容量市場 経過措置の在り方再考 第44回「制度検討作業部会」 | EnergyShift編集部

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容量市場 経過措置の在り方再考 第44回「制度検討作業部会」

容量市場 経過措置の在り方再考 第44回「制度検討作業部会」

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審議会ウィークリートピック

容量市場の約定結果が公表されて以降、この制度が抱える問題について、さまざまな意見が噴出している。これを受けて、経済産業省では「電力・ガス基本政策小委員会・制度検討作業部会」で見直しに向けた議論が進められている。今回は、2020年11月27日に開催された、第44回「制度検討作業部会」の議論から、容量市場の課題をまとめていく。

容量市場に対して、100件を超える意見がエネ庁に

実需給年度2024年度に向けた容量市場初回オークション結果が公表されて以来、資源エネルギー庁(エネ庁)や電力広域的運営推進機関(広域機関)では、来年度の制度見直しに向けた検証や具体的な改善策の検討がおこなわれている。

これ以外に100を超える事業者等からエネ庁等に対して、容量市場に対するさまざまな意見や要望が寄せられている(これら意見・要望を寄せた事業者等を、以下本稿では「意見者」と呼ぶ)。

第44回「制度検討作業部会」ではその代表的な意見と、それらに対するエネ庁事務局からの見解や一部対処策が報告された。

事業者等の外部関係者からの意見は表1のように大きく3つのカテゴリーに分類される。時間軸で捉えるならば、短期的(要望レベルでは今回のオークションへの遡及適用も含む)意見、長期的意見の両方が含まれている。

表1.関係者から寄せられた主な意見

小売電気事業に対する影響緩和

経過措置・現行の経過措置ではなく、趣旨に基づく効力が発揮される新たな措置の導入。
・小売の負担の激変緩和の観点から、経過措置の控除率や期間のさらなる拡大。
逆数入札・真に必要な電源のみに適用する観点から、逆数入札を行った電源が約定価格を決める仕組みにしない。
上限価格・発電事業者が上限価格を意識した入札を行わないよう、予め金額を示さない。

供給力を増やすことや目標調達量の見直しによる市場競争の適正化

今回応札しなかった
電源の扱い
・今回応札しなかった電源(FIT関連電源、自家発電設備、未稼働原子力など)を精査し、実需給年度において供給力として期待できる電源については、事後的に控除するなどの追加的な対応。
調達方法の見直し・113%の目標調達量を、実需給の3年以上前に一括で調達しない。
新設電源の確保・長期契約を前提とした新設電源の公募実施により、計画的に新陳代謝を進めるとともに、公募の募集容量を容量市場から控除する。

その他、制度全般に係るご意見

旧一般電気事業者に
対する監視の強化
・発電・小売間の不当な内部補助の防止、内外無差別な卸売、という観点からの監視の徹底。
容量拠出金の
負担割合
・小売事業者と一般送配電事業者の負担割合を見直す。(例:目標調達量の1%をしめる稀頻度リスク分は、託送料金で回収)
再エネ電源の
価値評価
・再エネ電源について、今後主力化していく電源として、その価値が適正に評価されることを望む。
情報公開・開示・落札した電源、kW数を一般に広く公表する。
出所:資源エネルギー庁

本稿では、当事者にとって最大の関心事であろう「小売電気事業に対する影響緩和」、とりわけ「経過措置」に着目し、その在り方を考えてみたい。

容量市場 現行の経過措置概要

今回のオークションでは小売電気事業者への影響を緩和するために、2010年度末までに建設された電源を対象に、容量確保契約金額を減額する経過措置が導入された(2024年度分は契約額を58%に減額)。同時に、経過措置対象電源は逆数入札をおこなうことが認められた。

電力・ガス取引監視等委員会は当初、第42回「制度検討作業部会」(2020年9月17日)において、逆数入札の仕組みが入札価格を引き上げることとなったと述べたが、第43回の同作業部会では、逆数入札対象外で14,137円/kWで応札した電源もあったため、仮に逆数入札が無かったとしても約定価格は変わらないことが報告された。

また、仮に「経過措置無し+逆数入札無し」の制度であった場合、現実の約定総額(1兆5,987億円)よりも1,413億円ほど高額であった(約1兆7,400億円)ことが試算され、経過措置には小売電気事業者の一定の負担軽減効果があったことが報告された。

なお「逆数入札対象外で14,137円/kWで応札した電源」は当該事業者が廃止しない限り、来年度以降も存在しオークションに参加するはずであり、来年度以降も上限価格(具体的金額は変わる)で応札する可能性が高い。この場合、「経過措置+逆数入札」制度の存続有無に関わらず、来年度以降の需給バランスが大きく*1変わらない限りは、当該電源の応札価格が再び約定価格となることが予想される。

この点では、負担軽減効果は僅かであるといえども、「経過措置+逆数入札」制度を存続させることが意見者にとっては得策であると言える。

しかしながら、まさに「負担軽減効果は僅か」しかないことが意見者にとっては大問題である。よって意見者は「現行の経過措置ではなく、趣旨に基づく効力が発揮される新たな措置の導入」を要望している。

この「新たな措置」の具体的内容は公開されていないため不明であるが、容量拠出金支払額の減額の一種であろうと推測する。

*1:今年度オークションの場合、目標調達量177,468,513kWと「上限価格における調達量」176,525,671kWの差はわずか942,842kW(0.53%)であるため、それほど「大きく」動かずとも、約定結果に大きな違いをもたらし得る。

経過措置の原資はどこから?

