第48回「広域系統整備委員会」〜N-1電制の費用精算と(仮)マスタープラン検討会 | EnergyShift編集部

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第48回「広域系統整備委員会」〜N-1電制の費用精算と(仮)マスタープラン検討会

第48回「広域系統整備委員会」〜N-1電制の費用精算と(仮)マスタープラン検討会

EnergyShift編集部
2020/07/30
ブックマーク
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審議会ウィークリートピック

今回の「審議会ウィークリートピック」では、電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)で2020年6月26日に開催された第48回「広域系統整備委員会」についてご報告する。
主な議題は、N-1電制の費用精算、「(仮称)マスタープラン検討会」の設置予定、新たな地域間連系線の検討要否、の3つである。

N-1電制の費用精算

まずは前回記事「コネクト&マネージ N-1電制本格適用に向けて」の続報である。

第47回「広域系統整備委員会」では、N-1電制本格適用時の費用精算に関する課題のうち、「N-1電制に伴う費用のうち、何を精算項目とするか」、「N-1故障発生から、どこまでの期間を精算の対象とするか」、「どのように正確な費用を算出し、適正性を確認するか」が議論された。

第48回委員会では、N-1電制に伴い発生した費用の具体的な精算の流れ(誰と誰が費用精算を行うか)が議論された。

結論としては、費用精算の主体はシンプルに「一般送配電事業者」とされた。電制した電源やその補給量、負担側の発電者の発電量等の費用精算に必要な情報は、一般送配電事業者がすでに保有しているためである。

では、その費用精算対象者を誰とするか?

素朴に考えれば、「当然、発電事業者でしょ? 他に誰か居るの?」と、この問い自体を奇異に感じるかもしれない。実は、他に対象者が存在するのである。

「発電事業者」と「発電者」

まず、ここで一つ「マメ知識」として、「発電事業者」とは別に「発電者」という呼称が存在する。前者「発電事業者」とは、電気事業法で以下のように定義された言葉である。

発電事業者とは・・・
発電事業を営むことについて「届出」をした者であって、
「発電事業」とは、以下のいずれの条件にも該当する発電用の電気工作物について、小売
電気事業等の用に供する電力の合計が1万kWを超えるものであること。

  • ① 系統連系点でみた発電設備容量が1,000kW以上
  • ② 託送契約上の同時最大受電電力が5割超
  • ③ 年間の逆潮流量(電力量)が5割超

例えば100kWの発電所は、①の条件からそもそもカウント対象外であるので、100kWの発電所を200ヶ所保有している場合、その合計は2万kWではなくゼロとなるため、発電事業者には該当しないということになる(なお5月31日時点では、891者の発電事業者が登録されている)。

この発電事業者の定義に該当しない者と該当する発電事業者の両方を合わせて、広い意味で慣例的に「発電者」と呼んでいる。

話をN-1電制の費用精算に戻すと、その精算対象者は「発電契約者」とすることで合意された。

「また、紛らわしい名前の新しい人が出てきた…。ほぼ同じような意味なんでしょ? 説明はいらないよ」と感じるあなた。もうしばらくお付き合い願いたい。

「発電者」と「発電契約者」の違い・関係性は以下の図1のようなものである。

流通設備効率の向上に向けて (コネクト&マネージに関する取組について) 2020年6月26日広域系統整備委員会事務局

発電者とは、発電所で発電を行う者であり、発電した電気を一般送配電事業者の系統を利用して小売電気事業者に卸売り等を行うためには、「発電契約者」との売買契約等が必要となる。

「発電契約者」とは、託送約款に基づき一般送配電事業者と発電量調整供給契約を締結し、発電者が発電した電気を一般送配電事業者の系統を介して、小売電気事業者へ卸売り等を行う主体である。

ポイントは4つある。

  • 図1右のように、1つの発電契約者が複数の発電者・発電所を契約で束ねる場合もある。バランシンググループ(BG)と呼ばれるゆえんである。
  • 図1では、発電者と発電契約者が別者であるかのように表現しているが、事業者としては同一であっても構わない。
  • 実は、小売電気事業者が「発電契約者」となることもある。自社では発電しない人もここで登場することに意外感があるかもしれない。
  • これはやや番外となるが、図1左のように1つの発電所・1つの発電者であっても「バランシンググループ(BG)」と呼ぶ。

なお補足として、「インバランス」への対応もこの発電契約者が主体である(例えば、「新インバランス料金制度、2020年度から災害時には前倒しで適用されることに」を参照)。

発電計画値と実際の供給量に過不足(インバランス)が生じた場合は、発電量調整供給契約に基づき、一般送配電事業者は、調整力を用いて「発電契約者」へ補給等を行い、発電契約者は補給等の量に応じ、一般送配電事業者とインバランス料金の精算を行うのである。

まとめると、N-1電制の費用精算は、一般送配電事業者と発電契約者の間でおこなわれる。実際に発電所を保有・運転しているのは発電者であるため、発電契約者と発電者の間では、別途契約に応じた金銭精算がなされるはずである。

