厄介者の二酸化炭素からメタンを製造 都市ガスの脱炭素に向け進むメタネーション でも盛り上がるのは日本だけ?! | EnergyShift

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厄介者の二酸化炭素からメタンを製造 都市ガスの脱炭素に向け進むメタネーション でも盛り上がるのは日本だけ?!

厄介者の二酸化炭素からメタンを製造 都市ガスの脱炭素に向け進むメタネーション でも盛り上がるのは日本だけ?!

2022年02月01日

厄介者の二酸化炭素(CO2)と水素を合成させて都市ガスの原料であるメタンをつくり出す「メタネーション」の技術開発が熱を帯びはじめている。東京ガスは2022年3月からメタネーションの実証試験をはじめる。大阪ガスは資源大手のINPEXと組み、世界最大級の合成メタンプラントを2024年度後半にも稼働させる予定だ。大手商社は北米や豪州などで製造した合成メタンの輸入に向けた取り組みを進める。政府も都市ガスの脱炭素に向け、2050年までに都市ガスの90%を合成メタンに転換する目標を掲げている。ただし、盛り上がるのは日本だけ。燃やすとCO2を排出する合成メタンは本当に脱炭素燃料なのか、疑問が拭えず、怪しさも漂う。

都市ガスの脱炭素化、カギを握るメタネーションとは

メタネーションは工場や火力発電所などから回収したCO2と、再生可能エネルギーで水を電気分解してつくり出した水素を合成して、都市ガスの原料であるメタン(CH4)を製造する技術だ。合成メタンそのものは燃やすとCO2を排出するものの、回収したCO2を原料とするうえ、水素も再エネからつくることで、燃焼時のCO2の排出量が相殺されるため、実質カーボンゼロの都市ガスとみなされている。

2050年の脱炭素に向けて、再エネの大量導入が進むが、日本全体のエネルギー消費量の62%は電力ではなく熱だ。太陽光発電や洋上風力をいくら導入しても、家庭や産業部門では電化できないところが出てくる。特に鉄鋼や石油化学のように高温設備でものづくりをする産業では、電気では生産効率が下がるうえ、コスト高になることから、電化が難しい。

CO2を排出しない水素を燃やす手法もあるが、たとえば水素で鉄をつくる製法ひとつとってみてもまだまだ開発途上だ。何より水素転換に向けては新たなインフラ整備が欠かせず、経済産業省は一般家庭で年間約1万4,000円の追加コストが発生すると試算する。

都市ガスの脱炭素化が図られなければ、日本のカーボンニュートラルは実現しない。その実現に向け、政府は2021年6月に策定したグリーン成長戦略において、2030年に都市ガスの1%を合成メタンに、2050年には90%を合成メタンに転換する目標を掲げた。日本ガス協会は、都市ガスの90%が合成メタンに置き換わった場合、日本の総排出量の1割弱にあたる年間約8,000万トンのCO2が削減できると試算する。残りの10%は水素直接利用やバイオガスなどでカーボンニュートラル化する計画だ。

合成メタンの年間導入量は2030年時点で28万トン、2050年には2,500万トンが見込まれており、メタネーションに対する期待は高まりつつある。

グリーン成長戦略の目標と導入量


出典:経済産業省

2050年ガスのカーボンニュートラル化実現に向けた姿


出典:日本ガス協会

日本が世界に先駆け成功した合成メタン製造、技術開発が活発に

そもそも合成メタンの製造は、1995年、世界に先駆け日本がはじめて成功したものだ。既存の都市ガス導管や設備、一般家庭にあるガス機器をそのまま使えることから、都市ガス勢を中心に日本が技術開発で世界をリードする。

東京ガスは横浜市と連携し、横浜市の資源循環局鶴見工場から排出されるCO2や下水道センターの再生水などの提供を受け、太陽光発電から生成した水素から合成メタンを製造する実証試験を2022年3月からはじめる。

大阪ガスは資源大手のINPEXと連携し、INPEXの長岡鉱場(新潟県)内から回収したCO2を用いて合成メタンを製造する。世界最大級となる製造能力約400Nm3/hの合成プラントを2024年度後半から2025年度にかけて稼働させる予定だ。

東邦ガスは2030年までにメタネーションによる都市ガス製造を目指しており、大気中からのCO2分離・回収技術の開発を進める。西部ガスはひびきLNG基地で合成したメタンを、既存インフラを活用して供給する実証事業に取り組む。静岡ガスは静岡大学との共同研究をはじめるなど取り組みは広がりつつある。

とりわけ日本国内においては、工場などから排出されるCO2を回収し、その場で合成メタンをつくり、工場内燃料として使うオンサイトメタネーションに期待が集まっている

デンソーは安城工場(愛知県)でメタネーションを活用した工場内CO2の循環実証に取り組む。IHIではそうまIHIグリーンエネルギーセンター(福島県)において、再エネからのメタネーションプロセスを実証中だ。プラント規模は12.5Nm3/hだが、2025年ごろをめどに数万Nm3/h級へのスケールアップを目指している。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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