このとき問題となるのが、この減額の「原資」をどのように確保するかという点である。以下は作業部会の報告ではなく、筆者による考察である。

原資確保案1.

ストレートに発電事業者等への支払いを減額する、というのが案1である。

ただしこの場合、供給力の確保や電力量(kWh)価格ボラティリティの抑制という容量市場の大目的を脅かす可能性もあるため、真に国内に存在する供給力(DR等も含む)の精査が不可欠であろう。

本件は、表1にある「情報公開・開示」とも関係する。容量市場や約定価格に対するさまざまな意見の背景には、供給力の算定に対する漠然とした疑念が存在することが一因であると考えられる。

第44回「制度検討作業部会」で示された表1「情報公開・開示」は、あくまで容量市場という制度(落札電源等)に限定した意見・要望である(そのように整理されている)と考えられる。しかしながら、情報公開等の在り方については容量市場に限定される論点ではない。

容量市場は、「供給計画」制度と密接に関連しており、容量市場に応札する供給力は、基本的には供給計画と同様の考え方、すなわち「電力需給バランスに係る需要及び供給力計上ガイドライン」に基づいて算定することが原則である。
なお供給計画においても、発電事業者が提出する計画の内訳、個別電源に関する情報は非公開となっている(もちろん、個社が独自に公開することは妨げられない)。

広域機関は以前から、容量市場導入後には供給計画制度そのものを見直すことを宣言しており、発電事業者等が提出すべき計画内容や供給計画の在り方について、より効率的・効果的な仕組みへ変更する予定としていた。ところが現時点では、この具体的動きは見られない。

容量市場に対する信頼性の確保の観点、また供給力確保の必要性・妥当性を分かりやすく需要家等に伝える観点からは、供給計画の透明性確保も重要であろう。

また第43回作業部会では、応札価格14,137円/kWの電源(つまり、容量市場におけるマージナル電源=限界電源)の維持管理コスト平均値の1つとして「他市場収益」は、わずか424円/kWであることが公表された。マージナル電源の場合、14,137円/kWでも全費用は賄えない場合もあろうが、少なくとも収入面で見れば全体の97%は容量市場からの収入(容量確保契約金額)に依存していると言える。つまり小売電気事業者や送配電事業者を経由してすべての需要家がこの費用を負担している。

再エネ賦課金で支えられたFIT電源は、多くの情報が公開されている。他方、ほぼ全額を容量市場収入に支えられた電源については何の情報公開も無いことが、バランスを欠いた制度となっていないか検証が必要であろう。

原資確保案2.

容量市場に限らず、「経過措置」とは平たく言えば一種の救済措置(ただし時限的)である。ただしその目的や対象は、個社を救済すること自体ではなく、あくまで公益的目的の実現を図ることであると考えられる。例えば健全な電力事業の発展とそれに伴う需要家利益が適うならば、一定の経過措置は正当化される。

この場合、原資が何であるかは問わないはずであり、行政コスト面でも効率的であるならば税や賦課金であっても構わない。税などであれば経過措置期間中に電源の収入が減額されることもなく、安定供給を脅かすこともないというメリットもある。

ただし、経過措置を受ける小売電気事業セクターは、その公益的目的と費用対効果をしっかり説明したうえで、国民の理解を得る必要がある。一種のアカウンタビリティを伴う措置である。

本来これは、発電事業者にも当てはまるはずである。電源という分かりやすい供給力の提供者の維持に要するコストを社会全体で賄うことが公益的目的から正当化されているならば、その原資は問わないはずである。税であっても容量拠出金であっても、等しく国民・需要家の理解が必要であり、その説明が求められている。

供給力確保という便益が見えにくいものである場合、誰がおこなうにしても、やはりこの説明は苦行であろうことが予想される。もしそうであれば、この苦行を新たに強いる対象を小売電気事業者に限定することが衡平であるか、あらためて検討すべきであろう。

