エネルギー価格が高騰している。その背景には、新型コロナウイルスによる経済停滞、その後の経済回復、世界的な脱炭素の潮流や、各国のエネルギー外交の思惑など、様々な要因が既に論じられている。その中で気になるのが、ガソリンの価格高騰だ。もちろん灯油の価格も上がっている。背景にあるのが原油価格の高騰である。なぜ、原油価格の上昇が止まらないのか。ゆーだいこと、前田雄大が解説する。
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地方にお住まい方などは特に、ガソリンのレギュラーの価格が170円を超えて「え、ハイオクじゃなくて、レギュラー?」と思われている人も、多いのではないだろうか。原油価格上昇の影響でガソリン価格の上昇が続いており、その影響は国民生活に様々な影響をもたらしている。
今回は原油価格高騰の背景を説明したうえで、次の4つの論点を解説していきたい。
それでは原油価格が高騰している背景から解説していこう。
いま、世界的にLNGの価格が高騰している。だが、そもそも、通常、原油価格は天然ガスよりも高いことが普通だ。
気体のガスに比べ、原油は液体で使いやすく用途も広いことに加え、輸送のためにマイナス160度に冷却して液体化する必要がある天然ガスと比べ、原油は輸送や貯蔵も比較的容易に行える。そのため、ニーズが高く、価格も比較的高くなる。要は使い勝手が原油はいいということだ。
他方で、CO2の排出量が比較的少なく、硫黄酸化物(SOx)の排出がゼロの天然ガスは、昨今、環境政策の進む欧州を中心に需要が高まっている。そこにコロナからの経済回復やロシアの供給抑制などが相まって、需給がひっ迫し価格が跳ね上がる格好となった。
実際、現在の天然ガスは1バレル160ドル相当と、原油(WTI)先物の約2倍近くの価格に急騰している。
これによって、これまで天然ガスより価値があると見られてきた原油が、一転「割安なエネルギー源」に一時的になった。
すると、どうなるか。途上国の多いアジアを中心に需要が増加する。実際、パキスタンやバングラデシュでは、天然ガスの調達に苦戦し、未稼働の火力発電所が多数存在していることから、今年9月より一部原油の輸入に切り替えている。
天然ガスの代替として需要が増大したことにより、今度は原油の価格が上昇を続ける格好となった。今年10月8日にはWTI先物価格は大台の80ドルを上回り、1バレル80.11ドルを記録した。
日本は原油をほぼ全量輸入しているので、日本を直撃。ガソリン価格がリッター170円を超える事態になっている。
こうして背景を見ると、この原油価格高騰、中東の産油国にとっては、一見、儲けが増える「おいしい話」に聞こえそうだ。しかし実際には、産油国は価格上昇を一概に喜べない背景がある。
そこで次に、中東産油国のライバル「シェールオイル」との関係を解説したい。
「シェールオイル」と原油価格の関係とは・・・次ページ
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