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ENEOSと千代田化工、世界初の水素輸入技術 2030年の実用化を目指す

ENEOSと千代田化工、世界初の水素輸入技術 2030年の実用化を目指す

2021年11月05日

11月2日、ENEOSと千代田化工建設は、再生可能エネルギー(再エネ)を用いて生成する「グリーン水素」について、貯蔵・運搬から再生成、燃料電池自動車(FCV)への充填・走行までを行う実証実験を成功させた。両社はこれまで、同様の試みを成功させてはいたが、成果は実験室レベル(約0.2キログラム)であったため、実際に使用可能なレベル(約6キログラム)で水素を取り出したのは、世界初となる。2030年以降の商用化に向けた大きな一歩となった。

水素は、酸素との化学反応で電気を作ることができるほか、水素エンジンの燃料にもなり、脱炭素社会に向けた次世代エネルギーとして注目されている。

これまで、水素を輸送するには2種類の方法があった。一つは水素を-253℃まで冷やして液化し、輸送するという方法。もう一つは、再エネを用いて、水とトルエン(高揮発性の有機化合物)から生成した水素をタンクに貯蔵してから、メチルシクロヘキサン(MCH)という液体に再度変換するという方法だ。MCHは常温・常圧での保存が可能で、輸送先で水素を生成できる。

前者は、冷却された液化水素を運搬できる専用の運搬船が必要となるため、輸送コストがかかるのが難点である。後者は、石油タンカーや貯蔵タンクなど、従来の設備をそのまま利用できるため輸送コストを抑えられるが、工程の関係から高効率化が求められてきた。

今回の実験では、その後者の工程を大幅に簡略化する新技術「有機ケミカルハイドライド法(Direct MCH)」を用いた。Direct MCHはENEOSが開発した。

 
(千代田化工建設ホームページより)

Direct MCHでは、トルエンを水素にする工程を踏まずに、直接MCHを製造することが可能だ。これにより、設備費も約50%削減できるとENEOSは発表しており、今後は電解槽の大型化を進め、商用化に向けコストの低減を進める。

今後は、2030年度をめどに二酸化炭素(CO2)フリー水素サプライチェーン(供給網)を構築すべく、技術開発を進めていくとしている。

本実証実験はオーストラリアで生成したグリーン水素を用いており、電解には、クイーンズランド工科大学(QUT)の太陽光発電システムを利用した。

オーストラリアは、10月26日に、初めて2050年までのCO2排出量実質ゼロを宣言したばかり。2019年時点で国の総発電量の約56.4%を石炭に頼る世界屈指の石炭産出国だったが、脱炭素に向けて、水素やアンモニアといったクリーンエネルギーに力を注いでいる状況だ。

CO2排出量ゼロに関しては、他の主要先進国に比べて遅い宣言となったため、豪政府も脱炭素技術に対して10年間で200億豪ドル(約1兆7,000億円)を投資し、遅れを取り戻そうとしている。その一方で、オーストラリアは太陽光発電や風力発電に適しているとも考えられている。

脱炭素に向けて動き出すオーストラリアの波に乗る形で、日本のCO2フリー水素供給網がどこまで急進的に成長するか、今後も目が離せない。

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EnergyShift編集部
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