今回、小売電気事業者の負担軽減を目的として、経過措置を導入したことが議論の出発点となっている。しかし、そもそもなぜ容量市場の導入が「小売電気事業者の負担」となるのだろうか。容量拠出金を支払う主体は小売電気事業者であるということが直接的な回答であるが、一歩踏み込むと、その新たな費用を需要家に適切に転嫁できないおそれがある点、すなわち追加的費用を小売電気事業者が自社で「飲み込む」ことを強いられる点が懸念されていると考えられる。

現在の電気事業法では、小売電気事業者が供給能力を確保することを定めている。

二条の十二 小売電気事業者は、正当な理由がある場合を除き、その小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要な供給能力を確保しなければならない。

しかしながら、供給力(アデカシー)による便益を享受するのは小売電気事業者ではなく、あくまで最終需要家である。
小売電気事業者がエネルギー(kWh)を需要家に提供すると同時に供給力も提供していると認識するならば、需要家に対する円滑な費用転嫁をおこなうことが望ましい。また、供給力が最終小売価格に適切に反映されることによってこそ、需要家側の適切なkW・kWh両面での反応が得られるはずである(原初的なデマンドレスポンス)。

需要側リソースも供給力として等しく価値を持つことを踏まえるならば、小売電気事業者が供給力費用を一部でも「飲み込む」ことは、需要側リソースの最大限の活用を阻害するおそれがあると考えられる。費用転嫁そのもののほかに、実務上可能な範囲で情報提供(例えば検針票等での明示)をおこなうことも、kW面での価格弾力性を向上させる一助となるであろう。

容量市場で「競争」が期待されているのか

例えばFITでは、小売電気事業者は一定の金額を納付金として費用負担調整機関に納付する義務があるが、再エネ賦課金として需要家から徴収した金銭は、実態として小売電気事業者をパススルーすることで、小売電気事業者の重荷とはなっていない。(※小売電気事業者は、需要家から再エネ賦課金を徴収すること自体は義務ではない)。なお再エネ電源の費用の大半は固定費であることから、FIT再エネ賦課金の中身はkWコストであると考えられる。

税方式はやや極論としても*2、電力分野において類似の前例がある賦課金方式は、原資確保手段として一考に値すると考えられる。

FITの仕組みと容量市場は別物だ、という指摘もあろう。またFITは市場競争が働かないことも欠点の一つとして指摘されている。

では、日本の容量市場では「競争」が期待されているのだろうか?

オークションに応札する電源等においては、一部の競争が存在すると考えられる。

ただし、表2で応札電源の大半を占める①はゼロ円で応札することが合理的であるため、競争は②③のみで起こり得る(例えば、②で補修費用を節約する努力など)。

表2.発電事業者の経済合理的な応札価格

電源の状況により、発電事業者の経済合理的な応札価格は、以下の3つが想定される。

① 既設電源(翌年以降も稼働を決めている電源)
容量市場の約定額にかかわらず運転する。
⇒確実に容量市場からの支払いを受けるためにゼロ円で入札する。

② 既設電源(補修・廃止を検討している電源)
容量市場の約定価格によって補修・廃止を検討する。
⇒「必要費用-他市場からの収益」の額で入札する。

③ 新設電源
容量市場の約定価格によって建設の是非・運開時期を判断する。
⇒Net CONEで入札する。

「集中型容量市場」が採用された日本では、小売電気事業者がオークションに参加することは無い。約定価格により定められた容量拠出金を受動的に支払うだけである。

さらにオークションはシングルプライス方式であり、すべての小売電気事業者が支払う「単価」は共通であることから、この点でも小売電気事業者に期待される「競争」効果は限定的であった(そのように制度設計された)と認識している。

小売電気事業者からの働きかけにより需要家のデマンドを下げること(すなわち広義のデマンドレスポンス)により、容量拠出金支払額を抑制できることから、この観点での競争は期待されている可能性があるが、エネ庁等による広報活動の中ではそれほど明示的ではない。

仮に小売電気事業者間の創意工夫による供給力調達費用抑制面での競争を強く期待するならば、「分散型容量市場」の導入が適切であったと考えられる。

よって、集中型等を前提とした現状の容量市場においては、全般的に競争という概念がそれほど強くビルトインされていないのであれば、経過措置原資の確保策を賦課金方式とすることも一案と考えられる。

*2:電源開発促進税という類似の前例が存在することに留意。

まとめ:激動する諸条件の中、容量市場には不断の検証が求められる

容量市場に限らず、市場には常に欠陥が存在する。

容量市場が円滑に機能すれば社会全体では追加費用は生じない(むしろ、リスクプレミアム分、費用抑制が期待される)、というエネ庁の説明は理論的に正しいと考えられる。

ただしこれは、多くの前提条件が(新制度導入後も)同じに保たれた場合、に限って成立する。容量市場の「外」にある諸条件が急速に変わる今、どのような費用負担を、どのような経路で担うことが適切であるか、不断の検証が求められるであろう。

梅田 あおば
梅田 あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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