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レベニューキャップ制度 インセンティブは「評判」? 第4回「料金制度専門会合」

レベニューキャップ制度 インセンティブは「評判」? 第4回「料金制度専門会合」

2020/12/18

審議会ウィークリートピック

2023年4月から開始される新しい託送料金制度「レベニューキャップ制度」の詳細設計が電力・ガス取引監視等委員会の料金制度専門会合(以下、専門会合)において進められている。2020年11月30日に開催された、第4回専門会合では主に、送配電事業者の目標やインセンティブ設定の在り方、収入上限算定の全体像が検討された。

目標やインセンティブの設定方法

現在議論が進んでいる新託送料金制度「レベニューキャップ制度」において、一般送配電事業者が達成すべき主要な目標分野には、「安定供給」、「再エネ導入拡大」、「サービスレベルの向上」、「広域化」、「デジタル化」、「安全性・環境性への配慮」、「次世代化」などがある。

これらの目標達成に向けて取り組むべき項目は多数存在するが、1つの分類として「定量的」な目標と「定性的」な目標の2つがある。さらに時間軸別に捉えれば、レベニューキャップの規制期間中(5年間)にその社会的便益が達成可能かつ評価可能な目標と、中長期的な社会的便益を期待する目標、の2つに分類可能である。

図1.インセンティブ設定の基本的考え方

出所:料金制度専門会合を基に筆者作成

図1のカテゴリー①のように、規制期間中に便益が実現し、定量的に評価可能な目標については、その達成結果により翌期の収入増減をおこなうことで送配電事業者に目標達成のインセンティブを与える。

他方、カテゴリー②のように中長期的に便益が実現する目標や、定性的な評価をおこなう目標については、国による結果公表を通じた対外的な評価(評判:レピュテーション)を獲得する「レピュテーショナルインセンティブ」を与えることとする。

なお未達成となった際には、事業計画達成に必要として積み上げた費用を使わなかったと捉えられるため、その費用は翌期収入上限から差し引くこととする。

逆に、デジタル化等により長期的なコストダウンが可能な取り組みについては、翌期の収入上限を増額することで送配電事業者のインセンティブを高める仕組みとする。

具体的にどのような目標がカテゴリー①の「収入上限の引き上げ・引き下げ」、カテゴリー②の「レピュテーショナルインセンティブ」に該当するのかを示したのが表1である。

表1.インセンティブごとの目標分類

カテゴリー① 収入上限の引き上げ・引き下げ

カテゴリー② レピュテーショナルインセンティブ

出所:料金制度専門会合を基に筆者作成

送配電事業者の努力を引き出すインセンティブと聞けば、その多くがカテゴリー①の「収入上限の引き上げ・引き下げ」に該当するのかと思いきや、その数は4件のみであり少数派である。その中身を見ると、「接続検討の回答期限超過件数をゼロにすること」など比較的小粒な印象である。

再エネ主力電源化などを踏まえた託送料金制度の抜本的な見直しが、少なくとも当面の間は主に「レピュテーション(評判)」に頼るかたちとなっているのは、やや拍子抜けに感じられる。

さらに、レベニューキャップという新制度に対する理解の醸成や激変緩和のため、最初の翌規制期間の収入上限の引き上げ幅(引き下げ幅)は、小幅とする方針である。

しかしながら、2023年度に開始される第1規制期間5年間が終わり、2028年からの第2期間中はずっとその小幅な引き上げ(引き下げ)が維持されるならば、2032年度末までその状態が続くこととなる。本当に小幅とする必要性があるのか再検討が必要ではないだろうか。

停電対応-安定供給の目標とインセンティブ

具体的な目標とインセンティブ設定の一例として、「安定供給」分野の停電対応をピックアップしてみよう。

日本の一般の需要家の観点では、停電は多い少ないで論じるものではなく、そもそも発生しないことが望ましい、と考えられる。
ただし停電ゼロを目標とすることは適切ではない。現実に一定の停電は発生しており、その原因も様々であるが、レベニューキャップという新たな託送料金制度の中で問題となるのは、あくまで送配電設備の故障や系統運用に起因する停電が対象である。