流通設備効率の向上に向けて(コネクト&マネージに関する取組について)
2020年6月26日広域系統整備委員会事務局

「(仮称)マスタープラン検討会」の設置予定

今年2020年6月に「エネルギー供給強靭化法」が成立し、再エネの主力電源化に向けて、再エネ等の分散電源の拡大や地域間連系線等の整備の必要性が一層強く認識されている。

今年2月に取りまとめられた「持続可能な電力システム構築小委員会 中間とりまとめ」においては、広域機関が電力系統に関するマスタープランを策定することが求められている。

このマスタープラン検討のため、広域機関は新たに、「(仮称)広域連系系統の設備形成に関するマスタープラン及び系統利用に関するルールの在り方に関する検討会(以下、マスタープラン検討会)」を設置することとした。

マスタープランとは、「広域系統長期方針」と「広域系統整備計画」から構成されている。

「広域系統長期方針」とは、中長期的な設備形成についての基本的な方向性であり、「広域連系系統のあるべき姿」の提示や、「あるべき姿」の実現に向けた取り組みの方向性が示される予定である。

「広域系統整備計画」とは、社会的便益・費用便益評価(B/C分析シミュレーション)に基づく主要送電線の整備計画のことである。

また、広域系統長期方針と広域系統整備計画を整理していく中で、日本全体を俯瞰して、エネルギーミックス等を踏まえた将来の混雑系統に対する費用便益評価を整理した「広域系統整備に関する長期展望」についても示していく。

上記マスタープランを整備するためには、①供給計画等による定期的な系統確認(系統評価)、②系統混雑を前提とした系統利用の在り方、③高経年設備の更新の在り方、などの、マスタープランに関する検討自体を支える仕組みについても検討が必要となる。

このマスタープラン検討会のスコープや取り組み、各主体の関係性を整理したのが以下のイメージ図(図2)である。

基幹系統の設備形成の在り方について (電力系統に関するマスタープランの基本的考え方について) 2020年6月26日 広域系統整備委員会事務局

① 供給計画等による定期的な系統確認(系統評価)
すでに「持続可能な電力システム構築小委員会 中間とりまとめ」等で示されているとおり、今後、電源ポテンシャルと協調のとれた「プッシュ型」による送配電設備形成が重要となる。従来のような基幹系統に連系する大型電源のポテンシャルだけではなく、配電系統に連系する再エネ等の分散電源が基幹系統に与えるインパクトにも注視する。

② 系統混雑を前提とした系統利用の在り方
従来の系統形成ルールは、平常時には混雑を発生させない「ファーム接続」を前提として、流通設備を新増設することが基本となっている。今後は、既設設備をなるべく有効活用するために、平常時の系統混雑を前提としたノンファーム型接続が増加することが想定されている。マスタープラン検討会では、これに対応した設備形成の在り方や、混雑管理も含めた系統利用等の仕組みも検討していく。

③ 高経年設備の更新の在り方
客観的な評価のもとで適切に高経年設備の改修が行われる仕組みを目指し、評価手法について標準化を図るため、今後、「送配電設備のアセットマネジメント手法に関する標準化ガイドライン」を策定する予定である。このガイドラインは、設備故障リスクと故障時の影響リスクについて、全国大での標準的な定量評価手法を整理したものである。一般送配電事業者は、設備の巡視・点検結果をデータベース化し、広域機関が策定する定量評価手法を用いてリスク評価を行い、更新計画を立案することが想定されている。

基幹系統の設備形成の在り方について(電力系統に関するマスタープランの基本的考え方について)2020年6月26日広域系統整備委員会事務局

また従来は経済成長・電力需要増加に伴い、送配電設備も新設・増強一辺倒であったが、すでに人口減少・電力需要減少が顕在化しつつある。マスタープラン検討会では、流通設備の統廃合・スリム化の検討をおこなうことも明確化された。

これらを検討するにあたり、すべてに関係してくるのが費用便益評価である。費用便益評価をおこなうには、シナリオ設定が重要となる。

広域機関では、10年先までの「供給計画」をベースにすることは当然ながら、エネルギー基本計画や再エネポテンシャルをベースに20~30年先の将来を想定したシナリオを設定し、感度分析、バックキャストによる検討もおこなう予定である。

新たな地域間連系線の検討要否

広域的取引の環境整備のための新たな地域間連系線増強に関する、検討開始要件適否の状況が定期報告された。過去、本委員会で要件に適合した「北海道本州間連系設備」、「東京中部間連系設備」は、すでに具体的な増強計画が策定開始済みである。

「中国九州間連系線」は要件に適合しながらも、2018年の第31回広域系統整備委員会において、費用便益比が1未満であったため、継続検討と位置付けられていた。今後はマスタープラン検討の中で系統評価が実施される予定である。

これら3つ以外に、新たに計画策定プロセスを開始する案件は無いことが報告された。

今回の第48回「広域系統整備委員会」では、上記以外の議題として、「北海道本州間連系設備に係る計画策定プロセス」(いわゆる新々北本増強)および「東北東京間連系線に係る広域系統整備計画」についても報告・議論されたが、これ自体がかなり大きなテーマである。

紙幅の都合上、新々北本等に関しては、別の機会にまとめて別稿にて報告させていただきたい。

(Text:梅田あおば)

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