温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は2015年に採択、2016年に発効と、合意から数年が経過したが、その内容がすべて決まっているわけではなかった。その中でも特に難しいとされ、COP26でも主要な議題となったのが、「国際排出枠取引制度の詳細なルール決定」についてだった。実は、今回この取引制度について語られたパリ協定第6条(協力的アプローチ)の細則の合意に日本が提案した二国間クレジット(JCM)が組み込まれることとなった。
二国間クレジットは、日本が独自に進めてきた取り組みで、他の国で温室効果ガス(GHG)排出削減プロジェクトを実施し、カーボンクレジットを得るしくみだ。今回、パリ協定第6条(協力的アプローチ)の細則がようやく合意に至ったが、それがどのような合意なのか、そして日本への影響はどうなるのか、解説する。
かつて京都議定書では、京都メカニズムというしくみが取り入れられた。いわゆるカーボンクレジットのシステムで、国家間の排出権取引の他、先進国間でGHG排出削減プロジェクトを実施し、クレジットを分け合う「共同実施」、途上国でGHG排出削減プロジェクトを実施し、国連機関の認証の上でクレジットを発行する「クリーン開発メカニズム(CDM)」だ。この他、森林などを利用したクレジットもある。こうしたクレジットは、自国のGHG排出削減目標達成のために利用することが可能で、実際に日本も京都議定書の目標達成のために利用している。
パリ協定でも同様のしくみが取り入れられたが、その細則が決まっていなかったということだ。
一方、日本はパリ協定のクレジットのしくみを先取りする形で、二国間クレジット(JCM)というしくみをつくり、2021年9月の時点で、モンゴルやベトナムなど17ヶ国と協定を結んでいる。
出典:経済産業省
日本は2030年のGHG排出削減目標を、2013年比マイナス46%とし、さらに50%を目指すとしている。しかし現状ではこの削減目標の達成は再エネのさらなる増加や原子力の再稼働が難しい中では、簡単ではない。未達成分として期待されるのが、この二国間クレジットということになる。また、クレジットを海外で調達することについて、「国富の流出」「削減の抜け穴」という批判もあろうが、コスト効果的な削減が可能である上、途上国の持続可能な開発につながる可能性もある。
日本にとって、二国間クレジットが使えるようになる道筋ができたということは、COP26の重要な成果だといっていいだろう。
第6条がパリ協定発効から今まで合意されてこなかった理由とは・・・次ページ
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