また停電を評価する基準としては、停電回数や停電の長さ(復旧までの時間)、設備故障件数、計画停電なのか否か、などで数値的に計ることができる。だが、1分の停電が3回起こることと、1時間の停電が1回起こることの比較は容易ではない。

これらをまとめた便利な数値がある。それがEUE(年間停電量の期待値)であり、下記の式により推計される。

1需要家あたりの年間停電時間(分)×需要家数×1需要家あたりの平均負荷(kW)/60分

現在の日本の停電量は世界的に見ても非常に少なく、ここからさらに減少させることは、それに要するであろう費用対効果の点から適切とは言えない。

よってまず第1期では現状の水準が目標となる。第1規制期間終了後には各社の目標達成状況を評価したうえで、第2規制期間の収入上限の引き上げ/引き下げをおこなうことで、インセンティブを与えることとする。

設備保全-安定供給の目標とインセンティブ

高度成長期に投資された送電設備等が今後一斉に更新時期を迎えることで、高経年化対策施工時期が集中する可能性がある。そもそも十分な施工力を確保できないおそれや、費用が割高となることが懸念されている。このため現在、電力広域的運営推進機関ではアセットマネジメント手法によるリスク量評価ガイドラインを策定中である。

この手法で評価したリスク量(故障確率×影響度)を現状の水準以下に維持することを前提に、一般送配電事業者が高経年化設備の状況やコスト・施工力等を踏まえて、中長期の更新投資計画を策定し、規制期間における設備保全計画を達成することを目標として設定する。

図2のように安定供給に支障が無い範囲にリスク量を抑えつつ、工事物量を平準化することで長期的にコストを最適化する狙いである。

図2.アセットマネジメント手法を活用した中長期計画の策定

出所:料金制度専門会合

なおこれは中長期的な社会的便益の実現を見込む目標であるため、5年間という第1規制期間中には結果が現れない。よってここでは、計画や工事の進捗状況の公表によるレピュテーショナルインセンティブを付与することとする。

さらに、計画未達成となった場合には、元々のレベニューに見合った費用を支出していないことが想定されるため、その未払費用に相当する金額を第2規制期間の収入上限から減額することも、送配電事業者にインセンティブを与える策となっている。

収入上限算定の全体像

レベニューキャップ制度のもとでは、一般送配電事業者は規制期間(5年間)に達成すべき目標を明確にした事業計画の実施に必要な費用に基づいた収入上限を算定し、国に提出する。国は、その見積費用が適正か否かの査定をおこなう。

その費用は大きく、①設備関連費(CAPEX)と②人件費・委託費等の事業経費(OPEX)に分類される(他に「その他」費用があるがここでは割愛する)。

①設備関連費(CAPEX)
送配電設備の新規投資・更新投資は、必要な投資を必要なタイミングで、効率的費用でおこなうことが重要である。国は、送配電事業者が作成する事業計画において、必要な投資量が確保されていることを確認する。
設備投資単価の適切性については、過去実績等に基づく確認(個別査定)や、事業者間比較による効率的な単価の算定(統計査定)をおこなう。

②人件費・委託費等の事業経費(OPEX)
人件費や委託費にあたるOPEXは、主に事業者間比較による効率的な費用の算定(統計査定)をおこなう。

コスト効率化を促す仕組みとしては、まず一般送配電事業者間の横の比較が有効である(いわゆる「ヤードスティック方式」)。しかしながら、これだけでは皆が同じレベルには集まるものの、全体としては効率化が停滞するということも起こり得る。

よって、業界全体の効率化や技術革新等を促すためには、時間軸を念頭においた効率化係数に基づく査定をおこなうことが効果的である。

図3.一般送配電事業者に効率化を促す2つの仕組み

出所:筆者作成

今後、査定方法の詳細や効率化係数については、別途新たに「料金制度ワーキンググループ」を設立のうえ、議論される予定である。

これまでの審議を見ていると、レベニューキャップ制度開始当初は現状と大きく変わることはない印象であるが、2050年脱炭素社会実現に向けた送配電事業の在り方、託送料金の在り方の議論が深まることを期待したい。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda