019年比40%削減する計画だ。(2005年比では59%)

日本、中国、イギリス、アメリカの各製造拠点で、ローコストローカルの戦略を実施する。これまでに、すでに強い生産拠点をもっているが、さらに投資を拡大し、柔軟性の高い生産を行う。世界的なEVへの移行が進む中、EVエコシステムの構築を行う。バッテリー循環サイクル、二次利用もグローバルで進め、日本のバッテリーの二次利用には、フォーアールエナジー(日本)とともに取り組む。

世界のV2Xの実証実験の7割以上はリーフを使っているという。2020年代半ばにはV2Xの商用化を目指す。充電インフラもさらに拡充し、すでにグローバルに100万基の充電スポットがあるが、今後最大200億円を投資する。

このように全社的に環境対応を進めるが、営業利益率は、現在の中期計画目標であるNISSAN NEXT終了後も、5%以上を確保し、長期的な事業の継続性を維持する。

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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