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2021年度夏季・冬季の電力需給の見通しと対策 第35回「電力・ガス基本政策小委員会」

2021年度夏季・冬季の電力需給の見通しと対策 第35回「電力・ガス基本政策小委員会」

2021/06/01

2020年12月から2021年1月にかけての、電力需給逼迫と卸電力取引市場における価格の急騰は記憶に新しい。電力需要期の供給力の不安定さは解決されたわけではなく、2021年の夏、および冬もまた、厳しい見通しとなっている。2021年5月25日に開催された経済産業省の第35回「電力・ガス基本政策小委員会」では、まさにこのことが議題となった。

審議会ウィークリートピック

今年度の夏・冬も電力需給が厳しい見通しに

2021年度の電力需給バランスは夏季・冬季いずれも例年よりも厳しい見通しが示されている。

梶山経済産業大臣は5月14日の会見において、夏・冬における電力の安定供給確保に向けた緊急の対応として、

①発電・小売事業者に対する供給力確保の働きかけ

②需要家に対する協力要請

③需給状況に関するタイムリーな情報提供

④その他必要な制度的な措置の検討

等について、早急に対策をまとめるよう検討を指示したことを公表した。

これにより多くの一般メディアにおいても、今年度の電力需給逼迫が報道されるようになり、産業界等の一部の需要家においても対策が進みつつあると考えられる。

本稿では第35回「電力・ガス基本政策小委員会」の議論を中心に、2021年度夏季・冬季の電力需給対策の最新状況についてご紹介したい。一部、2021年5月26日に開催された、電力広域的運営推進機関(広域機関)の第61回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」からも情報を補足している。

紙幅の都合上、2022年度以降に向けた構造的対策の基本的な考え方については、別稿に譲ることをご容赦願いたい。

2021年度夏季の電力需給対策

広域機関が取りまとめた需給検証報告書によれば、2021年夏季は猛暑H1需要(1日の最大電力)に対し、北海道・沖縄を除く全国8エリアで、予備率が3.7%(7月)、3.8%(8月)になる見通しである。これは安定供給上必要とされる予備率3%以上を確保できる見込みであるとはいえ、東日本大震災以降で最も厳しい見通しである。

※2018年度以降は地域間連系線の活用により、連系線空容量の範囲内で各エリアの予備率が均平化するように供給力を移動させる手法に変更しているため、広域的に予備率が同値となる。

表1.年度別8月の最大需要発生時の予備率推移

 201620172018201920202021
北海道20.2%14.7%17.6%4.7%9.7%23.9%
東北7.3%11.5%3.8%6.4%3.8%
東京8.1%3.5%
中部6.7%3.0%8.4%5.0%8.1%
北陸11.1%4.3%
関西8.2%8.1%
中国13.0%23.0%
四国5.8%19.2%
九州13.9%9.3%6.8%

出所:電力・ガス基本政策小委員会を基に筆者アレンジ

気象庁予報による今夏の気温見通しとしては、7月の平均気温は全国的に「平年並みか平年より高くなる」見込みとされており、特別な猛暑が予想されているわけではない。

それにも関わらず需給逼迫が予想される理由は、「供給力」の減少である。

2021年8月の最大需要発生時の供給力見通し(沖縄を除く9エリア)は表2のとおりであり、太陽光1,511万kW(全体の8.5%)の活躍が目覚ましいとはいえ、全体の62%を占める火力が▲676万kWであることにより、合計で▲359万kW(▲2%)となっている。

ただし、合計値17,847万kWは計画外停止率考慮前の数値であり、計画外停止率2.6%・▲464万kWを考慮すると、供給力は17,383万kWへとさらに低下する。

表2.2021年8月の最大需要発生時の供給力見通し(9エリア合計)

電源種別2020年度2021年度増減量増減率構成比
原子力53467414026.2%3.8%
火力※111,79911,123-676-5.7%62.3%
水力1,2101,48027022.3%8.3%
揚水2,2872,187-100-4.4%12.3%
太陽光1,3021,51120916.1%8.5%
風力6156-5-8.2%0.3%
地熱282800.0%0.2%
電源Ⅰ’3414076619.4%2.3%
その他644381-263-40.8%2.1%
合計18,20617,847-359-2.0%100.0%

