Nature in Delivery of Paris Goals(11月6日)
第6条が合意できたことで、二国間クレジットが実効性を持つ道筋ができたことは、日本にとっては一安心といったところだろう。しかし、そもそも二国間クレジットの手法が国際的に認められるかどうかは、まだこれからだ。たとえばダブルカウントをしないといっても、相手国の削減目標(NDC)とどのように調整するのか。また、NDCそのものが更新されていくにしたがって、発行されるクレジットの量も変わってくる。人権の保障や透明性など、プロジェクトに求められることも多い。
ただ、第6条の問題がこれほど合意に時間がかかったことの理由としては、そもそも先進国の多くが関心が低かったことがあるだろう。この間のCOPの交渉においては、各国内におけるGHGの排出削減にばかり焦点があたっていた。また、そもそもクレジットが必要な削減目標を設定するモチベーションがはたらかなかったということもあるのだろう。そのため、合意が後回しにされてきたともいえる。
しかし、だからこそ日本にとってチャンスであるともいえる。日本のGHG排出削減技術を途上国に提供し、持続可能な開発につなげていけば、途上国とより強固な関係をつくることができる。石炭火力の輸出ではなく、こうした取組みのほうが、海外からも評価されるだろう。当然だが、6条4項、6条8項に取り組むことも可能だ。
日本にとって、国内の窮屈なGHG排出削減にとらわれない、広い視野をもって気候変動対策に取り組むことができるチャンスなのではないだろうか。
近年のCOPにおける政府間交渉は、現状に対する追認という傾向にある。その点、気候変動の未来を示しているのは、非政府組織をまじえたサイドイベントにあるといっていいだろう。次回は行われたサイドイベントのいくつかを紹介する。
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