※1:火力は増出力分を含む。出所:電力・ガス基本政策小委員会を基に筆者作成

図1.2021年8月の最大需要発生時の供給力見通し(9エリア合計)

出所:電力・ガス基本政策小委員会を基に筆者作成

火力の供給力減少の主な要因は、設備の休廃止である。

2020年度夏に稼働していた設備のうち、休廃止により2021年度に供給力として見込めない火力発電所は、大手電力会社分だけでも525万kWほど存在する。大半が運開後40~50年程度の経年火力である。

表3.2021年度に新たに休廃止となった火力(大手電力のみ)

エリア事業者名発電所名燃料燃料設備容量(万kW)運転開始年月休廃止年月
東北東北電力㈱東新潟港1LNG351972年11月2021年3月長期計画停止
東北電力㈱東新潟港2LNG351975年11月2021年3月長期計画停止
東京㈱JERA姉崎3LNG601971年6月2021年4月廃止(リプレース)
㈱JERA姉崎4LNG601972年9月2021年4月廃止(リプレース)
㈱JERA姉崎5LNG601977年4月2021年4月長期計画停止
㈱JERA姉崎6LNG601979年10月2021年4月長期計画停止
中部㈱JERA四日市4LNG58.51988年2月2021年4月長期計画停止
関西関西電力㈱姫路第二既設5LNG601973年2021年3月廃止
関西電力㈱姫路第二既設6LNG601973年2021年2月廃止
九州九州電力㈱苅田新1石炭362001年7月2021年4月長期計画停止

出所:電力・ガス基本政策小委員会

「警戒モード」の新設

2021年度夏季に向けた電力需給対策としては、国は発電事業者に対して発電所の保安管理の徹底や燃料を十分に確保することを要請する。

また小売電気事業者に対しては、相対契約や先物市場等を活用した供給力の確保やリスクヘッジ、デマンドレスポンス契約の拡充等の検討を要請する。

他方、需要家に対する「節電要請」は発出せず、例年どおり省エネキャンペーンとしての「無理のない範囲で効率的な電力の使用(省エネ)への協力」を呼びかけることとしている。

今年度は予備率の低さについても注意喚起することとしているが、省エネ要請による効果の大きさは不透明である。

なお図2のように広域的な予備率が3%を下回る見通しとなった場合、国は「需給逼迫警報」の発令や「節電要請」をおこなうが、3%をわずかでも超えていれば需要家等には何の注意喚起もおこなわれないというのも不自然なことである。

よって今年度から新たに「警戒モード」を設定することにより、需要家や小売電気事業者等に対して需給逼迫のおそれが高まっていることを周知することとした。例えば「でんき予報」webサイトの目立つ場所に警戒モード開始を表示することや、正確な供給力・予備力を伝達するために頻繁にwebサイトを更新することが提案されている。

警戒モードの具体的な基準を定めることは困難であるため、昨冬のような全国的な融通の頻発や、全国的な需給逼迫が長期間継続することが見込まれる場合がこれに該当すると考えられる。

図2.予備率(広域融通後)による短期的(前日/当日)な需要対策

出所:電力・ガス基本政策小委員会

後述するように、2021年度冬季は夏季以上に厳しい需給見通しであることから、冬季の対策の幾つかを試行的に今夏に実施することとしている。

まず「kW」面では、需給検証(2021年5月)におけるkWバランスと、最新の気象予報に基づく需要見通しや供給力の増減等の状況変化を定期的(月に2回程度)に確認をおこなう。

また「kWh」面では、燃料在庫や燃料追加調達計画等の情報を発電事業者から収集し、需要増等に対する対応ポテンシャルを確認することとしている。

2021年度冬季に向けた供給力確保策

広域機関の2021年度冬季の需給バランス見通しによると、厳寒H1需要に対し、中西6エリアでは2月の予備率が安定供給上に最低限必要とされる「3%」となっており、東京エリアでは予備率3%の水準を下回っている(※地域間連系線による他エリアからの融通を考慮した値)。

もちろんこれは東日本大震災後で、最も厳しい見通しである。

表4.2021年度冬季需給見通し

【2月】東3エリア北海道東北東京中西6エリア中部北陸関西中国四国九州9エリア沖縄10エリア
供給力
(内電源Ⅰ ´ )
7,396
(242)
570
(74)
1,512
(48)
5,314
(120)
8,855
(223)
2,412
(53)
554
(6)
2,607
(82)
1,133
(27)
513
(7)
1,635
(49)
16,251
(465)
16016,411
(465)
最大需要電力7,3155411,4425,3328,5942,3415382,5311,1004981,58715,90912016,029
供給予備率1.15.34.9▲0.33.03.03.03.03.03.03.02.233.62.4

出所:電力・ガス基本政策小委員会

夏と同様に、需給逼迫の原因は火力発電所の供給力の減少(2020年度比:▲599万kW・▲4.8%)であり、供給力合計として2020年度比で▲370万kW・▲2.2%となっている。

電源Ⅰ’(465万kW)は昨年度比+92万kW・+24.7%の増加となっていることが、供給力を底上げしている。

なお冬季の需要ピークは通常は点灯帯であることから(正しくはEUE算定に基づく)、太陽光の供給力は113万kWと小さくなっている(夏季の表2では1,511万kWであったことに留意)。

広域機関や一般送配電事業者により、発電事業者等に対する発電所の補修計画の調整要請等をおこなった結果、一定の供給力上積みが出来たものの、いまだ東京エリアの1・2月の需給ギャップは大きく、厳寒H1需要に対し予備率3%を確保するためには約150万kWの追加供給力が必要な状況である。

図3.東京エリア2022年1月・2月の需給ギャップ

出所:電力・ガス基本政策小委員会

東京エリアでは2つのIGCC(石炭ガス化複合発電)の実証試験機の稼働が期待されていたものの、トラブル停止が発生していることから、現時点で今冬に安定的に稼働するとはいえない状況であるため、IGCCの2基は供給力とはみなさないことが現時点の結論である。

供給力の1つとして、デマンドレスポンス(DR)が50万kW程度期待できると考えられているためこれを計上した後でも、残りの需給ギャップは100万kW程度存在する。

第61回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、この需給ギャップを埋める候補として、休止電源の再稼働の可能性が検討されている。

上記の表3のうち、JERAが保有する姉崎5号・6号は休止期間が短いことから検討の対象となったものの、すでに系統工事も工程が組まれていることから、これらを再稼働するためには系統工事の調整が必要となる。

これら系統工事も確認した結果、速やかに稼働準備を開始することにより、5号・6号のうち1台は冬季までに再稼働が可能であることが現時点確認されている。

1月までに2台を再稼働するためには、仮設ケーブルによる発電所内の送電ルートの施設等が必要となることから、引き続き検討が進められている。

追加的な供給力確保策と費用負担の在り方

今冬に向けた追加的な供給力の確保策としては以下の①~③が考えられるが、いずれも追加的な費用が発生すると考えられる。

①発電所の補修点検時期の更なる調整

②現時点で供給力にカウントされていない自家発等の精査及び供給要請

③休止中の発電所の稼働要請

発電事業者にこの費用負担を求めることは適切ではないため、電力・ガス基本政策小委員会では、小売電気事業者がこの費用を公平に負担することを提案している。これは、電気事業法上、小売電気事業者は自らの需要に応じた供給力を確保する義務を負っており、この供給力確保の不足が今回の需給逼迫の原因となっていると考えられるためである。

現時点、具体的な費用負担の方法は未定であるものの、託送料金の値上げを通じて支払う方法や、容量市場の拠出金と同様に直接に支払う方法等が例示されている。

なお、上記の姉崎5号・6号のような休止中の電源の稼働やDRの追加募集をおこなう方策としては、「調整力追加公募」の実施が提案され、委員の合意が得られた。

調整力公募では託送料金を通じて費用回収をおこなうことを前提に、一般送配電事業者(今回は東京電力パワーグリッド)が募集をおこなうこととなる。この場合、過度に高額な調達とならぬよう、休止電源についてはコストベースで公募に応じることを求める案や、調達価格について一定の上限を設ける案が示されている。

特に今冬の需給逼迫を回避するために、供給力を追加的に確保する具体的な方策が今後も継続的に検討される予定である。その費用は小売電気事業者の新たな負担となることから、今後も筆者は本テーマを継続的にご報告したいと考えている。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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